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映画『パターソン』を見て、私が感じた‘人生の意味’

この映画では、特別何かが起きる訳ではない。
アメリカの小さな都市パターソンに住むパターソンさんという、バスの運転手をしている平凡な男の物語だ。

彼は愛する彼女と一匹のフレンチブルドックと一緒に住み、日々を淡々と過ごしている。その様を一週間というスパンで切り取った映画である。
ただ、この男には他の人々とは異なる一つのライフワークがある。

彼は日々の出来事や感じたことから詩を書き綴り、それを誰に見せるでもなく、毎日毎日、仕事前の少しの時間にも、仕事の休憩中にも、仕事が終わったの時間でも、休日にも、それをひたすら続けているのである。

彼はなぜ詩を書くのか。
詩を愛しているからである。
そして、何の変哲もない毎日を、そんな人生を愛しているからである。

詩を書くという作業には、どんな視点が必要なのだろうか。
何の代わり映えのない毎日の中から、自分が愛おしく感じられるモノをまず観察する。その中で浮かび上がってくる事実を、自分なりの表現で言葉として残す。
また、毎日同じように見える景色や出来事にも、なにかしらの変化というものが必ずある。その小さな変化を見逃すことなく、その中に隠されている意味を読み取り、それを言葉として形にする。

つまり、詩を書くこととは、一見すると退屈そうで単調な人生の出来事を、何一つ取りこぼすことなく丁寧に受け止め、それらが実は奇跡に満ち溢れている人生の出来事であることを再発見し、それらを愛し抱きしめながら生きていく作業なのである。

これは、現代人の多くが忘れてしまっている、しかし生きる上では何よりも尊い姿勢なのではないだろうか。
手の中に納まる小さな画面に釘付けになり、近くを飛ぶ蝶々の美しさやを見落としたり、インターネットの中で行われる自己承認欲求行動や匿名による誹謗中傷に心を左右され、最も大切にしなければいけない身近な人への優しさを忘れてしまってはいないだろうか。

生きる上で本当に大切な事は、あなたのすぐそばにいつもある。
そんなことを、言葉ではなく、一人の男の生きる姿を通して、さりげなく、しかし強烈な印象を伴って、この映画は教えてくれている。

スマホを見るのに疲れた人は、ぜひともこの映画を観てみて欲しい。
きっとあなたの日常はより色鮮やかになるはずである。


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