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【黒歴史!小5のオリジナル小説】桜の下の桜

あたたかい春。近所の小学校のまどから運動場を見下ろす少女が一人。
名前は猫月千奈(ねこづき・ちな)。
いつも千奈は外をながめている。たった一人で。
「転入生かな、あの子」
花びらが頭にいくつかのっかっている。だが、そんなこと気にせずにただ桜を見上げ続けている。
なぜか、千奈はその少女を忘れることはなかった。

―中休み―
千奈は親友のさそいもことわった。
そしてろう下をただ歩く。頭の中は、あの少女でいっぱいだ。ぼーっとしていてだれかにぶつかる。
「すいま…っ!」すいません、最後まで言わなかった。いや、言えなかった。
千奈の頭が赤くなる。自分でも分かった。あの少女だったからだ。
チャイムが良いタイミング(千奈にとってはの話だが)で鳴ったので、千奈は、「チャイムが鳴ったんで失礼します~。」っと言って、全力で逃げるかのように走って行った。
なんと、まぬけで恥ずかしい行動なのだろうか。
でも、それが猫月千奈なのである。

「ただいま~。」と、千奈がへろへろで帰ってきた。ドアをあけると母がぐうたら、ソファでくつろいでいる。(これはいつものことだ。)
見なれているけど、やっぱりあきれてしまう。
「お、お母さん、そうやっていると太…っ!」千奈の言葉が止まる。
しばらく間をおいて、さけぶ。
「これ、私のポッキーですぅ。自分のお金で買ったのにいぃ!私の分は!?」
「おそらくもうないよ。」弟が口をはさんできた。
「どうしてよ。まさか、あんた、昼間からずっと食べてたの!?」
もう、”お母さん”があんたになっている。
「ボクも食べたもんね~」ニ~っと笑って言う。
が、そこに千奈はいない。
「アネキ?」
「さっき、よびりん鳴ったでしょ。だれか、知んないけど。」千奈が答える。
「来たんだわ!」さっきまで、ぐうたらしていた母がとびおきる。
「へ?」
「へ?」
二人とも、わけがわからない。
「いらっしゃい。」母が満面の笑みでかけつけてくる。
「…どぅも。」
千奈はひっくりかえりそうだった。
まさか、そのまさか。
あの、少女が立っていた。

「…ち、ちょっと、聞いてないって、おいっ。」
「じゃぁ、二人は、二階行ってちょうだいね。お茶も持って上がるから。」
母が言うと千奈ににっこり、
「とっとと二階にお上がり。」と耳うちし、二人は二階におしやられた。

―千奈の部屋—理由—
長いちんもくが続く―。
その中、やっと千奈が口を開く。
「えっと、な、なぜ家に?」キンチョーして、言葉がかたことだ。
「君…、いや、おまえの母にたのまれたのだ。」少女がつめたい返事をかえした。
(お、おまえ!?しかも、言い直した!?)
ガーンって感じだ。初たい面でおまえはやっぱりつらい。
千奈は、やっとわれにかえった。
「…お母さんに?」千奈の頭は?マークでいっぱいだ。
「あぁ、お前の母にたのまれたのだ。
『あの、とつぜんすいません。そのせい服って頭がよくて有名の桜高でしょ?えっとあの、よければうちのむすめの家庭教師をしてくれませんか?』ってな。」
(この人、そういえば、桜高だ。頭良いんだな。せが小さいから桜中かと思ったのに。)
少女のせい服姿を見て思う。
千奈は、少女の話が終わったことに気がつくと、また質問をする。
「え、それですんなり受け入れたんですか?」
「まぁ、人助けは良い事だ。」
「じゃぁ。わすれていたけど私の名前は猫月千奈です。よろしく、あなたの名前は?」
「私の名は…無い。」
「え?じょうだんはどうかと思いますが?」
「私は、二人のふた子の妹がいる。母は、事故で亡くなったんだ。」
(え…、死んだってこと…。)
なんだか、悲しくなってきた。だが、少女の話は続く。
「そこで、父は、一人になった。子育ては一人ではムリなじょうたいになってきたんだ。そして、五才の私はすてられたんだ。」
(なんか気まずい…。)
とつぜん、しかも初対面でそんな話をされても困る。
長いちんもくにまたもどってしまった。
しばらくして、少女の口が動く。
「ベタドラマみたいだが、それが事実。さ、やるぞ。こんなことは勉強に関係ない。とっととわすれろ。」
「は、はぁ。えと…、あなたは、桜高だから『桜』ってよびます…。」
千奈がおどおどしながら言う。
「好きにしろ。…ところで、千奈。」
(名前でよんでくれた~。)と千奈がじぃ~んと喜んでいると、続きがあった。
「—って変な名だな。」
ピキッときた。そんなの、うちの親に言えって感じだ。
だいいち、名前の無いあんたに言われるすじあいなどない。…と千奈は心の中で言い返す。
「とっとと準備。」短く、かんたんに答える。
千奈は準備しながら、心の中で文句をぶつぶつ言っていた。
だけど、教えてもらったらスラスラ問題がとける。
少女こと桜は、教師なみにわかりやすくていねいに教えてくれた。

