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VisaをDCF法でざっくりバリュエーション(2018年9月期2Qまで)

今回はクレジット決済関連のVisaをDCF法でバリュエーションします。

●会社概要

Visaはデビットカード・プリペイドカード・クレジットカード・スマホ決済(Apple Pay等)と決済業界でビジネスをしていますが、業界セグメントとしてはソフトウェア業界に属していると言っても良いかもしれません。というのも、Visa自体がカードを発行してビジネスを行っているわけではなく、カード利用者・マーチャント(加盟店)・アクワイアラー(加盟店契約会社)・イシュア(カード発行会社)がスムーズにカード決済を処理するためのソフトウェアプラットフォームを提供している会社だからです。

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Visaは、この仕組み上でアクワイアラーとイシュア間の取引と精算を仲介することで手数料を得ています。

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VisaのOperating Revenues(営業収益・売上高)は、Service Revenues・Data processing revenues・International transaction revenues・Other revenues・Client incentivesで構成されています。Client incentivesは費用です。3つの売上合計をGross Revenueとし、そこからClient incentivesを差し引いたものをNet operating revenuesとして、正式な売上高としているようです。

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2018年9月期2Qの売上ですが、どの売上セグメントも伸びています。カード決済が世界で日々増えているのでしょう。

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上記の図はアニュアルレポートに載っている競合との比較図です。Visaは競合と比較しても飛び抜けて決済金額が大きいです。2番手であるマスターカードの2倍近くのボリュームというのは驚きですね。

このように、決済プラットフォームでは圧倒的に世界トップの企業です。ただし、今までの決済ルールと違った手法で中国アリババ系のアント・フィナンシャルという新たなプラットフォーマーも現れてきており、今後も絶対的な立場を維持できるかどうかはわかりません。

●DCF法を行う準備

2013年9月期〜2017年9月期の5年間分のBS・PL・CFの数値から、過去の業績を分析していきます。
過去の業績やBS・PL・CFからWACC(加重平均資本コスト)の算出・将来のフリーキャッシュフローの予測を行い、将来のフリーキャッシュフローをWACCで現在価値に割り引いて企業価値を算出していきます。

●投下資本

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短期有利子負債:Current maturities of long-term debt
長期有利子負債:Long-term debt
運転資金:Accounts receivable, net − Accounts payable

固定資産は、「Intangible assets, net」の278億4,800万ドルと「Goodwill」の151億1,000万ドルの2つで大半を占めています。ソフトウェア開発がビジネスの根幹にあるのと、買収で発生したのれんが大きいようです。

●資本コスト

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株式の時価総額は、2018/6/8の株価から算出しています。

株式コストについて、
・リスクフリーレートは、10年物の米国債の利回りが3%を挟んで上下しているので3%に設定します。
・マーケットリスクプレミアムは、6.0%を使用しています。最後にこれをいじっていくつかのパターンの株主価値を算出します。
・ベータはyahoo financeから参照して1.03としました。
・上記からCAPMの公式より、株主資本コストを9.18%とします。

CAPM : 株主資本コスト=リスクフリーレート(3%) + β(1.88)×リスクプレミアム(6.0%)=9.18%

・有利子負債コストは、開示情報から参照して4.37%としました。
・税率は、トランプ政権で決定された21%とします。

そして、2017年9月期の有利子負債と現在の株式の時価総額を加重平均し、WACC(加重平均資本コスト)を求めます。

rE = 株式コスト
rD = 負債コスト
D = 有利子負債の合計
E = 株主資本の額 = 時価総額 
T = 実効税率
WACC : [rE × E/(D+E) ] + [rD×(1-T) × D/(D+E)]

9.18% × 273,123百万ドル ÷ (18,367百万ドル + 273,123百万ドル) + 4.37% × (1-21.0%) ×18,367百万ドル÷ (18,367百万ドル + 273,123百万ドル) = 8.82%

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ご購入いただくと、以下の内容をご覧いただけます。

・利益とフリーキャッシュフロー・・・過去の業績からNOPLAT、ROIC、ROIC - WACCスプレッドを算出します。
・DCF法によるバリュエーション・・・将来のフリーキャッシュフローから現在価値を割引だし、一株あたりの株主価値を算出します。
・結論・・・過去の業績の分析・DCF法によるバリュエーションから導き出した結論です。

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