道草小噺⑩八重桜
桜がほぼ満開。
春以外の時期は目立たずひっそりとただそこに在り続けていて、風景に溶け込んでいるのに、春になると、公園にも校庭にも、川沿いにも、山沿いにも、桜は本当にいたるところに生えているのだなということを改めて感じる。
桜の時期に合わせて、毎年、昔からお馴染みの桜餅だけでなく、桜の香りのするドリンクやケーキなどが登場していて、桜はリアルに旬を感じる食べ物な気がしている。
2019年の野草ディナーイベント「道草晩餐会」では最後の嫁菜ごはんのあしらいとして登場。急に可愛くなる。最強。
が、実際は桜の花や葉をそのまま摘んで使っているなんてことはほぼないだろう。
しかも、桜と言えば染井吉野が一般的ですが、桜の花の塩漬けはおそらく染井吉野では作られていない。
じゃぁ桜の花の塩漬けにつかわれている花は一体何なのか。
八重桜。しかも満開ではなく、6分咲きくらいの、まだ開ききっていないもの。
染井吉野の時期が終わってから、もしくは終わる頃から咲き始める八重桜は、花びらも多くてボリュームがあるので豪華仕上がり。しかも香りが強い。(詳しい事は分からないけれど、花びら多い桜発見だやったー!となって花を近づけてみたら全然香りがしなくてショック…となったことがあるので、どうやら花びら多い桜でも、香りがするものと香りがしないものと2種類ある、たぶん。)
摘んでいる時も、洗っている時も、うっとりポイントが多い。
もちろんできあがりもうっとりだし、使う時も、食べる時も、うっとり。
しかも、来年の桜の(主に染井吉野の)満開になる時期を思いながら仕込むのもなんだか好き。
(八重桜の頃(だいたい4月中旬以降)に桜の花の塩漬け出してもなんだかちょっとキマらないからね。)
2011年からほぼ毎年作っているのだけど、中身はマイナーチェンジしている。
基本的に桜の花の塩漬けは桜の花+塩(桜の花の20%)+酢でできている。
酢は、白梅酢。白梅酢というのは、簡単に言うと梅干しの副産物。
梅を塩漬けにすると、水分が上がってくる。それが、白梅酢。(赤紫蘇を足すと赤梅酢)
桜の花の塩漬けを初めて作った2011年は失敗に終わり、2012年はたまたま手に入れた飯尾醸造さんのリンゴ酢(奇跡の林檎の木村さんの林檎を使った酢だったもよう)で作り、やはりどうせ作るなら塩以外は自家製でできたらおもしろそうだな、と思って、白梅酢が欲しいがために梅干しを仕込んだのが2012年。
そして念願叶って2013年にはハントした桜の花と自家製の白梅酢をつかった桜の花の塩漬けを作ることに成功したのだ。
要は酢だったら何でもいけるので、米酢やリンゴ酢(アップルサイダーヴィネガー)、レモンなんかでもいける。
なので、桜の花の塩漬け作りたいけど、白梅酢がない!作れない!
てなっている方は、白梅酢にこだわらず、手元にある酢で作ってみることのがおすすめ。
(個人的にはやっぱり白梅酢が一番桜の香りを感じられて美味しい気はしているけどね。)
とにかく摘むところから全部楽しいのでぜひ。
ちなみに、桜の花の塩漬けはほぼ永遠に持つので、冷蔵庫にそれぞれの年のストックがたくさんあるのだけど、去年、密閉してなかったものがいい感じに乾燥しているのを発見してふりかけみたい遊んでみた。むっちゃかわいい。刻んだ桜の花の塩漬けの混ぜご飯をおむすびにして、上に桜の花の塩漬けをのせると、最高にかわいい春の味のおむすびができるのでそれもおすすめ。
<おまけ①>摘み頃
もともと花見をする習慣がほとんどない私にとって、桜が満開だとか散り始めだとかにアンテナを張る事はなく、ただ散歩していて”あぁもうすぐ満開だな。”とか、”今がきっと満開だなぁ〜”とか、”花吹雪きれい〜”くらいにしか思っていなかったのに、2011年に桜の花の塩漬けを作るようになってからは、染井吉野の時期が早いと八重桜も早いし、逆に遅いと八重桜も遅くなることがわかったため、染井吉野の桜の開花時期にはかなりアンテナを張るようになった。
去年(2019年)4月15日はこんな感じ(滋賀県)。
去年は珍しく入学式の頃までちゃんと桜が咲いていて、ここ最近の中ではちょっと遅かった。
一昨年は4月18日に慌てて摘みに行ったらほぼほぼ満開で蕾が全然見つからずでかなり苦労したので、この差は大きく、今年は今の時点(4月1日)ですでに満開なので、おそらく八重桜も早いと見ていて、10日頃からしばらくは仕込みのためにアンテナを張りつつスケジュールの調整をはかることになるのだ。あーいそがしいいそがしい!(と言いつつ半分くらいはうきうきしている春の保存食仕込み。)
<おまけ②>
桜の花の記事を書く時がきたらこの曲…となぜか去年からずっと楽しみにしていたやつ。一度聞くと頭から離れないよね。
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