―そして―夕がた―
「今日は、これぐらいかな。」
表じょうをかえず、少女は言う。
「あ、ありがと…。だいぶわかったけど…、いつまで来るの?」
「お前の母からは六年の卒業までと聞いているが?」
それが?っていう顔で、首をかしげる。
「た、ただ聞いた、だけ…。」
(今、三学期ちょうど真ん中ぐらいだ。ちょっとさびしくなるな。)
いろいろ考えていると少女が、
「じゃ」と、いつものように短く言って帰って行った。

次の日も、その次の日も、勉強を教えに来た。
―だが、今日はちがった。
いつも、せい服姿なのに、今日の『桜』はちがう。とりあえず、ドアを開けて、部屋に入れてやった。
「その格好はいったい?」
今日の少女はじゅう道着。
「私は今日、理科を教えてほしかったんだけど…。」
「見てわからんのか。今日は、弱っちいおまえをきたえなおしてやる。」
ギロッとにらみながら千奈に言う。
「いいな。」少女はずいっとせめてくる。
「は、はい…。」千奈は、あっけなくOKしてしまった。
「それならよし。さ、やるぞ。とっとときがえろ。」さいきん桜のつめたさは、ヒートアップ中なのである。
あと、『とっとと』も口ぐせ化した。
「いつもの部屋じゃ、あぶないな。…そうだ。」桜はひらめいた様だ。
「?」千奈は逆に?マークだらけ。
「まぁ、とりあえず着替える。良いっていったら入って。」じゅうどう着を手に言った。
「うむ。」短く答えるとろう下に出る。
千奈は、イヤな予感はしたものの、しかたなく着がえる。
「どーぞー。」桜をよぶ。
しぃ~ん。
「あれ?」不信に思い、ドアを開ける。
フツ~に桜はすわってまっていた。
「聞こえなかったの?どーぞーって言ったよ。」桜に話しかけるとすぐ、
「バカかお前は。」少女はつめたく千奈を見た。
「——えっ?」千奈は気付かない。必死で考える。(実際、必死までいかないのだが)
(わたし、何かしたっけ――。じゅう道着も着たしー、ん~、ん~、わからん。)
「かみの毛をゆって。」
「結べってこと?別にそんなのどーでもいーじゃない。」千奈は言い返す。(?)
「フッ」
(鼻で笑われた―—)千奈は二回目の『ガーン』を出した。
「ヘアゴム持ってつけてこい。」ふり向きもせずに言った。
「あの~。ココ私の家なんですけど~。」お~いっと千奈はさけぶ。
「ここだ。」さっそくとうちゃく。
(たしか――、ここは物がたくさん置いてあった部屋だ。キレイになってる――)
千奈はおどろく。
前は、この部屋は物がたくさんおいてあってとてもホコリっぽかった。マットがひかれていて、たなのところも水ぶきされていた。
「昨日一人でかたずけた。」ヨユーの表じょうできっぱり、さらりと言う。
「私の家なのに。一人でかたずけさせてゴメン。あ、そう言えば、ここに合った物は?」千奈がたずねた。
「全部お前のクローゼットにおしこんだ。」また、さらりと答えた。
「なっ!!」千奈が着がえていた時に感じた『イヤな予感』とはこれのことだったのかもしれない。
「じゃ、授業を始める。」と言うと、桜先生は技の種類ややり方を必要以上に長々と話しはじめた。聞いているだけで、ねむくなりそう。
だが、うとうとしていると、
「ほら。そこ、しっかりするっ」と注意する桜先生。
その、長ったらしい説明が終わると、三〇分間練習をし、いきなり本番なのである。
千奈は、ちょっとビビったが(なさけない千奈だなぁ)本気でかかることにした。
特訓開始。
「はっ」千奈が気合を入れて少女、桜先生におそいかかる。(?)
だが、
ひょいっ
「へっ??」
ドス、ドテッバタ。
「イダッ」千奈は5秒以下というすごい短いタイムで負けた。
「ふつ~、いきなり技をかけるヤツがいるか?別にかけてもいいが、負けるかくりつが多いのではないのか?」そう言って、ヤレヤレ、とため息。
「そう…でずね…。」
「今日はここまでだ。じゃあなっ」と言うと、ボロボロの千奈をおいて、少女は帰ってしまった。

