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最終回直前!最も少年漫画らしくない少年漫画『チェンソーマン』の醍醐味

 おはようございます。ぷかおです。明日発売の少年週刊ジャンプで最終回を迎える大人気漫画『チェンソーマン』。アニメ化ヒット間違いなしといわれる作品ですが、アニメ化の前に幕を閉じることとなりました。人気真っ盛りの中、潔い終焉です。その人気の根底には従来の少年漫画の世界観にはなかった新しさがあります。その少年漫画らしくない異質さとは一体何なのか、本日は検討してみようと思います。



チェンソーマンとは

 漫画家の藤本タツキによって2019年から『週刊少年ジャンプ』に連載された漫画です。藤本タツキは、高校生時代から少年漫画家志望で、集英社に読み切りを熱烈に応募しました。その結果、2016年に『ファイアパンチ』が少年ジャンプ+に連載が決定。チェンソーマンは、彼にとってジャンプ本誌の初連載作品です。2020年12月現在、累計500万部売り上げを突破。その画風と物語の面白さから、すでに熱狂的なファンがたくさんいます。

 私がチェンソーマンを知ったのはつい最近のことです。友達に必死に薦められて読み始めたところ、すぐに沼にはまりました。まだ全巻読み終えたわけではないのですが、私の印象としては『進撃の巨人』同様に人気が爆発しそうな予感がしました。アニメ化後に世界的に有名になる未来がありありと見えたのです。ただ、最初は「ヤングジャンプ」掲載作品だと思っていたので、少年ジャンプ連載中と知って衝撃を受けました。小学生もこれ読んでんのかよ....。なぜなら、あまりにも従来の少年漫画のセオリーをぶっ壊しているように思われたからです。なぜそう思ったのか、これから紹介していきます。

 ネタバレは一切しないので、安心してご覧ください。


漫画っぽくないイラストビジュアル

 漫画の画風は、それぞれの漫画家に大きく依存します。皆さんは「少年漫画」といわれたら、どのようなイメージを思い浮かべますか?荒木飛呂彦?まれな人ですね。石田スイ?それは青年誌でしょう。一般的には手塚治虫、藤子不二雄、鳥山明、尾田栄一郎、冨樫義博あたりだと思います。一方で、チェンソーマンの画風は、それらとは全く異なります。漫画であるにもかかわらず、イラストレーターの画集のような風景が続きます。少年漫画の絵としてはかなり新鮮なタッチで描かれるビジュアルです。そのイラストテイストを醸し出している理由は、線の均一性にあると私は考えています。

 従来の漫画では遠くにあるものを細いペンで、近くにあるものを太いペンで書くということは常識になっていました。パターンに合わせて、様々な太さのペンを使い分けて書く、漫画家に求められる基本所作でした。しかし、チェンソーマンを読む限りでは、基本同じ細さのペンで均一して書かれているのが分かります。太く書く場合は、数回重ねて書かれています。私はその書き方自体が、漫画ではなくイラスト向きだと感じたのです。しかし、それがさらにその世界観を見事に表現しているので、むしろ良いと思っています。藤本タツキは、新たな風を吹き起こしました。

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主人公像からかけはなれた存在、デンジ

 少年漫画の主人公には夢がつきものですよね!敵を討つ、妹を救う、宿敵を倒す、復讐する、ライバルに勝つ、気になるあの子に好いてほしいなどなど。ですが、チェンソーマンの主人公デンジは、まさかの夢がない(あるいは夢がしょぼい)のが特徴的です。そのせいで、主人公への親近感というものが湧きにくい。と思いきや、きちんと主人公やってます。読めばわかりますが、夢が段階的に生まれるのがとてもリアルなんですよ。彼は、当初三大欲求を充足させることすらままならない生活をしていたので、そもそも「夢」という大きな欲求が生まれにくかったというキャラ設定も、非常に利アルです。いわば、少年漫画の主人公像にアンチテーゼを送りつけた存在となりました。友情・努力・勝利なんて今や空気です。

 

子どもウケを捨ててでも貫く我流スタイル

 チェンソーマンでは、血の描写なんて日常です。内臓破裂、人体切断も何でもあり。しまいには、リアルなゲロも描いてしまう。皆さんの想像よりゲロです。スタイルは完全に青年誌なんですが、なぜか少年ジャンプ。小学生などの子どもウケなんて完全無視ですよ。子どもにこびてオリジナリティーを捨てることなんて絶対にしない、その尖り方が完全にイってます(誉め言葉です)。冗談ですが、アニメ化されてもPG12になってしまうおそれがあります。ただ、とにかく世界観が徹底されています。その完成度の高さが、ますますファンの呼び寄せている一因です。それゆえに、なぜ集英社はこれを本誌掲載にしたのかいまだに疑問が量産されているのですが。

 

まとめ

 以上より、チェンソーマンがどれだけ異質な作品であるかご理解いただけたでしょうか。独特の画風、従来を覆す主人公、世界観の徹底、これらのいずれも少年漫画らしくないポイントになります。その新感覚にのめり込むように、読者は沼コミュニティを拡大しています。チェンソーマンが少年漫画として人気を得ることができたのは、その異質さの中に見いだされる完成度と斬新さではないでしょうか。

 実は、今後の少年ジャンプが心配です。2020年『約束のネバーランド』『鬼滅の刃』『チェンソーマン』と矢継ぎ早に人気作品が連載終了となりました。集英社は『鬼滅の刃』単行本の売り上げでがっぽり私腹を肥やしていますが、一方で漫画の電子化が進み、なおかつ本誌の人気作が消えていくという大変な局面に瀕しています。来年、これらの人気を踏襲する漫画作品が現れてくるのでしょうか。

 そういえば、少年ジャンプ+で連載集の『怪獣8号』はますます人気を増していますよね。そのほかにもたくさんの人気作品が+で生まれています。本誌よりも+を閲覧する人の方が増えてまう可能性があるという、本誌の沽券にかかわる事態になっています。

 ここまで読んで下さり、ありがとうございました。今後も好きな漫画やアニメについて投稿します。


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