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重熱人形に関する開示情報

この文書の閲覧には[Security Rank3]以上の権限,もしくは高次元物理学会による特別承認が必要です. 身体構造重熱人形の身体は分類状は全身義体にあたるが、内部構成や基幹技術が一般に普及しているものとは大きく異なり,その本質は″杖″に近いものとされている. 現在環境課が管理する個体 通称 "ネロニカ"の身体はセラミック,繊維強化プラスチック,合成ゴムなどを複合した古い義体外装と頭部のカメラセンサー,古い電脳基盤,義体内部に埋め込まれ四次元的に相互接続された計12の

    • 事後報告書1

      【経緯】 D案件調査任務での戦闘行為において両腕を損傷 振動フェルミオンの過剰消費による一時的な身体機能停止 【詳細】 右前腕~手:TG-8の圧壊により熱外郭散失,"糸"の断絶を確認.実部に致命的な損傷,修復不可能と判断しこれを廃棄 右肩峰,右上腕:実部に大きな亀裂あり,動作に支障あり.修復可能 TG-7:軽度損傷 自然修復可能 TG-8:壊死 完全停止を確認(回収済み) TG-9:消失左前腕:熱外郭健在,実部に複数の亀裂,動作に支障なし 左手:示指 -

      • 虚気坦懐ノ人形

        --- 環境課庁舎 屋上 --- 肌を刺すような鋭い風が吹き抜ける。 「もうこんな季節か…」 グレン・バトラーは肩に積もった粉雪を手で払いながら呟く。 吐息は副流煙と混ざり合い、より一層白さを増していた。 「ご用件はなんでしょうか。」 声の方に振り返るとそこには桃色の髪の人形が佇んでいた。 「ああ、ネロニカ。来たか。」 ネロニカと呼ばれた少女は無表情のまま、すぐ隣の手すりに腰掛ける。 「...また例の事件の話ですか」 ああ、と力なく返答するグレン。 環境課に甚大な被害を

        • Secret Diary

          『y月14日』 先のカウンセリングから日記をつけることになった。記憶をわざわざ紙媒体で記録するなんて面倒で無意味な行為。理解できない。 『x月5日』 何を書いたらいいのかわからない。 午後の定期検査が終われば今日はおしまい。 『x月6日』 今日は朝から私の知覚能力に関する実験。相変わらず退屈。人間が持つ痛覚というものが私にはよくわからなかった。 私からしたら人間の身体メカニズムの方がよっぽど奇妙なのだけれど。 『x月7日』 退屈な実験のあと、娯楽室で先生からピアノを教わ

        重熱人形に関する開示情報

          EP0 人形達のレゾンデートル

          [PM 01:06 環境課庁舎 課長室] デスクの上に置かれた推薦状には既に承認の判が押されていた。 静まり返った室内には環境課課長 - 皇純香の他に一人、白衣を纏った男の姿があった。 皇は人事資料を眺めながらゆっくりと口を開く。 「今回の件は特例だ。特に『重熱人形』の存在に関して、情報共有対象は慎重に選定していくつもりだ。一般的には通常の義体と同じものとして扱うこととするが、例外的に義体整備班には私から直接話を通しておく。」 「お心遣い、感謝いたします。」 謝辞を述べる

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