【1日1文献】急性期入院高齢患者における廃用症候群予防実践の職種間比較および作業療法士の役割に関する調査#廃用症候群予防#急性期#多職種連携

参考文献:急性期入院高齢患者における廃用症候群予防実践の職種間比較および作業療法士の役割に関する調査
筆者:安藤 祐弥山根 伸吾花岡 秀明
発行日:2019年
掲載元:作業療法 38 巻 (2019) 2 号
検索方法:インターネット
キーワード:急性期高齢者多職種チーム役割

【抄録】
・本研究は,急性期入院高齢患者におけるチームでの廃用症候群予防について,各職種の実践状況および作業療法士(以下,OT)の役割を明らかにすることを目的とした調査研究である.
・OT・理学療法士(以下,PT)・看護師を対象に,廃用症候群予防の実践度およびOTの役割の認識について回答を求め,比較検討した.
・その結果,各職種の主たる職域は,OTは生活機能への介入,PTは身体機能への介入,看護師は病棟でのケアとなった.
・また,OTの役割の認識には,職種間で部分的な相違があることが明らかとなった.
・OTがチームで効果的に作用するために,主観的・客観的な役割の認識を理解し,OTの専門性を示す機会の拡充や表現の工夫の必要性が示唆された.

メモ
・HAD は入院することに よって起こる二次的な機能低下や脱調整状態を指し, Covinsky らはシステマティックレビューにて 70 歳 以上の入院高齢者のうち,少なくとも 30%が入院中 に HAD を呈していることを報告している5).
・HAD は, 低栄養状態やサルコペニア,抑うつ傾向,加齢による 認知機能低下などの潜在的な要因に,入院による環境 変化や活動量低下といった後天的な要因が加わることで発生する.
・そして HAD を呈し日常生活動作(Activities of Daily Living;以下,ADL)能力の低下を きたした場合,退院後 1 年を経過した時点で病前の ADL レベルに復帰できる割合は 50%以下であるとされ,HAD の発生予防には,病前の状況の把握と退院後の適切なフォローを含めた関わりが重要であると述 べられている5).

・こうした状況の中で,安静臥床期間を短縮し,活動 性を向上させ廃用性変化の発現を予防する廃用症候群予防の取り組みが早期に,かつ適切になされるか否かが,その後の Quality of Life(QOL)に大きく影響 すると言われており,その実践のためには,主治医と なる医師や作業療法士(以下,OT)をはじめ,理学 療法士(以下,PT)などのリハビリテーション職, 看護師,栄養士などの各専門職から構成されるチーム での連携・協働が必要不可欠であるとされている

・職種別の廃用症候群予防の具体的な実践内容について
・作業療法の領域では,ADL をはじめ とする身体活動だけでなく,認知機能や患者の習慣, 役割などの心理・社会面も考慮した関わり方が重要視され8,9),それに加えて生活に関わる環境因子を考慮したアプローチによって患者自身の主体性や自己効力 感を引き出し,活動性の維持・向上を図り環境変化へ の適応を促すことで,廃用症候群を予防している
・理学療法の領域では,早期からの運動管理や機能訓練 による身体機能および基本動作能力の維持に主眼が置かれ,それにより生活全般における活動性を維持して 廃用症候群を予防するとしている
・看護の領域では, 病棟における全身状態の管理,ADLの維持,生活リズムの調整などが特徴的な項目として挙げられている13).
・原島らは,脳卒中急性期患者の廃用症候群予防 ケアの実践について病棟看護師を対象に調査し,褥瘡や肺炎など,早期離床を阻害する合併症予防が多く実践されていたと報告している

・廃用症候群予防における OT の役割は,患者がどのような作業に価値や興味を持っているか,自身の能力をどのように捉えてい るかを評価し,理解したうえでアプローチに組み込み, 患者本人の動機づけを伴わせ,自己認識を改善させる ことで生活全般を活性化させることであるとされている

・OTの専門性について,下岡は「OT は自然科学と 社会科学の両方の視点を持ち合わせた特色ある職種で ある」と表現し,その特色がゆえに理解されづらい点 もあるが,逆にどの分野にも通じることができると述べている.
・つまりOTの専門性は,身体機能や活動能力に焦点を当てる PT の専門性と,実生活や環境への関わりを含む看護師の専門性の両方を内包しており, OT はそれらに対応する知識や方法論,技術を有して いると言える.

・下岡は OT の方法論を周囲に示すことでその専門性を明確にできると述べ,情報交換の機会を拡 充することの必要性を説いている26).
・加えて,野藤ら は各職種が共通して理解できる表現での記録や伝達内 容の工夫も必要であると述べている25).
・つまり,職種 間の相互理解を深め,OT がチームの中で効率的に作 用するために,日常の情報交換やカンファレンスといった直接的コミュニケーション,カルテの記録などの間接的コミュニケーションを含む,さまざまな場での専門性を伝えるための努力が必要であると考えられる.

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/38/2/38_140/_pdf/-char/ja 

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