人文地理学のおすすめ専門書(1): 全般的なもの

地球学類人文地理学・地誌学分野を希望している新3年生・興味のある新2年生を主対象読者と想定して、人文地理学関係のおすすめ専門書をいくつか紹介したいと思います(あくまで個人的な意見です)。

今回は、関心のある分野等によらず全般的に関わりそうな本を選びました。(私の興味のある分野に関しては続編で取りあげる予定です)

1. ジオ・パルNEO 地理学・地域調査便利帖

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1冊だけ選ぶならこの本を選ぶ人も多いと思いますが、特に地域調査の方法を学ぶうえで参考になるかと思います。例えば文献調査の方法(第5章)、地図・空中写真の活用法(第6章)、主題図の作成法(第7章)、統計の利用法(第8章)、GISの利用法(第9章)、フィールドワークの方法(第10章)などがありますが、これは実験の授業でも行うことで、実験の授業の参考文献にもなっています。卒業研究でも大きく関わってくる内容で、卒論執筆時に見返していたことも少なくありませんでした。

<書誌情報>
野間晴雄・香川貴志・土平博・山田周二・河角龍典・小原丈明編 2017. 『ジオ・パルNEO 地理学・地域調査便利帖』 海青社. [出版社サイト]

2. 人文地理学事典

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人文地理学の広範な内容に関して解説している事典です。人文地理学の専門用語を調べるときなどに参考になるかと思います。とはいえ2万円する本なので、図書館や研究室(1G302)で適宜閲覧することになるのかなと思います。(院進する人は買っても良いのかもしれませんが。私は院試前に買いました)

<書誌情報>
人文地理学会編 2013. 『人文地理学事典』丸善出版. [出版社サイト]

3. 地域調査ことはじめ

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若手地理学者(といっても14年前の本なので今では若手ではないと思いますが)が、卒業研究や修士研究などを事例に挙げながら、地域調査のポイントなどを解説する書籍です。もしかしたら金曜2限のセミナーの授業で扱われるかもしれませんが。特にフィールド調査で卒論を書く人には向きそうに思います。

<書誌情報>
梶田真・仁平尊明・加藤政洋 2007. 『地域調査ことはじめ』ナカニシヤ出版. [出版社サイト]

4. 地域分析

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人文地理学における計量分析を扱った本です。多変量解析やネットワーク分析、近接性、空間的相互作用などについて解説されています。実験の授業で多変量解析について扱うかと思いますが、そのときの参考文献になるかと思います。ちなみに大学の図書館に大量に所蔵されていますが、少なくとも、計量的な方法を使って卒業研究をやってみたいなと考える人は買って損はないと思います。自習用の1冊目のテキストとして役に立つと思います。

<書誌情報>
村山祐司・駒木伸比古 2013.『新版 地域分析』古今書院. [出版社サイト]

5. 地域分析ハンドブック

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統計データや聞き取り調査の結果などをグラフや表にまとめる場合の、見やすい図表を作成するときのヒントが書かれています(Excelのデフォルトから一手間加えるだけで見やすくなります)。授業で紹介された記憶がないのですが、3年次でも講義や野外実験のレポートなどで活用できるかと思います。卒論のグラフの作成時に初めて読んで参考にしていたのですが、もっと早くこの本に出会っていれば他にもいろいろ活用できたのにと感じることはありました。

<書誌情報>
半澤誠司・武者忠彦・近藤章夫・濱田博之 2015. 『地域分析ハンドブック Excelによる図表づくりの道具箱』ナカニシヤ出版. [出版社サイト]

6. 地図表現ハンドブック

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主題図を作成するときの地図表現技法を取りあげた本です。秋学期の実験の授業で主題図作成を行うときに目を通しておくと良さそうです。

<書誌情報>
浮田典良・森三紀 2004.『地図表現ガイドブック 主題図作成の原理と応用』ナカニシヤ出版. [出版社サイト]

7. 現代人文地理学の理論と実践

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人文地理学の理論を取り扱った書籍です。現代の人文地理学の方法論(人文主義、ラディカル地理学、批判地理学、ポストモダン地理学、ポスト構造主義地理学など)について詳述されています。学史・方法論に関して授業では扱われないのですが、特に第1部は自習用として読むと良さそうに感じました。ただ、この辺りのトピックに関しては哲学や社会学の予備知識を要することもあることには注意が必要そうに思います。

<書誌情報> 
ハバート, P.・キチン, R.・バートレイ, B.・フラー, D. 著, 山本正三・菅野峰明訳 2018. 『現代人文地理学の理論と実践ー世界を読み解く地理学的思考』 明石書店. [出版社サイト]


今回は、細かい分野によらず人文地理学全般的なものから選びました。次回は、私の興味のある分野の本を中心に取りあげてみたいと思います。

(補足)紹介した図書の書影は、版元ドットコムから転載しました。本の紹介目的であれば、リサイズ以外の改変しなければ転載して使用して良いそうです(外部リンク)。