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誰も教えない?今どきの医学部の授業

割引あり

日本の医学部を取り巻く環境は年々変わっている。
それは、医学の発展によるものだったり、政府の医師の数をコントロールする政策によるものだったり、国際的な医学教育の流れであったり。

取り巻く環境が変われば、当然、新しく設立される授業がある。
今回は、そんな授業を3つ厳選してお話したいと思う。
というのも、おそらくこの3つの授業は近年全国的に開講されている授業だと思われるから。

学校でも、塾でも、予備校でも話されることのない、新しい授業について、ぜひ読んでもらいたい。


医療安全

医療安全が日本の医学部で本格的に取り扱われ始めたのは、なんと平成に入ってから。
ご存じだろうか?1999年に相次いで起きた医療事故を。

横浜市立大学の「患者取り違え事故」を皮切りに、都立広尾病院での「消毒薬の誤投与事故」、杏林大学の「割りばし事故」が世間を大きく揺るがした。
これらの一連の事故により医療問題が刑事事件化するという、それまでは信じられないことが起きた。
というのも、元来医療というのは専門性が非常に高く、ベールに包まれた存在で裁判にしても負けるといのが定石だったからだ。

しかし、この事故が起きて以降しばらくは、医療側の瑕疵の度合いにかかわらず、裁判で負けるという事態が相次いだ。
世間からの非難は当然免れず、結果、医学部でも医療安全についての授業に本腰を入れるようになった。

医療安全は一つの学問になるくらい、本当に奥深いし、面白いことに航空安全を基にしている部分が多い
なんちゃってメーデー民の私は、医療安全の授業が結構好きだった。

さて、医療安全の授業内容だが、おそらくどこの大学でも、「ミスが起こるメカニズムと改善方法」について焦点を当て、この3つは医療安全で扱うと思う。

1. ハインリヒの法則
 1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常、いわゆるヒヤリハットが隠れているというもの。
2. スイスチーズモデル
 スイスチーズとは穴ぼこの多い、トムアンドジェリーのジェリーが入っているようなチーズである。このチーズ片1枚1枚を安全対策に見立てる。つまり、チーズの穴は安全対策の穴・脆弱性ということになる。事故というのは、このチーズ片の穴全てをすり抜けたときに起こる、というモデルのこと。

Ian M. Mackay et al. - https://figshare.com/articles/figure/The_Swiss_Cheese_Respiratory_Virus_Defence/13082618?file=29049645, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=108165047による

3. 個人の責任を追及するのではなく、システムの問題ととらえる
 あらゆる安全において、ある意味最も大事なことかもしれない。「人は必ずミスを犯すもの」として個人の責任を追及するのではなく、「ミスが起こりにやすいシステムの問題」を認識する。
ミスを誘発しやすいシステムが存在する中で、個人が気を付ければいいという認識だけでは、事故の減少にはつながらない。だからこそ、この考え方は医療安全を改善していく上で、最も大事といえる。

他にも、ミスの起きにくいシステムの構築のために、物品の整理やコミュニケーションの円滑化、権威バランスの平坦化などいろいろ取り扱うことはあると思うが、キリがないのでこれくらいで。

緩和ケア

緩和ケアとターミナルケアは同義か?
この質問の答えをご存知の人はどれくらいいるだろうか。

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