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クリスマスは大好きなあなたと。

もうすぐクリスマスですね。

わたしが20代の頃は、「クリスマスは恋人と過ごすのが正義!圧」が、今よりもかなーり強い時代でした。
きっと世の中が、鉄道会社のCMや恋愛ドラマに毒されていたんだと思います。

でも20代のクリスマスを振り返った時、私がまず思い出すのは大好きな女友達2人のことです。

海へ向かう道を、3人で笑いながらドライブしたクリスマスイブのことを。


23歳の冬、私と友人M、Yには彼氏がいませんでした。

「クリスマスのためにカレ作るなんて、絶対イヤ!」と言う割に、内心は全員が不安と世間体で焦りまくっていました。

そこで私たちはコンパを繰り返し、「クリスマスイブにご飯を食べる男の子3人」をゲットしたのです。

今思うとバカみたいだけれど、それでずいぶんホッとしたものです。
たぶん相手の男の子たちも同じだったんじゃないかな。

本当にバカみたいなんだけれど。


さて24日当日。

私たちは昼からYの家に集まり、メイクだのクリスマスコーデだの、女子的おでかけ準備を楽しみました。

ところが想像以上に早く用意ができちゃて、時間を持て余すことに。
するとYがいいました。

「トランプでさ、スピードでもやらん?」

なぜYは、突然そんなことを言い出したのか・・・。
私たちは普段トランプなど全然やらないのに。

するとMが言いました。「じゃあ、アップテンポの曲をBGMにしよ」

そこで私たちは、当時人気のあったTag Teamという一発屋の、Whoomp! (There It Is) という曲をかけて、スピードを始めました。

するとあっという間にテンションは爆上がり。
何も面白くないのに、ゲラゲラ笑い転げる始末です。

ゲームも曲も知らない方は、『レイブパーティーで踊り狂い、トランス状態になってる女子3人』を想像していただければ、間違いないと思います。


しかし、女子がそのような状態で初対面の男性と会ったら、悲劇しか起こりません。

クリスマス仕様のカジュアルイタリアン店で待っていた男子3人は、ハイテンションに登場した私たちを見て、確実に引いていました。

でもこっちは出来あがっちゃってるから、「ちょっと〜ノリ悪いじゃん!」だの、「なんか面白い話してよ!」だの、無茶ブリのうえ、言いたい放題。

当然に一次会で解散となりました。
彼らにしたら私たちは、地獄からの使者みたいなものだったでしょう。


しかしお食事会が不発に終わったにも関わらず、というか不発だったからこそ、私たちの結束はかつてないほど高まりました。

私たちは再びYの家に戻り、お父上の車でドライブに出かけました。
夜の海に行こう!と大騒ぎして。

そして海に向かう国道を走りながら、車の中で山ほどおしゃべりをしました。

会社の文句、最近あった面白いこと、さっきの男子たちについて、昔のカレ、今気になる人、将来の夢などなど。


凍るように冷たい夜で、空では星がチカチカと瞬いていました。

「彼氏と過ごすには最高の夜なのに、なんであんたたちと!」

そんなことを言い合いながら、私はとても幸せでした。
だってクリスマスに誰かと過ごすなら、本当に好きな人が良いもの。

見栄も世間体も取り去った私の心は、この気が置けなくて、なんでも話せる高校からの友達を、誰よりも求めていたのです。

多分だけど、YとMも同じだった気がする。


小沢健二さんの「さよならなんて云えないよ(美しさ)」という曲に、こんな歌詞があります。

本当はわかってる。
2度と戻らない美しい日にいると。
そして静かに心は離れていくと。

小沢健二「さよならなんて云えないよ(美しさ)」より

確かにこの日の私たちは、心がぴったりと重なっていました。3人なら、どこまでも飛んでいけそうなぐらいに。

でも同時に私は、胸がしくしく痛かった。

友とのこんな瞬間が、ずっと続くものではないと知っていたからだと思います。

事実、Yとはいつしか会わなくなってしまいました。
Mとは今もよく話すけれど、お互いに家庭があり昔のようにはいきません。

でもそれでも、いえだからこそ私の胸の中では、冷たい空気や夜の匂い、2人の笑い声と共に、いつまでもあのイブが輝いているのだと思います。


今年のクリスマスを、皆様が幸せいっぱいで過ごされますように。











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