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ダウン症の子の父親始めました

父の育休…という記事になるはずだった

はじめまして。普段はエンジニア・プロジェクトリーダなどをやってます。アラフォーで、二児の父です。

2022/10/01〜 2023/03/31 の半年間育児休職を取得しています。4月に第二子が誕生し、妻が9月末まで育休をとっていたのとバトンタッチ。子が翌4月に保育園に入る(※)までの期間の保育に専念するための育休です。(※入れると良いな…)

本当は男性が育児休職を取得するにあたって考えたことや、育休生活のリアル、家庭・夫婦の関係と仕事のうまい回し方…のような記事を書こうと思っていたのですが、家庭の状況に大きな変化があったので、ここではそのあたりについて、2022年末時点の頭の中をダンプする記事とすることにしました。

本記事の要約

  • 半年の育休を取得しています

  • 第2子がダウン症で狼狽しましたが、今はなんとかやっていけています

  • 子は今のところ健康面は問題ないです

  • ダウン症の子にできる限りのことをやってあげたく(※)、育休を活用してあれこれしてます

※続きを読んでいただければわかりますが、「子に」「やってあげたい」とは書きつつも実際は「家族としてなんとかやっていきたい」ということです。

ダウン症の子が生まれてきた

4月に生まれた第2子がダウン症でした。妊娠中も少し小さいかな、くらいで医者からなにか言われたりしなかったのですが、生まれてきて子の体・顔つきを見て産婦人科の先生がそのように判断しました。その後遺伝子検査もして、21トリソミーであることが確定しました。

我が子の染色体検査報告書より。21番目の染色体が余分にある "21トリソミー"

数日はショックで呆然として、頭の中を様々な思いがぐるぐると駆け巡っては沈殿したり霧散したりしました。自分の体の輪郭がなくなるような感覚も覚えました。

感染拡大防止のため、入院中の妻や生まれた子に面会できるわけでもなく家で長女と過ごしていたのですが、何も知らない長女は、彼女なりに母が不在な状態で健気に頑張っていました。そんな長女のわがままがいつもより愛おしく見えたり、これからの生活が不安でちゃんと顔を見られなくなってしまったりしました。ダウン症と伝えられたその日は何も考えられず、泣きながら眠ったことを覚えています。

一方で、そんな状態で病院で一人で産後の時間を過ごしていた(しかも保育器に子供が入れられて触れることもできない)妻は、想像を絶する心理状態にあったのでは、と思います。

心の整理

将来への不安、未知のものへの漠然とした恐怖で押しつぶされそうな日が何日か続きました。それでも、子と妻の退院の日に迎えに行ったとき、妊娠出産を頑張った妻に対して尊敬と誇らしさを感じましたし、子はかわいいと思えたのです。もちろん可愛いだけでは将来やっていけないのですが、生まれてきた子と出会った瞬間に、かわいいと思えない可能性もあると恐れていたのです。でもそれは大丈夫でした。

まず手始めに、頭の中を情報で溢れさせることにしました。すでに始まってしまっている得体のしれないことを、そのまま自分ごととして無防備に受け止めることから、意図的に一旦逃げることにしたのです。

幸い、子の身体に大きな障害はなく、ミルクを飲んで服を着せておむつを変えて〜という生活は今この瞬間は健常な子と何も変わりません。ダウン症の場合生まれた瞬間から生活に支障のある複数の障害がある場合もあり、これは幸運でした。そこで、子や自分たちの生活を心配をするのを一旦意識から消し、あくまで一般論としてダウン症に関する知識を得ることに徹してみることにしました。

可制御なこと・そうでないこと、これから起きる事象の平均とブレの幅、社会福祉などなど。情報が増えるにつれて、どこから手を付けよう、何に気をつけようという具体的な行動が少しずつ見えてきて、それらをまとめたボトムアップ式のプロジェクトを形成していきました。そしてそれを自分の子に適用してみよう、というふうに考えることで、漠然とした不安を周辺に追いやることができたように思います。

知識を得る

具体的には本や当事者のブログ、親の会や療育施設の記事をいくつか読むところから始めました。若干語弊がありますが、ダウン症は比較的メジャーな病気(?)で、書物やネット上の情報もたくさんあります。

読んだ本の一部。基本的にすでにショックを受けている人を読者と想定して書かれているので皆優しい、、、のだけど、一番左の本だけは結構厳しいことが書いてあってそれがタメになりました。

色々読み漁りましたが、大きく3つの知識に分けられると思います。

ダウン症と関連する障害を知る

ダウン症の人はどんな特性を持っているのか、知的障害とはどういったものか、発達が遅いとは具体的にどんなかんじか。関連する他の障害にはどのようなものがあるのか。ダウン症の合併症にはどのようなものがあるのか。難聴、消化器や心臓の奇形、甲状腺疾患、白血病状の症状、などいろいろあることを知りビクビクしましたが、我が子の場合、心臓の僅かな奇形で住んでいて、実生活にはいまのところ影響ありません。

