昔のnVidiaと「伝説の男」との出会い

私は、実はnVidiaに対してあまり良い印象を持っていない。

話の発端はnv1だ。恐らく皆は知らんであろうがWindows95以前に最初にnVidiaが開発したビデオカードだよ。バーチャファイターがバンドルされてただよ。これが「大きな科学」社倒産でウチの店にも流れて来ましてね……(債権として在庫が流れて来たらしい)

nVidiaの初期製品！　さぞかし……と皆は思うのであろうが、Win95ドライバー無いからまず購買対象にならんの。また、仕入れ金額高いから売ると赤出るの！　結局ウチの店に出しても売れんかった。

で、次にnVidiaと触れたのがRivaTNT時代だわ。Riva128ですげぇすげぇと騒がれた後継の筈だが、相変わらず画面暗いしドライバーの初期値がなんやおかしい。
で、東池袋商会(仮名)時に取り扱いのあったSuper7系M/Bが某社パソコンに採用されそうになるのだが、なんかどーも熱暴走してフリーズこく。ワイは技術部としてこの問題解決の為に朝風2号館ビルB1に向かった。当時私は若造の癖にノートパソコンとPHSでモバイル通信環境を個人所有しており、現地でメーカーとメール連絡できたりしたの。この為問題解決が迅速に行えて実にアレ。(当時の環境としてはかなりイケてる感じである)

でね、結局問題はVGAのオーバーヒートで、ヒートシンクだけでは無くファン付けたら解決するってトコに落ち着いた。当時はまだビデオカードにファン付けるのが当たり前では無かったのである。

さて、ここでパソコン売ろうとしてる会社さんの置かれた状況を解説しよう。
確か冬のボーナスシーズン用にコストパフォーマンスが高いゲーミングPC売ろうってんで、検証と並行して数百台分の部材調達した後の話である。ワイが駆り出されたのも納入済みのM/B返品されても困るからだし、つーかウチの商品結構売れてて熱暴走の話とか知らんし。
各社「ゲーム用ならこれがいんじゃね？」で見積り出して納品してるんで、そもそも熱暴走するってのがおかしい。
で、ファイナルリアリティ(当時流行りのベンチマークソフト)回してるだけで熱暴走とかしたもんだから、組み立てラインは停止するし、もうこの時点で発売日間に合わんし、正直お客さん激おこなんよ。(毎日の様に検証部屋に来て、自社取り扱い品以外の事までサポートした東池袋商会(仮名)チームは顧客からの信頼を勝ち取るのだがなっ！)

そして遂にその日が来た。
ウチなんかとは比較にならない大会社、現存するDMMと同じイニシャルになる解散済みのパーツメーカーの伝説の営業、O氏である。余りの伝説っぷりに「一緒に働くのは嫌だが彼のエピソードだけは聞きたい」業界人がごまんといる超有名人だ。

で、たまたま毎日詰めてたからO氏とSMの購買、検証氏と同席して伝説を垣間見た訳だが……

「ファンとか追加ではいかんのですか？」
「製品保証の関係で本社からNGが出ています」
「でも、ゲーム用なのにゲームしてたら熱暴走するのは不味いですよね？　何か対策はあるのですか？」

伝説の男、O氏はバッグからエアダスターを取り出した！

しかも今みたいに逆さにして使える奴ではない

「熱暴走したら、これを逆さ吹きしたら……」

皆は場の空気が凍ると言う現象を体験した事はあるか？

私はある。朝風2号館ビルでな。
O氏の発言を耳にして、ワシらは全員固まった。今の子は知らんやろが、エアダスター逆さ吹きすると液化したガス直吹きになるから氷点下まで対象を冷却できるんだわ。更に空気中の水蒸気まで冷却されて結露→氷化して下手すっとショートこくからやらん方がいいぞ(老婆心)
これがギャグならまだ良かった。顧客は怒るだろうがお茶目と強弁できなくも無い。

しかしO氏はガチだった(恐)

購買氏が呆気に取られてO氏に訊ねる。

「あの……ウチのパソコン数百台売るんですけど、その台数分エアダスター要員用意して貰えるんですか？」

購買氏もO氏に当てられてバグり気味だ。
結局対策無しだしゲームしてたらフリーズするビデオカードって事で、O氏の会社のビデオカードは組み込み用だけでは無く全店舗にあった全ての在庫を返品され、新製品出る度に検証部署で機能試験受ける羽目になった。無論ハングする様なら取り扱い停止や。もうそれぐらい激おこなのに、O氏は仕方ないですねと諦め顔。普通はヤバいヤバいと日本支社全体で右往左往して問題解決に走るトコなのに、O氏独りでこれ決めちゃった！(バカか天才かの2択である)

まぁ、営業と共に人間関係強めにしておいたおかげで、DMM(仮名)のビデオカードの代わりに東池袋商会(仮称)で取り扱ってたビデオカード売れたんだけど、そんな事よりO氏伝説を間近に見れたのが大変良かった。業界人と酒盛りする時、このネタ鉄板なんだわ。普通は信じないと言うか、エアダスター逆さ吹きは出会って来た全ての業界人の予想範囲外。(まぁ、つまりワイもO氏を伝説にする手伝いしてたって話だな！)

実は氏の伝説はこれに留まらない。某日本国内PC関連展示会で、登壇者と対話しつつ自社製品語るイベントで対談相手をパワポのページめくり要員にしてしまうとか(丁度O氏の後にワイが登壇するスケジュールだったのでその公演最前列で見てて、しどろもどろになってマウスカチカチしてる対談相手見てクスクス笑ってた)、彼の日常が、彼の言動の一つ一つが伝説級なんだよ！