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【#パー蔵の読書感想文】"サイクス=ピコ協定 百年の呪縛" Written by 池内恵

パー蔵です. 大学院進学を考え始めたのが今年の夏休みからで, 本格的に目指そうと思ったのは後期が始まる9月中旬あたりからです. 今まで本を何冊か読んできましたが, 文章にしてちゃんとアウトプットするのは今回が初めてです. この感想文の回数をこなすうちに, 記事を読んでくださっているあなたにより内容が伝わりやすい文章を書けるようになっていくことを目指し, 今回はその第一歩ということで始めたいと思います.

記念べき第一回目のパー蔵の読書感想文は

【中東大混迷を解く】サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 池内恵著

この本では, タイトルにもある"サイクス=ピコ協定"を軸に, 中東問題について議論を展開しています. ページ数はざっと140ページ程で, 内容も結構わかりやすいため, 中東研究の入門書の一つとして利用することもできるのではないかと, 個人的には感じる程に好印象を持った学術書です.

この本の内容の流れは, 以下の通りになります.

・第1章:サイクス=ピコ協定について, 「誤解されやすい点」「協定の目的とその影響」「セーブル条約とローザンヌ条約との繋がり」の主にこれら3つについて, 歴史的視点から考察している.
・第2章:露土戦争から, ロシアの中東への動きと, オスマン帝国の崩壊の2点を基軸に, 現代のロシアとトルコとEUの関係を考察している.
・第3章:クルド人の過去に影響を受けたさまざまな出来事から, 中でもオスマン帝国による支配と帝国の崩壊に伴った, クルド人の現在の住居地域の散布化の原因, そして, 少数民族の動きの変化から民族全体について考察している.
・第4章:現代の難民問題について, 西欧諸国とトルコと当事者民族それぞれの視点から, その問題に至るさまざまな歴史的出来事に沿って考察している.

※第5章はここでは割愛する.

以下, 「サイクス=ピコ協定」「難民」の2つを軸に今回の読書感想文を記述する. 

なお, 「〜ということ」「〜である」のような断定的な文言について, パー蔵の解釈であって, 間違っていることもありえるということをご了承いただきたく思います. その上で, コメントにて指摘等していただけると, 大変嬉しいです. また, この場で, 建設的な意見交換ができれば喜ばしい限りであります. このようなことを, 感想文の執筆前にお断りさせていただきましたが, 改めてその旨のご理解のほど, よろしくお願いいたします.

それでは, 本題に写りたいと思います. 

まず, 池内先生が「サイクス=ピコ協定」について強調していることは, 第一に, 「サイクス=ピコ協定は, オスマン帝国の崩壊後の中東の国家と社会における問題の解決」を目的として結ばれたものであるということ. 第二に, 「イギリスとフランスとロシアによるオスマン帝国を巡っての介入と交渉を展開」するために結ばれたものでもあるということ. これらの主張が示していることは, 「サイクス=ピコ協定が諸悪の根源とは一概に言えないし, なければよかったという話ではない」ということだ. なぜなら, オスマン帝国の崩壊後の中東の国家と社会の状態というのは, "少数民族の国家としての独立が多発し," しかし一方で, "その国家の中でもまた別の少数民族が発生する"という, いわば入れ子状の紛争になってしまっていたのである. そして, それらの国家というのは, 国民国家としての社会秩序を形成し維持できる程の主体としては成れておらず, オスマン帝国以外にその主体として国家秩序を維持できる国は他になかったと言っても良いような状況であったからだ. このように考えるならば, 妥当な策であったのかもしれないと考える余地もなくはないのではないだろうか. その他, 「サイクス=ピコ協定の民族統一を守っているという肯定的な見方も存在する. だからと言ってこの協定が良いものであり, 問題解決に貢献できたとは言えないのも事実だ. むしろこの協定を機に未だに残されている中東問題もある.  

以上のパー蔵による簡単な解釈と内容の要約を踏まえて, 「サイクス=ピコ協定」について, パー蔵の考えを述べていく.

