【1日1文献】親子に対して道具を活用することで意味のある作業を実現した在宅作業療法#親子#在宅作業療法#意味のある作業

参考文献:親子に対して道具を活用することで意味のある作業を実現した在宅作業療法
筆者:西村 彬, 斎藤 文彦
発行日:2021年
掲載元:作業療法 40 巻 (2021) 5 号
検索方法:インターネット
キーワード:意味のある作業, 道具, 患者・家族関係

【抄録】
・母子にとって道具を作成・活用することで意味のある作業が実現できた在宅作業療法の詳細を述べることを目的とする.
・症例は18トリソミー症候群の乳児である.身体所見では,手指の筋緊張亢進による手指間の圧痕や,寝返り動作が困難なため除圧できずに左臀部の発汗が確認された.症例の全身状態は変化しやすく,母親はかかわりに悩んでいた.
・そこで,母親とハンドクッションやマットなどの道具を作成して,それらの道具を活用することで抱っこや徒手療法を行い母子間のかかわりを促した.
・結果,症例の圧痕や発汗は確認されなくなり,母親は症例を安心して抱けた.
・道具を作成・活用する意味のある作業の実現により,母子のアタッチメントを促進した

メモ
・アタッチメントは,護られることへの信頼が基本で あり,そのことを実感しながら子どもは成長していく6) とされている.
・しかし,子どもに障がいがある場合には,かかわり方はより慎重にならざるを得ず,アタッ チメントの形成に必要である情動共有経験に困難を生 じることが予想される.
・事実,発達障害児が示すさま ざまな情動は,定型発達児とずれ,同じ情動を感じに くく,周囲には理解しづらい7) ことが指摘されている.

・子ど もは母親とのコミュニケーションにより愛情を感じる ことから,アタッチメントには母親的役割の存在が重 要になると思われる.
・出産後の女性の役割に関して,完成された母親とい うものは存在せず,常に発達し,変化し続ける9)とさ れている.
・そのため,母親が子どもにとってどのような役割を担うかは流動的なものであり,この流動性は 母親が置かれている状況,子どもとの関係性,母子を とりまく環境により変化し続けると考えることができる

・母子の間に存在した道具という視点に立てば,母親と作成した道具だけではなく,作業療法士もまた道具 的役割であったのかもしれない.
・本報告では一貫して,作業療法の対象を子どもと母親にした.そのため,親子のかかわりを重視して, 作業療法士は間接的にかかわる役割を演じていた.

・岸本らは,広汎性 発達障害児の愛着形成のプロセスに関する研究におい て,子どもと母親との間で情動共有経験がなされてい き,愛着を形成していくプロセスを明らかにしている.
・この情動共有経験に必要なものが,本報告における道 具を活用した意味のある作業であったと考える.
・しかし,作業療法場面において母親とのかかわりを重視するということは,母親の負担感を増強させてしまうこ とを危惧しておく必要がある.
・とくに,18 トリソミー 症候群の 1 年生存率は 5. 57~8. 4%,生存期間の中央 値は 10. 0~14. 5 日17) とされており,そのような事実 はいっそう母親の負担感を増強させかねない.
・そのため,母親の心理的安定に関与する道具を作成すること も,発達障害領域の作業療法にとって重要な取り組み になると考える

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/40/5/40_641/_pdf/-char/ja


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