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『ウイニング嵐』をまた読みたい

未完に終わってしまった漫画作品というのはいくつも存在しますが、その中でも自分が続きを読んでみたいと思っているものが2つあります。

ひとつはとても有名な作品で、藤子・F・不二雄先生の代表作である『エスパー魔美』です。

自分もわりと最近になって知ったことですが、『エスパー魔美』の原作は実は未完なのです(いちおう最終回っぽい話はありますが、回収していない伏線を多く残したままの状態で終わっています)。

掲載雑誌が変わったり、途中で長いお休みがあったりと、ゆったりと続いていたそうなのですが、1996年にF先生が逝去されたため、永遠に続きを見ることができなくなりました。

なので、魔美ちゃんと高畑くんの友達以上恋人未満のパートナーという関係も、あれより先は進展しないまま。その後のラブコメ展開が見たかったものです。


もうひとつあるのですが、これは自分と同世代で、なおかつ1997~1998年にリアルタイムで小学生で、さらに小学館の学年誌を購読していた人でないと、まず知らないでしょう。

『ウイニング嵐(ラン)』という作品です。えー、ミニ四駆を題材にした漫画です。

田宮模型から発売されたミニ四駆は、何度か大ブームを巻き起こしているのですが、2回めの全盛期だった当時、タイヤの周りをカウルで覆ったデザインのフルカウルミニ四駆が売れまくっていました。

車の両側面を囲う部分をカウルと呼ぶのはミニ四駆で覚えたし、FRとFFの違いとか、ホイールベースとか、ダウンフォースとかもミニ四駆で覚えました。すべて、本物の車でも用いられている単語です。

さらにFRPで作ったパーツがあったり、子供にドリルを触らせたり、いま考えても本格的すぎる。四駆郎や豪の言うことは正しかった。ミニ四駆はおもちゃじゃねえ。

かつてミニ四駆チルドレンであり、『ダッシュ!四駆郎』や『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』を読んでエンペラーやマグナムを買って、近所の路上で走らせては溝に落として泣いた、そんな淡い思い出をお持ちの方はたくさんいらっしゃると思います。

が、『ウイニング嵐』を読んでサンダーブーメランW10を買った人は、あんまりいないのではないでしょうか。

同年代で、かつてミニ四駆で遊んでいたという人に話してみても、『ウイニング嵐』が通じたことは一度もありません。

単行本化されておらず、手元にないのでちゃんと確認できないため、記憶だけを頼りに書きますが、あらすじはこんな感じ。

ミニ四駆の世界を支配しようとするクリーチャー(エヴァンゲリオンの使徒みたいなやつ)に主人公の兄貴がさらわれ、主人公とヒロインが兄貴を救う旅に出るも(その渦中でミニ四駆バトルが行われる)、ヒロインもさらわれてしまう……。

ここで連載が中断されてしまいました。

最後のページはヒロインが磔にされて終わるという実に衝撃的なもので、彼女は今も囚われたまま。

兄貴がどこに幽閉されているのかもよくわからないまま終わってしまい、後味が悪いまま、自分の思い出の作品として20年以上が経った今も脳内に仕舞われています。

絵柄がちょっと大人っぽくて、ヒロインがやたら可愛かったのですが、調べたら作者の鈴木雅洋さんはもともと成年コミックで有名だった方なのだそうで……。

2013年に逝去されているらしく、『エスパー魔美』と同様に、続きを読むことは不可能。


その『ウイニング嵐』の主人公が操るマシンが、サンダーブーメランW10です。

これは当時の流行だったフルカウルミニ四駆ではなく、スーパーミニ四駆というシリーズでして。スーパーミニ四駆というのは、ばっさりいえば、タイヤがでかくてデザインがなんかF1っぽいミニ四駆です(本当にばっさりだな)。

流線形でかっこいいのですが、時代はカウルで覆われていたので、カウルのないスーパーミニ四駆の人気ははっきりいって下火で、ジャスコのおもちゃ売り場(ジャスコだと常時2割引で買えたのです)でも、隅っこに追いやられていました。

近畿圏内でのスーパーミニ四駆ユーザーはきっと自分だけであると(んなわけない)誇りに思いながら、さっそく480円で買った(定価600円の2割引)サンダーブーメランW10を数分で組み立てて外に繰り出し、路上で走らせることに。

近くの建設会社の玄関口の前には、そこそこ長くて急な坂道がありました。

たぶん建設会社の私有地で、本当は入っちゃいけないところだったのですが、特に施錠などもされておらず、平気で勝手に入って、そこでミニ四駆を走らせるのが恒例でした。

レース用のコースを置いてあるような模型店は近所になかったし、市販のコースは1万円以上の高価な商品だったので手が届きませんでした。

家の床で走らせると100%を超える確率で親に怒られるので、路上しかなかったのです。


さて、走らせてみた、率直な感想。

スーパーミニ四駆、速い。確実にフルカウルミニ四駆より速い。

タイヤがでかい分だけリーチがあるし、カウルが取っ払われているために空気抵抗が少ないので当たり前ですが、アホな自分は全くよくわかっていませんでした。

あと、スーパーミニ四駆は坂道を登れる。タイヤがでかいから登れる(4歳児くらいの語彙力)。

……というか、本来はそれがミニ四駆の遊び方だったらしいんですけどね。四輪駆動でパワーがあるから坂道も登れるぜ、っていう。

それを教えてくれたのがサンダーブーメランW10でしたが、もう手元にありません。


とある漫画家さんがブログで書かれていたのですが、コロコロコミックや学年誌の掲載作品は玩具メーカーやゲーム会社とのタイアップが多く、権利関係がややこしいため、電子書籍での出版が難しいのだそうです。

なので『ウイニング嵐』の単行本化の望みは薄そうではあるのですが、どこかでまた読めないかなあと密かに願っています。ヒロインがやたら可愛いし。

サウナはたのしい。