まず, 「サイクス=ピコ協定」が作られた目的を考えていくと, むしろ必要なものであったのではないかと思う. もし仮に, この協定における英仏露3者間の占領地の合意がなかったらと考えると, 第二次世界大戦がこの時点で発生していてもおかしくはなかったのではないだろうか(論理的飛躍がすぎるかもしれないが, 限界事例的な視点を意識して考えたため, その意図をご理解いただきたい). 確かに, この協定によってさまざまな民族が地理的に分断されたり, 難民の発生, その前背景としてあるセーブル条約及びローザンヌ条約, さまざまな問題や出来事が発生したことは事実である. だがそれらは, もし仮, 「ロシア帝国が二月革命なしに崩壊しないですんでいたら?」「フランスの実効支配がうまく機能していたら?」と考えると, 「サイクス=ピコ協定」も違った形で, もしかすると良い形で機能したかもしれない. ロシア帝国の崩壊とフランスの実効支配の伸び悩みは, いずれも当事者国家によるものであって, 「サイクス=ピコ協定」とはまた別の問題なのではないだろうか?しかし, この意見にもさまざまな批判があることは重々承知している. 

次に, 「難民」についてであるが, 強制的に追われたり, 危険や抑圧から避難したり, その他さまざまな理由により発生する. 中東に関しては, オスマン帝国・トルコ人の「アルメニア人虐殺」が主にとりあげられている. 「アルメニア人虐殺」とは, 簡単に説明すると, 第一次世界大戦後に, アナトリア東部の諸都市から現在のシリア北部へ放逐される間に, その道の途中で殺害されたり, 暴行や誘拐されたりした出来事をいう. 世界各国に散らばったアルメニア人が今でもトルコに責任を追求している. しかし, トルコ側はいまだに認めていない. それなりの根拠も実際にある. アルメニア人の武装集団が独立を目指し, オスマンに対して蜂起したり, 対戦中にアルメニア人側が, 異民族・異教徒を虐殺したり, 各地でトルコの要人を暗殺するテロを行ったりもしていた. トルコ(オスマン帝国)ヲ一方的な加害者とは言えない所以はここにある. 「しかしオスマン帝国の第一次世界大戦中の強制移住の政策によって大規模な難民を生じさせた」のも事実である. 「他方でそもそもロシアによる侵略や英仏の植民地主義の進出という背景で虐殺が生じたというトルコ側の言い分にも, 歴史を総合的に捉えるためには, 耳を貸す必要がある.」

以上のパー蔵による簡単な解釈と内容の要約を踏まえて, 「サイクス=ピコ協定」について, パー蔵の考えを述べていく.

中東の難民問題について, どの国が悪いとか, どの国が責任を取るべきだ, というように一つの国に全ての責任を押し付けることは, この問題の複雑性からして現実的な生産性のある議論だとは思えない. だからこそ, 池内先生がこの著書で述べていたように「虐殺の免罪」のためではなく, 「なぜそのようなことが起きたのかを理解する手がかりとして, さまざまな立場に耳を貸す必要がある. 難民問題に関しては, 出来事だけを理解すれば議論を提示できる程簡単なものではないと思うため, ここでは「サイクス=ピコ協定」のように, パー蔵自身の意見を述べるつもりはない. 

著書全体を通して, 改めて中東の紛争状態を理解することは, そう簡単なことではないということを痛感しました. まだまだ中東について勉強し始めたばかりですが, そんな僕でもなんとなくでも理解できる, 比較的わかりやすく書かれていたと感じています. あと数回読み返しながら, 理解を深めていきたいと思います. 

また, Twitterや国際政治chなどでの池内先生の発言, いつも勉強させていただいています. この著書からも, たくさんのことを学びました. このような本や池内先生を知る機会に恵まれたことに感謝します. パー蔵の今の知識量ではことばに紡いで共有することができないということが非常に残念です. 徐々にこのように読書感想文を書き続けていく中で, ことばにできるように努力していきます.

このような形で, 読書感想文を書いていって良いのか, かなり疑問に思いますが, 今回は第1回目ということでお許しくださればと思います. 

次回以降, 書き方を改善していきながら, 回数を重ねていきたいと思います.

ぜひ, この読書感想文を読んでくださったあなたとともに, 中東・イスラームについて, 理解を深めていけたらと思います. 

パー蔵自身, 胸張って語れるほど理解できてはなく, まだまだ勉強中の身であります.

この記事を最後まで読んでくれたあなたと共に, どんな姿になっていようと, いつまでも若々しく, 学び続けられる大人で在りたい.

まだまだ未熟者ですが, どうか温かい目で見守っていただけると幸いです.

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※これは成人式の時の写真です. 懐かしいものですね, これがもう2年前になるとは. みんな元気にしているだろうか.

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