見出し画像

『スコラ』の向こう側

『定額制夫の「こづかい万歳」』に登場する(今年になって何回『~「こづかい万歳」』の話をしとるんだ私は)ステーション・バー村田さんによると、『プレイボーイ』には「世の中すべての情報が詰まっている」そうです。

もはや日本でステーション・バー村田さんを知らない人はいないという前提で書いているので、彼の詳しいプロフィールに関しては割愛しますが、村田さんの至言といえば「生の映画を見ているようなモンだよ」。

駅の片隅で酒を呑みながらこれを言っている絵面が強すぎるせいで霞んでしまっていますが、その後に紹介される、昼には必ずきしめんを食べながら雑誌『プレイボーイ』を読むというエピソードもなかなかに強い。

なぜ『プレイボーイ』を読むのかというと、「世の中すべての情報が詰まっている」から、なのだそうだ。これがまた金言である。満50歳の村田さんが、いかに今でもイノセンスを失わずに保ち続けているかが如実に現れている。

自分は『プレイボーイ』については、ネットカフェで何度か読んだことはあるので、どのような雑誌であるかは知っているものの、とっくに成人してから読んだせいか、「世の中すべての情報が詰まっている」とまでは思えませんでした。

確かに表紙や袋綴じはまあそういう感じではあるものの、政治や経済についての考察や対談のページがわりと多く、グラビア以外は意外と社会派な雑誌であり、グラビアも全部は見せてくれない。

全部を見せてくれるというのはどういうことなのかというと、まあそういうことです。アメリカで発売されているほうは全部を見せてくれるらしいですが、日本では全部を見せたらアダルト認可をもらわないといけませんからね(※アメリカでもたぶんそうです)。

とはいえ、『プレイボーイ』が全年齢対象であることを知ったのは大人になってからです。全年齢対象ということは、6歳児が『小学一年生入学準備号』と一瞬に買ったとしても法に触れません。

ところで、かつて『スコラ』という雑誌が世に存在しました。

1982年に創刊され、若い男性をターゲットにした雑誌として『プレイボーイ』と双璧を成す人気を博していたといいます。

いいます、と他人事なのはなぜかというと、その時代の『スコラ』を読んだことがないからです。ただ、『スコラ』が若い男性をターゲットにした雑誌であり、なんかムフフな内容が載っているであろうことは、『小学一年生入学準備号』の対象年齢だったくらいの時期から知っていました。

その頃の『小学一年生入学準備号』は、今みたいなハイクオリティな付録はなかった……。という中年トークは置いておいて、当時はまだ『クレヨンしんちゃん』の幼稚園児とたいして歳が離れておらず、パパとママが夜の営みをする時は夕食中に謎のサインを送り合うとか、何やら柔らかくてガムっぽいものを使うらしいとかいうことはしんちゃんを通して知ったのですが(※もっと具体的に知るのはもちろんだいぶ後からだったけど)、『スコラ』もまた、しんちゃんを通して知りました。

近所の書店に行くたびにしんちゃんが立ち読みしているのが『スコラ』で、みさえさんがそれを発見するとすぐさま「子供は見ちゃいけません」と言って取り上げるのが定番だったので、子供は見ちゃいけないということは、つまり……。

というわけで興味を持ち、ならば子供じゃなくなった頃に読んでみようと思うも、その後はミニ四駆とポケモンで忙しい日々が続いたためにすっかり忘れてしまい、中学生の頃は歩道橋の下などで風○情報誌を拾う、ニッセンのカタログを使う(何に使うのかというと……、まあ、「ナニ」にだ)などの独自開発に夢中で、約10年の時を越えて本物の『スコラ』に出会ったのは高2の頃。

ああ、これこそが、しんちゃんが興奮しながら読んでいたあの『スコラ』か……。と、手に取ってページをめくってみるも、どうにも高まらない。なんかこう。思てたんと違う。

いやもちろん、誌面がつまらないというわけではありません。むしろ、こちらに原因があるのです。

それはそれはセクシーでダイナマイトの水着姿の麗しき方々が悩殺してくれるのですが、残念ながら、○俗情報誌とかニッセンのカタログとか、『BOMB』の付録の擦るとおっぱいが浮き出て見えるページ(最高に頭が悪くて好きだった)とかを履修してしまった後なので、セクシーでダイナマイトな水着姿の向こう側まで求めるようになってしまった。

後で知ったことですが、当時(2000年代初頭)の『スコラ』は経営している母体が替わっており、かつてのような過激な内容ではなく、ごくふつうのグラビア雑誌に変遷していたそうです。そりゃあ刺激が足りないわけだ。

高校生にしてすでにそうなっていた自分を省みると、『プレイボーイ』をすでに何千回も手に取っていて、どんな誌面なのかも熟知しているはずなのに、今もなお「世の中すべてが詰まっている」と言いきり、ずっと変わらない気持ちでいられるステーション・バー村田さん(50)には頭が上がらないと同時に、よくごはんを食べながらアレを読めるなあと、別のベクトルでの敬意も覚えるのでした。

サウナはたのしい。