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電力の「マイナス価格」とは?欧米で頻発する現象と再生可能エネルギーの関係

こんにちは、飯田です(^^)/
今回は、電力市場で最近注目されている「マイナス価格」という現象について詳しく解説します。マイナス価格なんて、一見夢のような話に聞こえますが、実は再生可能エネルギー(再エネ)の普及と深く関係しているのです。欧米で頻発するこの現象がなぜ起こるのか、そしてそれが日本にもたらす影響について一緒に考えていきましょう。

マイナス価格って何?

「マイナス価格」とは、その名の通り、電力の価格がマイナスになる状態を指します。つまり、電気を使うと逆にお金をもらえるという、消費者にとっては非常にラッキーな状況です。この現象が起こるのは、電力の供給が需要を大幅に上回った場合。再エネ、特に太陽光や風力などの発電は、天候に左右されて発電量をコントロールするのが難しく、電気が余りすぎることがあるのです。

例えば、ドイツでは再エネが広く普及しているため、マイナス価格が頻繁に発生しています。特に、2023年7月2日には、1kWhあたり約70円ものマイナス価格が記録されました。つまり、その日は電気を使うほどお金がもらえるという、まさに夢のような状況が続いたのです。このようなマイナス価格の現象は、特に欧州やアメリカで再エネが普及している地域で頻発しています。

ドイツの事例では、電力市場のマイナス価格の拡大

ドイツでは、再エネの導入が早くから進められてきました。再エネの発電量が大きくなると、発電量が需要を上回る時間が増え、電気の買い手が見つからない状態が続きます。発電を完全に止めるには時間やコストがかかるため、発電事業者はお金を払ってでも電気を消費者に使ってもらう方が得策と考えます。

実際、ドイツではマイナス価格の発生時間が年々増加しています。2023年には過去最高の300時間を超える時間でマイナス価格が発生しました。この背景には、太陽光発電の導入が急速に進んでいることがあります。2023年には年間13GWの太陽光発電が導入され、これは日本の約4倍にも相当します。

また、2023年7月2日には、ドイツで過去最高のマイナス価格500ユーロ/MWh(約70円/kWh)が記録されました。この日は、朝8時から夜7時までの11時間にわたってマイナス価格が続き、消費者にとっては「電気を使うほどお金がもらえる」という日でした。

欧米全体に広がるマイナス価格

マイナス価格はドイツだけでなく、欧州全体やアメリカでも広がっています。再エネが多く導入される地域では、電力の供給過剰が発生し、結果としてマイナス価格が出現します。特に、太陽光発電の導入が進む米国のカリフォルニア州では、この傾向が顕著です。

カリフォルニア州では、2023年前半だけで1000時間以上ものマイナス価格が発生しました。太陽光発電が昼間の需要を大きく上回ることで、日中の多くの時間がマイナス価格となっているのです。このため、電力が余る時間帯に電気を使うことで、消費者や企業は逆に利益を得られる状況が生まれています。

さらにカリフォルニア州では、余剰電力を蓄電池に貯める取り組みが進んでいます。蓄電池は、昼間に余った電力を夜に使用するための重要なインフラとなっており、再エネの導入が進む中でますます注目されています。

日本での現状では、なぜマイナス価格がないのか?

では、日本ではどうでしょうか?実は日本では、欧米のようなマイナス価格は存在しません。日本の電力市場では、価格が最低0.01円/kWhに設定されており、いくら供給が過剰になっても価格がマイナスになることはないのです。そのため、電力が余ると「出力抑制」といって、発電を止める措置が取られます。

しかし、この出力抑制は電力の無駄遣いとも言えます。電気を捨てる代わりに、蓄電池を使って余った電力を保存し、需要が高い時に活用する方が効率的です。欧米ではマイナス価格を活用して蓄電池の導入が進んでいますが、日本では蓄電池の普及が遅れています。

マイナス価格の意義とは?

マイナス価格は、単なる「歪み」ではなく、自由市場の自然な結果とも言えます。電力の供給が需要を大きく上回ると、電気を使う動機が生まれ、マイナス価格の時間に電力を使おうという流れが自然と生まれます。これにより、蓄電池の導入や工場の稼働時間の調整など、エネルギーの有効活用が促されます。

欧米では、こうした市場のシグナルに従い、再エネの普及や電力インフラの拡充が進んでいます。逆に日本では、政府による規制やコントロールが強く、マイナス価格のような市場のダイナミクスが抑制されています。これが、日本における再エネ普及の遅れや蓄電池導入の遅滞につながっていると考えられます。

日本に求められる対応

欧米で広がるマイナス価格は、再エネの普及がもたらす新しい電力市場の現象です。日本もこれに学び、蓄電池の導入促進や送電インフラの強化などを進めるべきです。政府の規制に頼りすぎるのではなく、市場のシグナルを尊重し、脱炭素化に向けた効率的なエネルギー運用を目指すことが必要です。

電力のマイナス価格は、単に「歪み」や「困りごと」ではなく、再エネの普及と市場の調整を進めるための有効なツールとして注目すべきです。今後も世界の動向を見ながら、日本もより柔軟で持続可能なエネルギー戦略を築いていく必要があります。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!ぜひ、このテーマについて皆さんも考えてみてください(^^)/

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欧米で頻発する電力のマイナス価格とは何か? 再生エネとの深い関係を考察 https://www.sustainablebrands.jp/article/story/detail/1223200_1534.html

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