ダウン症の人の特性として、穏やかな気質で表情も豊かでコミュニケーションを取る気のある人が多い、ということを知ることができたのは、かなり心の支えになっています。子とのコミュニケーションの中で楽しいこと・取り組めることを見つけていけば良い、と思えました。

社会のサポートを学ぶ

療育とは。保育園には通えるのか。どんなお金がかかるのかあるいはかからなくなるのか。親の会ってどこで何してるの?似たような境遇の人とはどのように知り合えば良いのかなど。これを通して、民間の児童発達支援施設というのがあることを知りました。何があるかを知ったらその次は、具体的にどうすればそこにたどり着けるのかも調べます。

子の将来について想像する

知的障害を持った子は将来どのように生活していくのか。まず手始めに小学校・中学校はどんな暮らしになるのか。子が行ける学校はどこにあるのか。普通校に行くのが良いのかどうなのか。成人したらどう暮らしていくのか。仕事はあるのか?親が死んだらダウン症の子はどうなるのか。一番重い話題です。障害者年金とか、財産の信託とか、障害者の共同生活の施設なんかの話もたくさん学びました。

社会資源の活用

知識を得て、アクションの連続としてのプロジェクト化することで、未知の恐怖を無謀に受け止めて押しつぶされることのないようにする、というのが先程書いたことです。

そこで具体的なアクションとして、私の育休の半年で全力で社会資源の活用に取り組むことにしました。ここで言う「社会資源」という言葉は、区役所等に行き始めてから聞いたのですが、要するに、社会福祉のための施設やサービスの提供者、サービスのことです。

待っていてもなにも始まらない(たぶん始まらなかった)

産院の知識・経験・サポートへの力の入れ方に大きく依るところだと思われますが、自分たちの場合、子が生まれた産院では、小児科としてのケア以外はこちらから言い出して始まりました。

我々としては、身体動作・会話等「なんでも」できることからできるだけ早くトレーニング等開始したい、と思っているのですが、小児科としては子供の身体の健康を見るのが第一なので、彼らから療育センター等を自発的に紹介はしてくれません。

そこで、はじめのステップとして、遺伝科のある病院を紹介してもらいます。私は横浜市在住なのですが、神奈川こども医療センターというところに神奈川のダウン症の子は集まっています。(当初そのことすら知りませんでした)

次に遺伝科で療育の必要性を確認し、早期ではじめられることがあることを教えてもらった上で、療育センターを紹介してもらいます。また並行して、親の会的なものをいくつか紹介していただきました。これでようやく療育センターにたどり着きました。今は、上半身を上げる・座るなど体をうまく使う訓練(理学療法、PT)と、摂食の訓練を受けています。

民間の児童発達支援施設も、基本的には自分で探し自ら手続きを始めなければなりません。税金で賄っている事業だからというのもあると思うのですが、自治体に問い合わせても「どこが良い・行ったほうが良い」と特定の事業所を推薦してくれるわけではありません。というかそもそも、、公的な療育センターと民間の児童発達支援施設の違いもわからないところからのスタートでした。

幸い今では半日預かりで療育的なこともトータルで見てくれる児童発達支援施設に巡り合うことができて、ホッとしています。

臆面もなくがっつく他ない

本やインターネット・幸運にも知り合った少しの当事者のつてなどで情報をかき集めてはいますが、今の子の状況が(比較的)良いのか悪いのかいまいちピンときませんし、やれること・やったほうが良いことが他にもあるのでは?という不安が常にあります。こどもの成長に合わせてやることも変わっていくでしょう。なるべく早くそれらを知り、行動に移すためにこちらから先行して専門家や当事者のいるところに行って教えて貰う必要があると感じています。臆面もなくがっついていかないと行けない。しばらくはこんな暮らしが続くのだろうと思います。

こういうのとにらめっこ…してもなかなか進まない。とにかく電話、突撃。

さて肝心の我が子はというと

4月に生まれて8ヶ月になりました。女の子です。誕生直後は甲状腺の異常、白血球の異常、難聴の疑惑などいくつか警告がありましたがいずれも改善し、幸いいまは、動脈管開存という症状以外は大きな合併症はありません。ゆっくりではあるけど成長しているように見えます。(例えば循環器の疾患がひどいと、栄養が体に行き届かず成長も更にゆっくりになってしまうそうです)

最近は、小児科・遺伝科の病院と、公営の療育センターにしばしば通いつつ、民間の児童発達支援施設に週2程度お世話になっています。

ダウン症っぽい話でいうと、未だに寝返りをちゃんとできなかったり、ぽやーっとして活発に動かない時間が長かったり、座るのもできなかったり、ズリバイもできません。スローってこういうことかぁ、、と実感して凹みます。でもやっぱり、寝返り返りに初めて成功したときとか、すぐに倒れたけど座るのに数秒成功したときとかは、大騒ぎして喜んでいます。