―数時間後――
おふろや、歯みがきもすませ、あとはねるだけのじょうたいの千奈。
「今日は、さんざんだったな――ったく。」など、一人でブツブツもんくを言っていると、
「あ、明日のきがえ。」千奈はきがえをだしていなかった事に気付き、クローゼットのドアを開ける。
「な゛――」
ドサ、ドサ、ドサ、ドサ、コン、バン。
「た、助けて…。」
千奈のクローゼットには、今日、特訓させられた部屋の物があの少女によって、おしこまれていた。
それを、千奈は知っていたが、すっかりわすれていて、クローゼットをあけたのである。
大量に、そして、ムリヤリ入れてあったので、千奈の上に落ちてきたのだ。

次の日、ボロボロの千奈を見て、少女はおどろいた。
「なんだ!?お前どうした!?ボロボロだぞ!?」
「あんたのせいよ。」おこる力はもうないが、心の中はムカムカしていた千奈。
「?」少女は?マークを頭にかかえた。
「…とにかく休め。あさってからは、ふつうの授業だ。悪かったな。」
少女はあやまると家を出た。

―一ヶ月後――
今日は卒業式。
千奈は写真を撮ったりし、思い出をたくさん残した。
でも、今日、校長先生から、名前をよばれてもらった卒業しょう書を見たら、なみだが出そうになった。
夕方、友達に別れを告げ、家に帰ってきた千奈。
(今日は、桜来るかなぁ…。一言ぐらいお礼を言いたい。)
一日中待ったが少女は来なかった。

―あれから三週間がたった――
猫月千奈は桜中の1-5になった。
学年は上がったが性格はかわらない、いつもどおりの千奈。
(桜に会ったのは今日みたいなあたたかい春だったな――)
と思いながら、まだまだずっと咲き続けてそうな桜を見た。
「——んっ?」千奈はうれしかった。
桜の下にだれかがいる――。桜がいる―!
すると、桜も気付いた様でニッ笑いかける。
二階だったから、笑ってくれてるのがなんとなくわかった。

千奈は―、自分が名前をつけた桜という少女を―、
チャイムが鳴り終わるまで――、
ずっと、ずっと、桜の下の『桜』を見てた―。

終わり

番外編🌸うれしいのか?のマキ

―夜―—
猫月家では、明るい食卓を向かえていた。
そこに、「ピーンポーン」
っとよびりんが鳴る。
千奈がドアを開けると『桜』が立っていた!
「どうしたの!こんな時間に!」
さすがにおどろく。
「何——ってあいさつ。」
「??」
わけのわからない千奈。
「あっごくろうさま、部屋用意してあるわよ。」
母がはしってやってきた。
「あぁ、千奈。また、やってもらうことにしたわ。家庭教師。中学校からはレベルが高いから、もっと教えてもらいなさい。
今日からいっしょに住むのよ。そうした方が、たくさん教えてもらえるでしょ。」ニッコリ母は笑って言う。
千奈はとっても、とっても、うれしかったが…。

―次の日――
「ギャー」千奈のひめいがきこえる。
特訓がヒートアップしていた。
「さ、行くぞ、千奈。」はじめて少女が名前をよんでくれた。(やっとね。)
が、千奈はキズがいたみ、素直に喜べなかった。

終わり


Thank you for reading!

【23.4.5追記】お礼のイラストを追加しました。
最後までお読みいただきありがとうございました!

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