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私らしいキャリア

仕事柄、講演会やワークショップの休憩時間に「自分らしいキャリアを築くには、どうすればいいのですか?」と聞かれることがあります。「自分で自分の好きなことが何なのか、よくわからないんです。これだ!という好きなことが見つけられたら、きっと自分らしく輝けるんだろうけど。私にはそれがないので、どうしたらいいのか…」というご相談もあります。

そう言いたくなる気持ちには、とても共感します。

私自身「自分らしいキャリア」を探し求めて、ずっと焦燥感を抱えていました。「自分はこれでいいんだ」と心底思えるようになったのは、笑っちゃうほどつい最近。
Art of Coachingのトレーナーとしてデビューしてからのことですから。

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「自分らしいキャリア形成」とは?という問いへのスマートな答えがあるのかもしれませんが、今の私にはわかりません。そして、私は自分の体験からしかお話しすることしかできません。私の体験がそのまますべての方に当てはまるとも思いません。結局のところ、それは一人一人、自分で見つけるしかないんじゃないかと思うのです。

でも、それで終わってはなんの足しにもならないので(笑)少し考えを進めてみます。

その人が注いだ "思い × 時間 × エネルギーの総量" がキャリアになる

キャリア形成プロセスは色々ありますよね。

歌や踊り、あるいは絵など、子供のころから大好きなことがあり、その才能にも恵まれてずっとそれに集中し続けて、それを職業としているというような方もいます。
取り立ててこれをやりたい!というものがなく、人のご縁や与えられた仕事など、とにかく今目の前のことに一生懸命取り組んでいるうちに、振り返れば自分ならではのユニークなキャリアが出来上がっていたことに後から気づくというような方もいらっしゃるでしょう。
これだ!と思って一生懸命取り組んできたのに、思わざる事態が起きて方向転換を余儀なくされ、でも後から見ればそれがきっかけで自分らしいキャリアが出来上がった…というような方もおいででしょう。

キャリア形成のプロセスやアプローチは色々あるにしても、私には、その一層下に、普遍的な1つの真実があるように見えます。その人がそこに注いだ思い×時間×エネルギーの総量が、その人のキャリアになるというシンプルな構造。
そして、しっかりと形を成すキャリアを培った方々のどなたにも共通するのが、“平坦な道ではなかった”ということ。悩みながら立ち止まったり、時には引き返したりしながらも、長いスパンで見れば、あきらめずにずっとエネルギーを注ぎ続けてきたものがあるということ。自分一人で生きているように思えていたとしても、色々な方のお力で人生の扉が開かれていくものですし、自分らしいキャリアを築くには、とにかく、“もがきながら一生懸命生きる”しかないんじゃないか…と思うのです。

輝かしいキャリアの奥にある努力と計り知れない苦悩。卓球の石川佳純選手が語った言葉の重み

先日、卓球の石川佳純選手のテレビ番組を見ました。2019年に激しいスランプを体験、何をやっても裏目に出て、かなり格下の選手相手に大敗。これまでのスタイルを捨てて、根本的に自分を変えようともがき苦しんだ末に、ギリギリの土壇場で2020東京オリンピックへの出場権を手にするまでのドキュメンタリーでした。

その彼女が最後に語った一言。

「子供のころ、卓球が大好きでした。努力したら努力した分だけ成果がでるし。全日本で優勝したら人生バラ色になるんだろうな、なんて思ってたけど、全然違いましたね(笑)。上に行けば行くほど辛くなる。努力したつもりでも結果が出なくて打ちのめされて。でも努力しないわけにはいかなくて。結局、自分を助けてくれるのは自分しかいない。子供のころ考えていたのと比べると、苦しみは10倍ですね。でも、喜びも10倍」。

大きな輝かしい達成の背景には、聞く者を圧倒する巨大な苦難があります。

今だから思える。私らしいキャリア = 私ならではの様々なコンプレックスが生み出した美しい結晶

コーチとして色々な方々に出会い、その人の生きてきたプロセスを教えていただきます。
メディアに取り上げられるようなことのない市井の人でも、お話を伺えば伺うほど、人間一人一人の人生のドラマとその奥深さに目を見張ります。
ここまでに至る道で超えてきた深い闇が背景にあるから、その人が今ここで放っている光の輝きがある…そんなことはよく色々な本に書いてあることかもしれませんが、最近、本当にそうだなぁと思うようになりました。


今は、私にも”自分らしい”と思えている仕事があります。
そして、この仕事をするために今までの全ての経験があったのだと思えるようになりました。


根本的な自己変革を支援するコーチング、組織をコーチする形で、2〜3年伴走しながら自走する組織を生み出す組織開発、人としてのあり方に焦点を当てたリーダーシップ開発、女性活躍推進などといった私らしいキャリアの産みの親は、自分の中にあった様々なジャンルの劣等感・欠乏感・焦燥感といった否定的な感情・感覚だと思えます。

キャリアを成すには継続的な研鑽が必須で、意思の弱い私が何かを継続するには、強い痛みを伴う否定的な感情を何としてでも払拭したいという”執着”が必要だったからです。

飽きっぽい私がコーチングの学びから離れそうになった時の命綱は、「器用貧乏のコンプレックスを味わうのは金輪際ご免!自分にはこれがあると誇れるものを手に入れるには、きっとこれが人生で最後のチャンス。だから、突き抜けたところに出るまではコーチングを絶対やめない!」という執念(笑)。

独立してから組織開発コンサルを始め、それにやりがいを感じられたのは、自社の経営改革・風土変革に向き合った組織リーダーとしての深い挫折感が、私に「人が幸せになれる企業風土を作りたい」という強い願望を植え付けたから。

女性活躍推進の仕事に就く発端は、自分の女性性を否定しながら働いてきたことへの違和感。出産・育児という選択をなにげなく先延ばしにし続けて、意識的に向き合ってこなかったことへの後悔でした。

今現在の自分がその否定的な感覚・感情を抱えて苦しんでいるかといえばだいぶ心理状態は違って、穏やかになっていますが、あの否定的感情が無ければ、私はこのキャリアを手にしてはいなかったとはっきりわかります。


「私らしいキャリア」とは、私ならではの様々なコンプレックスが美しく結晶したものじゃないかというのが、今日ここまでの私の人生からの結論です。

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