「第三のあきらめ」(ガルシア・マルケス)

あらすじ

 冷ややかで垂直に切り落とすような音がしています。聞き馴染んだはずの音ですが、鋭くて痛い音に感じられます。

 その音は頭の中で響き、「彼」はどうにもできません。「彼」は精神的に生きているものの、身体は動かすことができません。7歳のときに身体が動かなくなってから18年間、棺の中に安置されていました。

 「彼」にとって音よりも恐ろしいものはネズミです。ネズミは棺の中に入り込み、「彼」の身体をむさぼっています。まぶたや網膜をかじろうとするネズミは怪物のように見えます。

 ある日、「彼」の身体は腐り始めてしまいます。自分が死んだと思っていた「彼」は恐怖を感じました。身体を動かせないだけで、実際は死んでいなかったのです。「彼」には何もできず、諦めてしまいました。

感想

 植物状態になっている「彼」が感じている痛みを様々な表現で伝えています。「彼」はけして身体を動かすことができませんが、意識があります。18年間何もできない状況というのは想像を絶する苦痛がありそうです。

 時間の経過によって母が悲観的になっていくというのもリアルな空気を作り出しています。「彼」が生きている実感が無くなり、苦痛とともに完全な死が近づきます。親戚や周りの人とのつながりがなくなることがもう一度訪れる死だという印象です。

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