人文地理学のおすすめ専門書(2): 特に都市圏構造変化に関する専門書

2021年3月に「人文地理学のおすすめ専門書(1): 全般的なもの」という記事で、人文地理学全体にわたる書籍を紹介しました。第2弾がかなり遅くなってしまいましたが、今回は、私の興味のあるテーマに関連する専門書を中心に取りあげます。都市地理学に興味のある学部生を主対象読者としています。

1. 大都市圏の構造的変容

1990年頃までの三大都市圏の都市圏構造変化に関して詳述されている図書です。少し古いですが、個人的には都市圏構造変化に関する重要文献の1つと考えています。

あとは都市圏の設定方法に関する参考文献としてよく取りあげられるようには思いますし、私自身の卒業論文でも参考文献にしています。

<書誌情報>
富田和暁 1995. 『大都市圏の構造的変容』古今書院. [書評]

2. 郊外からみた都市圏空間

画像5

都市地理学の立場から郊外について解説している専門書です。大都市圏の郊外化や多核化に関して詳述されています。都市圏多核化、雇用の郊外化、超郊外化、郊外核といった郊外に関するトピックについて、主に京阪神大都市圏を事例地域として解説されています。

<書誌情報>
石川雄一 2008.『郊外からみた都市圏空間 郊外化・多核化のゆくえ』海青社. [出版社サイト]

3. 東京大都市圏郊外の変化とオフィス立地

画像5

郊外の業務核都市における就業に着目した書籍です。事例として大宮、幕張新都心、横浜みなとみらい21が主に取りあげられ、郊外核へのオフィス立地や通勤行動への影響などについて解説されています。

<書誌情報>
佐藤英人 2016. 『東京大都市圏郊外の変化とオフィス立地』 古今書院. [出版社サイト] [書評]

4. 大都市都心地区の変容とマンション立地

画像5

1990年代になると、大都市圏の拡大は収束し、人口の都心回帰が進行するようになります。このなかで増加していった都心のマンション居住者などに着目した書籍です。居住者の属性の変化などに着目し、都心居住の拡大などのメカニズムを解説しています。

<書誌情報>
富田和暁 2015. 『大都市都心地区の変容とマンション立地』 古今書院. [出版社サイト] [書評(1)] [書評(2)] [書評(3)]

5. 首都圏人口の将来像

画像5

人口地理学の立場から、21世紀の首都圏の人口変化について解説している専門書です。郊外化の終焉と都心回帰、郊外住宅地の衰退などが取りあげられています。

<書誌情報>
江崎雄治 2006. 『首都圏人口の将来像 都心と郊外の人口地理学』 専修大学出版局. [書評(1)] [書評(2)]

6. 変わりゆく日本の大都市圏

画像5

1990年代以降の大都市圏の変化(都心回帰、郊外の衰退、都市縮退など)について10名を超える地理学者が執筆したものです。現在進行中の都市圏の変化を知りたいならまずこの本でしょうか。

<書誌情報>
日野正輝・香川貴志編 2015.『変わりゆく日本の大都市圏 ポスト成長社会における都市のかたち』 ナカニシヤ出版. [出版社サイト] [書評(1)] [書評(2)]


本日は6冊挙げてみました。興味があるトピックがあればぜひ実物を手に取ってご覧ください。あと、書籍化はされていないように思うのですが、重要な研究として、人口の都心回帰を指摘した矢部(2003)や、東京湾岸部での住宅取得の新動向を論じた小泉ほか(2011)などもあるかと思います。

(補足)紹介した図書の書影は、版元ドットコムから転載しました。本の紹介目的であれば、リサイズ以外の改変しなければ転載して使用して良いそうです(外部リンク)。