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プラプラ堂店主のひとりごと㊶

〜古い道具たちと、ときどきプラスチックのはなし〜

オーディオブックのはなし

 ぼくは、昔からラジオが好きだ。ラジオドラマも好きで「青春アドベンチャー」や「ラジオシアター文学の扉」なんかもよく聴いていた。最近はポットキャストやオーディオブックも聴くようになった。オーディオブックは、ハウツー本やビジネス書が多い感じがする。ぼくが聴いているのは、今のところ無料の、しかもごく短いものだけだ。

 先日、カズオイシグロの「クララとお日さま」が1コインで聴けるのを見て、すぐに申し込んだ。新刊を買おうかどうしようか迷っていたから。さっそく本のページを開いてみる。

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 えっ!13時間!?長さにまずは驚いた。一冊読んでもらうと、こんなにかかるのか。まあ、のんびりでいいかと思って聴き始めた。店でお客さんのいない仕事の合間に。朝の支度をしながら。夜の寝る前に。時間を区切りながら、ちょくちょくと聞いていく。小説を聴くとき、読み手のクセが気になって受け入れられないことがある。「クララとお日さま」の場合、登場人物のセリフの部分は感情を入れて、しかもそれぞれに演じ分けて読んでくれている。ただ、あまり大げさではないので、嫌な感じはしなかった。

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 でも、いつでも何かしながら聴いているので、所々聞こえなかったり、聞けなかったり。聴きそびれた箇所をまた戻って聞いたりもした。大体は、まあ、いいかと思ってそのまま続ける。だけどそのうち、ぼくはだんだんと主人公のクララに感情移入していった。聞きそびれた部分がどんどん気になってくる。なのに、戻る部分の操作がわかりにくい。半分くらい聞いた頃、ぼくは思った。
(もう、限界だ…)
 本を買おう。オーディオブックで新刊が聞けたら、本が売れないんじゃないかと思ったけれど、逆だった。読んでみたかったけれど、ぼくはこの本を必ず買おうとは思っていなかった。でも、もう買わずにいられないじゃないか!

 2000円くらいかと思ったら、2750円!?けっこうするなぁ。今月は出費がかさんでいたので、キツイ…。

 でも。やっぱり、本はいいな。文字を追いながら思う。好きな時に好きなページに戻って、自分のペースで読める幸せ。新刊の本を手にした時の厚みと重さ。表紙の絵の美しさ(ぼくの好きな福田利之さんだった!)を眺めて、紙質を触る楽しさ。僕はすっかり満足した。ちゃんと読了したら、オーディオブックでまた聞くのも楽しいかもしれないな。

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ありがとうございます。うれしいです。 楽しい気持ちになることに使わせていただきます。 また元気にお話を書いたり、絵を描いたりします!