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組織も自分も豊かに成功するために、リーダーが受け入れるべき「影」とは?

前回は「光と影」の概念を論理的に理解していただくために、敢えて抽象的な話をさせていただきました。今回は、具体的な体験談をご紹介しつつ、また一歩「光と影」の理解を促進していきたいと思います。

クライアントに影を押しつけていた私

コーチとしてクライアントのお話を聞いているとき、「ここがボトルネックだ」「これが、この人が見ようとしていない影の部分だな」というものがはっきり見えることがあります。

駆け出しの頃は、「これだ!」というのを見つけたなら、そのまま切りつけるような鋭いフィードバックを返していました。「あなたのこういうところが問題なのではないですか?」というふうに。突然一刀両断されたクライアントは、「ウギャー」となり、「参りました!」と静かになるか、唖然として二の句が継げず、その後は私の独壇場になることもありました。

こうしたセッションをしていた頃も、おそらく私の着眼点はそれほど間違ってはいなかったので、痛みを伴う鋭いフィードバックを好む方々が契約をしてくださっていました。

前回の記事を読んでくださった皆さんなら、私が自分の中の「光と影」をバラバラに分離して体験していたということがお分かりかと思います。当時の私は、切られたクライアントがどれほど傷ついているかということへの共感はなく、むしろ「いい仕事した」と気持ちよくなっていたほどです。クライアントと自分を分離して、自分が光になって相手に影を見ていました。クライアントは私に光を見て小さくなっていたか、深いところで反発していたことでしょう。そんなコーチに、クライアントの影を適切に扱えるわけがありません。

私が切りつけたセッションの次の回には、あのやりとりはどこへ?と記憶を疑うほど、クライアントがすっかり元通りになっていたり、大きな犠牲を払ったわりには小さな変化にとどまってしまったりすることが多かったように思います。

いま振り返ってみると、自分の傲慢さに打ちのめされます。といって、あの頃のクライアントに直接お詫びをお伝えすることはできません。自分の至らなさを修正して、できる限り人を傷つけることのない存在に変えていく努力を怠らないようにすることで、罪を償うしかないと感じています。

自分の未熟さが、相手の可能性を制限している

その努力の成果として、最近では、同じように「これが目を逸らしている影だな」と気づくと、そのクライアントに対して共感が湧いてくるようになりました。「わかる、私も同じことやっちゃうな、その状態ならそうなるよね」と。でも、そこで本人が気づかないままでいるなら、クライアントは無意識化された光と影が作り出す苦しい葛藤の中にとどまり続けることになります。ですので、やはりフィードバックは伝えます。「これを言われたら、痛いだろうな」と感じながら。

いつもという訳にはいきませんが、そのようにフィードバックできるときの私のエネルギーは、バッサリ切りつけていたころとは全く違ったものです。同じ影を抱えるものとして、共感的に提供するフィードバックですので、私自身にも痛みがあるのです。

そして、そのように私自身が自分の影に対する気づきとともに関わると、クライアントも大きく変容して前進することができるということがわかってきました。私自身の未熟さが、クライアントの可能性を制限しているということが、これまた痛みとともに理解できるようになったのです。

上司として部下を育てるときにも、まったく同じ現象が起きるように思います。

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