男社会を勝ち抜けデイジー!新たなスターウォーズが君を待つ~「ヤング・ウーマン・アンド・シー」
女性で初の英仏ドーバー海峡を泳いで渡ったガートルード・エーデル(ドイツ系移民であり映画の中では英語読みのイーダリーEderle、愛称のトゥルデーをつけてトゥルデーイーダリーと呼ばれる)の映画である。
(ディズニープラスで公開中)
幼少の頃、麻疹で生き延びられないと医師に言われた体力がなかった少女は、その後泳ぐことに夢中になる。1914年、セントローレンス川で火災が発生した蒸気船では多くの女性がおぼれ死んだ。彼女たちは女故に泳ぎを知らなかったからだ。
ガートルードの母(背筋をピンとたてたヴァルキューレのような勇ましい女性)は娘たちに泳ぎを教えると夫に宣言する。
トゥルデーは地元コニーアイランドのビーチで(麻疹は伝染すると信じられ公営プールでは泳ぐことができなかった)泳ぎ続け、その後世界記録を達成、一躍時の人となる。
パリオリンピックに出場。チームでは金メダルを取ったものの、個人では銅メダルに留まった。
この後彼女は英仏海峡横断を決断する。
多くの者が失敗し死亡した者もいた。もちろん女性の挑戦者はいなかった。
コーチとなった、ジャベス・ウルフは何度も横断に挑戦し、結局22回も失敗することになる。トゥルデーは彼のコーチの元、途中で泳ぎを中止させられる。彼女は「けいれんを起こして倒れた」と彼は主張するが、彼女は「彼女にやめるように命じた」という。映画の中ではさらに卑劣なエピソードで脚色されているが実際はもっと酷かったのかもしれない。
女性蔑視、男社会の中で彼女は如何に勝ち抜き勝者となるか。弱き者が数々の試練を乗り越え勝利に向かうその姿、オーソドックスな展開とは言え、史実が持つ力が感動を呼び起こす。彼女は自らの力で泳ぎ切ったのである。
彼女はNYで200万人ものパレードに出迎えられたのである。1926年のことである。南部では未だ黒人差別で黒人が殺され、女性の参政権が認められたのはわずか6年前のことだった。
で、この映画の主役はデイジーリドリーである。あの新スターウォーズ3部作の主人公の彼女である。あの伝説的な映画の新サーガの主人公となりながら、その後とんと映画に恵まれなかった彼女が、世界記録を出しながらその後苦心惨憺するトゥルデーの姿に重なるのである。
この映画でようやく彼女もドーバーを渡ったと言えるのではなかろうか。スターウォーズの主役を女性が演じたことに対するバッシングが当初合ったことは確かであり、それを乗り越えても内容に対するバッシングもあった。
たとえそれらを彼女が乗り越えたとしてもその後良い映画に恵まれたと決して言えないだろう。
トゥルデーのようにヒーローを目指しながらも過去の栄光を乗り越えられず、もがき続けた彼女はこの映画でようやくヒーローに返り咲いたと言えるのではなかろうか。この映画は間違いなく彼女の代表作の一つになったと言ってよい。
新たなヒーローに返り咲いた彼女を私は大歓迎したい。更にはその先には、新しいスターウォーズが、輝かしい未来が君を待っている。その雄姿を見るのが待ち遠しい。
ということで早くやってくれないかな。2026年なんてまだ2年もある。
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