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知らない人にでも話しかけるイギリス生活

最近はスーパーなんかは特にセルフチェックアウトで、会計時に店員さんと話すなんてこともあまりないのかもしれないが、イギリスでは店員さんと会計しながら世間話するなんてことは日常的にある。それがたまに長すぎて待っている側でいる時にイラつくこともあるが。

先日地下鉄でとびきりお洒落な黒人女性が私の次の駅から乗り込んできた。見た感じ40代後半の彼女は、薄いグレイのウールのロングコート、ダークカラーのデニムにピカピカに磨かれた黒のショートブーツ、黒のベレー帽に大きなレザーの薄い水色のバッグを持っていた。何度も見たくなるほどのエレガントさだった。私の斜め前に座った彼女が眼鏡を取り出して地下鉄でもらえる無料の新聞を読んでいる、老眼鏡が必要な年齢、50代半ばなのかもしれない、と私は手持ちの本を読みながら観察し想像をめぐらせた。
その日の私は習い事にシティと呼ばれるエリアまで行く日で、私の最寄りの駅から10駅くらい行かねばならず、私にしてはなかなかの長旅だ。セントラルロンドンに行く人たちは大体最寄りから数駅で降りて乗り換えするので、彼女もきっとそこで乗り換えだな、と勝手に思っていた。そんな彼女と途中で目があってお互いにニコッと微笑み合った。そしてやがて私が降りる駅になった時、なんと彼女も電車を降りた。

「あのね、あなたのスタイリッシュさに脱帽よ!ずっと眺めていたくなるくらいエレガントでとても美しいわ」と私から声をかけた。すると彼女は「私はあなたのその色使いがとても好きで、ずっと眺めて楽しんでいたのよ!見事よ!声をかけようか迷っていたのにありがとう!」と言ってくれた。

その日の私は紫とか赤とかピンクとか、ジャケットからエクササイズ用レギンスまで、全身そんな色だった。私とは真逆の色合いのとてもスタイリッシュでエレガントな出立ちの彼女が、私のことをそのように見てくれていたのかと、その後心が高鳴った。

福岡に住む私の実母は誰にでも話しかけるとても社交的な人だ。若い頃はそんな母に「知らん人にまで話しかけんどきーよ、恥ずかしいやん!」とよく言っていたものだが、今はそんな私が知らん人にまで恥ずかし気もなく話しかけ、人と触れ合うこと、知ることの喜びを噛みしめている。思えば九州は昔から世界へ繋がる玄関口と言っても過言ではない。母にも私にもそんな世界と繋がる、人と繋がることを楽しむ九州人気質がしっかりと染み付いているのだろう。
知らん人に話しかけんよ、と言う九州の方、ごめんなさい。



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