【1日1文献】作業療法におけるQOL評価#QOL#作業療法#日常生活

参考文献:作業療法におけるQOL評価
筆者:鈴鴨 よしみ
発行日:2022年
掲載元:作業療法 41 巻 (2022) 2 号
検索方法:インターネット
キーワード:QOL, 健康関連QOL, 作業療法

【抄録】
・作業療法において,作業とは人の日常生活に関わる全ての諸活動と定義されており,作業療法は“生活の質”そのものを扱っているといえる.
・QOLは対象者自身が報告する身体的・心理的・社会的な生活の質であり,計量心理学的な特性(妥当性,信頼性,反応性など)を備えた尺度(調査票)によって,定量化することができる.
・多くの尺度が作成されており,それぞれに特徴があるので,自分の目的にあった尺度を選択することが必要である
・QOL評価は,患者の理解を深めたり介入の効果を評価したりするのに有用であり,作業療法分野において重要な指標となりうる.

メモ
・QOL のように形を持たない概念は,構成概念(Construct)と呼ばれる.
・構成概念は潜在的な概念なので 直接測定することはできないが,表面的に表れてくる 事象を測定することで,間接的に測定することができる.
・計量心理学(Psychometrics)という学問の発展によって,知能,学力,感情のような構成概 念を定量化して表すことが可能になった.
・QOL は, このようなモデルに基づいて作成された評価尺度を用 いて測定することができる.具体的には,対象者が直 接質問項目に回答しスコアリングする.

・「妥当性」とは,その尺度が本当に測定し たいものを測定しているかという性質であり
・「信頼性」 とは,測定値のばらつきが少ない状態,つまり,繰り 返し測定した結果が安定しているという性質である.
・「反応性」とは,時間的な変化(改善や悪化 など)を捉えているかという性質である.
・また,測定特性ではないが「解釈可能性」(定量的なスコアに一般的に理解されている意味を割り当てることができる程度)も尺度の重要な特性として挙げられている.

・QOL評価尺度は,科学的検証ツールとしてだけでなく,臨床でのマネジメントツールとしての活用も推 奨されている.
・国際 QOL 研究学会では,「臨床における患者報告アウトカム(PRO)評価のためのユーザー ガイド」を公開している(日本語版あり).
・このガイドでは,患者報告アウトカムを臨床の場で以下のよう に利用できることを述べている
1) スクリーニングツール
2) モニタリングツール(患者の経時的なアウトカム を追う)
3) 患者中心ケア(患者の問題について患者と臨床家 の話し合いを促進する,患者が自分のケアに参加する)
4) 意思決定支援ツール(治療オプションの患者報告 アウトカムへの影響を知る)
5) 多職種チームにおけるコミュニケーションの促進 (多様な背景を持つ臨床家に共通のデータソースを 提供する)
6) ケアの質の評価(ケアの短所・長所を特定したり, 患者のアウトカムを基準値と比較したりすること ができる)

・臨床現場で個々人の QOL スコアを評価する際に, 考慮しなければならないことがある.
・QOL 評価尺度 は誤差が大きく,集団の状態を評価するのには十分で あっても個別の評価にはその精度が十分ではない
・そのため,スコアを臨床の場で活用する際は数値を絶対視せずに,患者の健康関連 QOL やその変化の理解を 補助するツールとして使用することが望まれる

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/41/2/41_154/_pdf/-char/ja

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