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肌荒れと煙草

人間であるなら、一つや二つのコンプレックスを抱えているであろう。それは容姿のことであったり、生い立ちのことであったり、人間関係など人によって様々である。例に漏れず私にもコンプレックスと呼ぶべきものがある。それは「肌が汚いこと」だ。中学生の頃は、自分史上で嫌いな自分ランキング上位にランクインしてくる反抗期という黒い内面とは対照的に、外見上は何の汚れも知らないような、純度100%の餅米のような肌をしていた。それが高校に入ると、反抗期が姿を消すと同時に、肌荒れという目に見える汚れが現れた。顔は常に脂ぎっていて、ローカルな中華料理屋さんの厨房の床のようにテカっていた。部位で言うと顎周りの荒れが酷く、ラグビー部でヘッドキャップを付けるのだが、マジックテープの部分が顎に当たり、グラウンドに体を叩きつけられる痛みとは違う、グロテスクな痛みが顎周りを刺激する日々であった。そんな状態は、高校を卒業しても治ることはなく、化粧品メーカーで働いている母親の友人に勧められた化粧品で洗顔等をしてみたが、効き目はない。そんな時母親があるクリームを購入してきた。インターネットで見つけた商品らしく、実際に使った人のコメントなどもプラスな意見が多い。値段はそこそこ高く、5〜6000円だったと記憶している。所謂「良い」化粧品だ。とは言ってもネットの情報を鵜呑みにするほど馬鹿じゃねぇぞと半信半疑の私。しかし効果は出た。ちゃんと出た。それまでの痛々しい赤みは、数日のうちに引き、肌の凹凸も徐々になくなっていった。説明によると、肌の状態は良くなったり、悪くなったりし、その循環の中で治癒していくらしい。つまり、この肌の落ち着きもそのうちなくなり、元に戻るが、それは普通のことだから安心しろということだ。なるほど。これは良いものを貰ったかもしれない。そんなふうに考え約1ヶ月ほど経ったとき、大学の学園祭があった。大学に入り、新しい環境にも慣れ、大学生がMA-1となで肩で風を切り始める10月に学園祭は開催される。人が大学生になると覚えるドラッグが2つある。酒と煙草だ。酒はほとんどの学生が男女問わずに嗜み、時には嗜みのレベルを遥かに超越して人生を棒に振る方々も出てくる。お酒を飲んで人格が変わるやつとはできれば距離を置いておきたい。あとサークルなど団体で飲みにいった時に、はしゃいでいた一女を酒の勢いに任せて説教という名目でボディをゼロ距離まで接触させる四男は見るに耐えない。話はずれたが、とにかくお酒は多くの人が楽しむ嗜好品だ。一方で煙草は今の時代にあっていない。世界的な禁煙ブームで、日本でも煙草を吸えるスペースはどんどん少なくなり、喫煙者にとって肩身の狭い世の中になってきている。女性の中には煙草を吸っているというだけで怪訝な顔をする人もいる。そういう人を見ると、喫煙者の男にトラウマでもあるのかと思ってしまう。このように減少傾向にあるような喫煙者は、大学に限って言えばそんなことはないのではないかと思う。大学生になると、飲み会で先輩から「一本だけ吸ってみる?」と誘われるというイベントが発生する。ここでしっかりと断るか、はたまた断りきれず吸ってしまうかというラベルで人間をカテゴライズすることも可能であろう。わたしは言うまでもなく後者だ。流されやすい。煙草に火をつけようとするが、いっこうにつく気配がない。「吸いながらじゃないとつかないよ。」と先輩。そうなのだ。煙草の火は、煙草を咥えた状態で空気を吸い込みながらでないとつかないのだ。これを知ったときはヘェ〜と関心した。この世で一番いらない知識。最低の知識。でもそれを知った時は、少し大人になった気がした。そんなこんなで時々煙草を吸うようになった。そのせいで治りかかっていた肌荒れが、また荒れ始めてしまった。煙草のパッケージに書いてあるように肺がんのリスクが高まるかどうかは知らないが、害があることは身をもって知る。皆様はここで辞めればいいとおもうだろう。私も思う。しかしやめられていない。これは煙草の依存性がどうこうの話ではない。私が煙草を吸っている理由。それは「格好いい」からだ。煙草を吸っている人の9割方の人がそうであろう。千鳥の大吾さんもそう言っていたから間違いはないだろう。恥を忍んで言うなら、煙草を吸っている俺格好いいである。自分のことを格好いいと感じられる煙草で、自己肯定感を上げながら、肌荒れという自己肯定感を下げるものを生み出している。人間は自分のことが嫌いだが好きだ。

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