[救急][感染症] ショック① 敗血症 せぷしす
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[1] 敗血症性ショックとは
一口に言えば敗血症によってショックに至った状態。なのだが、敗血症もショックもちゃんと考えるとどちらも結構難しい。まずはざっくりと以下のように理解する。後ほどもう少しコメントする。
・感染症 = 微生物などの感染により局所の症状(咳・嘔吐など)が出る病態
・敗血症 = 感染症+臓器障害
・敗血症性ショック = 重症敗血症+遷延する低血圧
敗血症性ショックの治療のためにはまずは敗血症について知らなければならない。
敗血症の診断は「この病態は敗血症ではないか?」と疑うところからはじまる。
[2] 敗血症の疑い qSOFA
敗血症の治療は分〜時間単位の勝負になることがある。抗菌薬投与が1日遅れるとそれだけ重症化しやすく、現代の日本においても敗血症の診断が送れればそこそこの死亡率があると思う。
そこで、なるべく簡便に敗血症の疑いが強い患者を拾い上げるスコアが作られた。qSOFA クイック ソーファ である。
もともとICUでSOFAスコアが使われ・・・いや、やめよう。敗血症は時間勝負。さっさとqSOFAを書くことにする。
<qSOFA> 2項目以上当てはまる場合は敗血症を疑う
・意識レベルの低下 (GCSで1点以上の低下)
・呼吸数 ≧ 22/min
・sBP ≦ 100 mmHg
器材は血圧計以外不要で非常に簡便。特別な技術も要さないことから汎用性が高い。qSOFAで2点以上であれば、敗血症を疑ってさっさと血液培養を2カ所2セット(好気培養+嫌気培養)をとって抗菌スペクトルの広めの抗菌薬をぶち込むべきである。救急外来では正直な話、ここまでで良いと思っている。
[3] かつての敗血症の診断
かつて(1992年 Sepsis-1)、敗血症は「感染症があり、全身性炎症反応症候群 (SIRS) を呈する病態」と定義されていた。SIRSは以下の項目の2つ以上を満たすものとされた。
<SIRS> 2項目以上を満たすもの
・体温 > 38°C あるいは < 36°C
・心拍数 > 90/min
・呼吸数 > 20/min あるいは PaCO2 < 32 mmHg
・白血球数 > 12,000/μL あるいは < 4,000/μL
あるいは 幼若球 > 10%
ただし、これはかなりざっくりしたスコアで敗血症以外もたくさん拾い上げてしまう(つまり特異度が低い)ことが分かってきた。2003年には特異度を上昇させることを目的に24項目から成るSepsis-2の定義が発表されたが、さほどよい基準ではなかったようだ。そのココロとしては、敗血症を「全身性の炎症である」と捉えることに問題があったようだ。2016年に発表されたSepsis-3の定義では「敗血症による臓器障害を評価する」という方向性に変わってきている。
[4] Sepsis-3による敗血症の診断
<定義>
感染症に対する制御不能な宿主反応に起因した生命を脅かす臓器障害
<診断基準> ICU 患者とそれ以外で区別する。
1. ICU 患者
感染症が疑われ、SOFA スコアが2 点以上 急上昇した状態。
2. 非 ICU 患者
qSOFA 2 項目以上で敗血症を疑い、ICU 患者に準じて診断する。
[5] Sepsis-3による敗血症性ショック
<定義>
死亡率を増加させる可能性のある重篤な循環・細胞・代謝の異常がある敗血症
<診断基準>
適切な輸液負荷にもかかわらず、平均血圧 ≧ 65 mmHgを維持するために循環作動薬を必要とし、かつ血清乳酸値 > 2 mmol/L (18 mg/dL)を認める。
※ 乳酸値換算: mmol/L × 9.01 ≒ mg/dL
※ 乳酸値基準: 3〜4 mmol/L or 27〜36 mg/dL
[6] SOFA スコア
SOFAスコアは意識・循環・呼吸・肝機能・腎機能・凝固系を評価することで採点する。臓器障害に主眼を置いたスコアである。
SOFAスコアの利点としてはqSOFAにくらべて院内死亡率をより強く反映することである。つまり、SOFAスコアが高いほど厳しい戦いになることが予測される。
反面、SOFAスコアは採血項目が必須であり、救急外来で急ぐときには評価困難である。項目が多く、ルーチンで検査するには覚えにくく使いにくい難点もある。
ミスを防ぐためにも、SOFAはすぐにアクセスできるところに置いて参照しながら使うべきだと思う。また、敗血症の診断としてもSOFAスコアの「2点以上の急上昇」があるので、単回のスコアリングだけでは無意味になっている。
[7] 救急外来で推奨される行動 (私見)
⓪ バイタルが狂っていれば、その対応をさっさと行う。
考えてみる
① 発熱があるとか、SpO2が低いとかを見たときに感染症を考える。
② 臓器障害がないか(=敗血症ではないか)に思いを馳せる。
③ qSOFAをとってみる。
④ qSOFAが2点以上なので、敗血症かも!と考えてココロのギアをひとつあげる。
⑤ 今後のことを考えると血液培養は必須なので、血液検査を考える。
手と人を動かす
⑥ 看護師に静脈から25mL程度採血してもらい、検査+培養1セットに回す。
⑥’自分で動脈から血液を25mL程度採血して、Lactate含む血液ガス分析+培養1セットに回す。
⑦ 血液検査と画像検査のオーダーを立てる。
SOFAで必要なT-Bil、Cre、Plt
DIC診断に必要なWBC、FDP、PTを含める
⑧ 原因別に追加する検査を考える。
⑧'感染性心内膜炎(IE)を考えたときには、もう1セット血液培養を追加する。
⑧"尿路感染を考えたときには、尿培養を追加する。
⑧'"髄膜炎を考えたときには、頭部CTで脳ヘルニアを否定して、
腰椎穿刺を行い、脳脊髄液の初圧・検査・培養を追加する。
⑧*肺炎を考えたときには、喀痰培養を追加する。
⑧**結核を考えたときには、医療者はN-95マスクで防護をして
喀痰培養と抗酸菌染色を追加する。
⑧$化膿性関節炎を考えたときには、関節穿刺をして
関節液の糖・タンパク・多核球の検査と関節液培養を追加する。
⑨ 感染症の原因菌を推定して、よさげな(広めの)抗菌薬を選ぶ。
説明して入院させる
⑩ 患者に説明し、同意を得て、入院させて管理する。
[8] 参考① GCS
Eye 4点、Verbal 5点、Move 6点の3項目で点数をつける。15点満点。
E) 開眼の有無
4 自発的に開眼
3 呼びかけで開眼
2 痛み刺激で開眼
1 何をしても開眼できない
V) 言語機能
5 見当識あり
4 見当識障害がある
3 単語を言える程度
2 声を出せる程度
1 音すら出せない
T 気管切開されている
A 失語症
M) 運動反応
6 従命に応じて四肢を動かす
5 痛み刺激に対して、手で払いのける
4 痛み刺激に対して、四肢を引っ込める・すくめる
3 痛み刺激に対して、異常な屈曲運動 (除皮質硬直)
2 痛み刺激に対して、異常な伸展運動 (除脳硬直)
1 動かない
[9] 参考② FiO2
患者が吸入している酸素濃度。100%を1.0として表す。
酸素流量によって投与方法を変更する必要がある。鼻カヌラは3L/min程度までとするべき。参考程度に。
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