離乳食を始めて2ヶ月経ちました。ダウン症の子は口が小さく・低緊張で舌を使うのが不器用な子が多いらしいのですが、まさしくそのような感じでなかなかうまく食べられません。舌がべーっと出ちゃうんですよね。辛抱強くやっていきます。

焦らず…いや、焦るでしょ

スローであることさえ受け入れられれば、ほかは健常の子と同じとも言え、色んな所で「焦らず子の成長を見守りましょう」なんて言われているのですが、特にことばの能力の獲得に関しては、それが進む年齢の限度があると様々なところで言われていて、ことばに関わる体験の豊かさには体がどれだけ自在に使えるかが鍵となるはずなので、やはりゆっくりはしていられない。少なくとも3,4歳くらいまでの脳の発達段階は、子の訓練を最優先で暮らしていく必要があるなぁ、、と考えています。

今は私が育休中で平日昼間に様々な施設等に行くことができているのですが、復職したらどうしようか、、が直近の課題です。妻氏や会社と相談していい体制を作っていきたいと考えています。これこそまさにSDGsな話題ですね。

これから:価値観・考え方の転換

ダウン症の子を持ったことで、生き方・キャリアの考え方を大きく変えなければならないと感じています。成長・活躍・称賛・華々しいものだけがすべてではない、といったところに新しい価値観を見出していかなければなりません。子が楽しめること、子と家族や周囲のお友達たちがともに楽しめること・成長ややりがいを感じること・それを通して少しでも社会とつながっていけること、を見つけて・作り・実践していく必要があるでしょう。

その点、児童発達支援の施設でたくさんのダウン症の子やその親と知り合うことができたのは本当にありがたいです。ダウン症の子との暮らしが絶望するほどレアで孤独なものでは無いということが実感としてわかってきたのが、一番の心の支えになっています。彼らとの交流を通して、新しい価値観が少しずつ形成されてきているのを日々感じています。

一方で、知的な発達が不十分で社会に頼る側だったとしても子を一人の人として尊重したい、家族外からも尊重してもらいたいと、親としてはやはり思うわけですが、本当にそれが子にとって幸せなことなのかはいま時点ではわかりません。訓練のようなことをたくさんやったら少しはできることも増えるのかもしれないけど、それは親の自己満足かもしれない。その過程で互いに辛いことがあったりしたら元も子もない。

先天的にいくつかの異なる特性を持ってこの子は生まれてきて、その肉体で世界を見つめ、人と接しているのだから、親の価値観とは違って当然だと思うのです。でも刻一刻と過ぎていく時の中で、親として後悔したくないという思いも強い。今後はそういった思いと、私もじりじり戦って生きていくんだろうなぁ、、と想像しています。

身体の健康面は問題なさそうなので、結構連れ回してます。コーナンとか。

最後に

まだ8ヶ月で、言うて赤ちゃんなので「知的・発達障害」ってところまで全然行ってない段階です。家でびっちり庇護して暮らしていて、理解のある人のいるところにしか行っていません。したがってトラブルと言うトラブルはありません。

しかし成長するにつれて、発達の遅れ・他の子との違いも顕著になってくるでしょうし、周囲の人とのトラブルも起きるでしょう。

そんなときに「自分たちは不幸だな」という思いでいると、ありふれた悲劇にとらわれて生きていくことになってしまう。(そう、ダウン症はありふれているのです)それよりは、このちょっとちがう特性を持った子と暮らしているから起きることや、おそらく出会うことのなかった人たちとの出会いを楽しんで行きたいです。

当ブログの今後

今回は個人的な手記として書きましたが、今後はダウン症児の育児について、特筆すべきことがあれば記事としてまとめていきたいと考えています。自分も学びながらいろいろ突撃・実践している最中ですが、実際にやってみてわかったことでネットではあまり見かけなかった情報なんかを記事にして、次の700分の1の人※に少しでも役に立つことができれば良いなと考えています。

ダウン症の赤ちゃんは700人に1人の割合で生まれているそうです

余談:発達障害・知的障害とテクノロジー

余談ですが、発達障害や知的障害の子と周囲の人の暮らし・体験の質を上げることに、人間拡張的な技術やAIが活用できるのではとぼんやりと考えています。身体障害に役立つテクノロジーはたくさんありますからね。

ヒューマンインタラクション系の学会では、今ほどAI技術が盛り上がる前から自閉症児を対象にした研究が結構盛んに行われていたので、もうすでに始まっているかもしれません。(ちゃんと調べよう…)

当事者だからできる研究活動みたいなものに挑戦してみたいです。(一緒に考え・作ったり実験してくれる人を募集します。子を被検体に使ってくれるのも大歓迎です)

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