ウクライナの小麦輸出とオデッサの空爆について

ロシアの主張

1,合意は2本立て。ウクライナからの輸出とロシアからの輸出のセットの二本立て。そのロシアからの輸出に関して蔑ろにされている。
2、ウクライナからの輸出は最貧国向け主という前提だったが、実際はEUの富裕国に向かっている。

ウクライナの反論


1 触れず
2 EUから再輸出されている
データ、報道から把握できる事実
1 確かにロシアからの輸出に関しては、アメリカの反対で進んでいない。大きいのは、ロシアの一部の銀行をSwiftに戻すかどうか。輸出代金の決済のためには、確かに必要だが、仮に農業系の一銀行をswiftに戻すと農業以外の決済にも使われる可能性がある。
2 確かにウクライナからの輸出は、一部がソマリア向けに使われた以外は西ヨーロッパに向かっている。国内インフレ率を下げるために、安いウクライナ産の小麦を掻っ攫っている状況。
3 ウクライナからの陸路輸出(戦争が始まった時に色々と模索された)は、ウクライナ周辺のEU国の反対で通過することすら出来ていない。最も反対しているのは、最もウクライナに肩入れしているはずのポーランド。ウクライナ産の方が安いから、自国農業への影響を恐れている。本来は、EUにおいて輸出入規制に関わる貿易政策を、一国単位で決めれないが、EUはポーランドなどを制御できていない。
4 ウクライナ産の小麦の最大の輸出先はトルコとエジプトであり、トルコからはパスタなどに再加工されてトルコから輸出をされていた。今はその分をロシア産が埋めている。ただ、ロシア産は以前からトルコとエジプト輸出されていたため、シェアを上げた、という見方が正しい。
5 小麦の世界価格は、戦争が起きて跳ね上がったが、少し落ち着いていた。今回のオデッサ空爆で、少し上がったが、それでも1-2ヶ月前の水準に戻っただけ。
6 小麦の需給は、逼迫していない。従って、価格の大きな変動は、もう考えにくい。さらにエジプトは自国内の作付面積の拡大に動いている。
輸出に占めるシェアは、戦争前でロシア20%、ウクライナ10%であり、ロシアはさらに余力があったため、小麦不足は考えにくい。


わからなかった事


1 何故、オデッサに多くの穀物が残っていたのか。ロシアによる輸出妨害が、今回の合意破棄以前にあったのかどうか。
2 最貧国への小麦提供は誰が担っているのか。ソマリアや一部アフリカ向けは、輸入代金の支払いに苦労するはず。何らかのプログラムがあるはずだが、それがわからない。小麦がウクライナ産であるかどうかは、問わないはず(つまり、需給が逼迫していなくて、小麦価格が一定の幅の中ならば、継続して提供できているはず)。
3 小麦は需給が逼迫していないが、トウモロコシは逼迫している。トウモロコシの用途は畜産用の飼料と、農業用の肥料である。ウクライナ産のトウモロコシは、それなりの規模(世界シェア20%に迫っていた、ロシアは2%)があり、インパクトがある。中国が最大の輸入国だが、ロシアが以前から担っている。
なお、アメリカが最大の輸出国であり、トウモロコシ相場の高騰でアメリカの農家は潤っている。


上記から見えてくること


1 ロシアは追い込まれて、穀物合意の破棄を言い出した、と言われているが、そうは見えない。
2 食料価格高騰が起きて、世界のインフレが引き起こされる、あるいは最貧国で食糧危機が、起きるようには見えない。
3 相変わらずEUの機能不全(全会一致原則や各種前例が足をひっぱり、身動きがとれず、一国主義の制御も出来ない)が目につく。アメリカのご都合主義(小麦を言い立て、トウモロコシは言わない)が目につく。
それ以外で、目についたこと
1、今回のオデッサ空爆で、ロシアからのミサイルドローン迎撃成功率が、大きく落ち込んでいる。もしかしたら、迎撃弾の枯渇が近づいているのかもしれない。HIMARSなど、アメリカも弾薬備蓄が無い。
2、ウクライナの南部戦線は、完全に膠着しており、バフムートのみで、ウクライナは前進しようとしている。しかし、telegramに出てくる写真、コメントなどを見ていると、ウクライナ軍はロシア軍が作った狩り場に誘い込まれて兵を減らしているだけかもしれない。確かにウクライナは、国家総動員体制下にあり、強制徴兵をしているから(逃げる国民を殴打して、徴兵している動画が幾つも出回っています)、ウクライナ軍の方が兵数は多く、弾薬より人の命の方が、ウクライナ軍内では安いのかもしれないが。


私の意見


ロシアが、穀物に限らず何らかの合意期限が近づけば揺さぶりをかけていることは、予想できただろうに、欧米の外交官たちは何をやっていたのか。
オデッサへの民間インフラへの攻撃含め、ロシアは酷いが、欧米のレベルも低い。
また、安いウクライナ産の小麦飛びついた西ヨーロッパ主要国、トウモロコシの価格高騰は享受するアメリカ、ウクライナ支援を使い分けるポルトガルなど、全く一枚岩ではない。
ロシアは、負けないし、占領地域を大きく減らす事もない。アメリカはともかく、EUの世界に占める地位は、大きく下がってしまったし、これからも下がり続ける。
戦争をやって、勝者なんて誰もいない、と強く感じます。どうして、アメリカは、戦争を起こすところまでウクライナをたきつけ、ロシアを追い込んだのか。


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