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大寒だからね

進まないあれこれを抱えて、ストレスが徐々に溜まっている。
こうなるといろんなことがうまく回らない。
なんだか家の中もぼやっと散らかった状態だし、眠れなかったりやけに眠かったりもする。
子どもたちの操縦もなんとなくむりやりハンドルをきっている感があって、少しずつ彼らのストレスも蓄積されているのが分かる。

それに加えて大寒の冷え込みが底を迎えているものだから朝は私も含めてみんななんだか起きられないし、出がけには毎日バタついている。
下の子をチャイルドシートに座らせて、コートと襟巻を引っかけて家のドアに鍵をさす。
上の二人はおのおの自分の荷物を自分で持って、車に乗る。
私が鍵を回す。
毎朝の流れだ。
ところが先日のこと、幼稚園についた息子はランドセル(通園用の制鞄)を持っていなかった。
ああ、もう、と思わず深いため息をついて子どもたちを降ろした後急いで家に取りに帰ってまた幼稚園に持って行った。
確認しなかった私もいけないのだけど、でも、靴を履く息子の横にぴったりと鞄を置いて、ここに置くからね、と念も押したのだ、と野暮な言い訳も出てしまう。

その翌日だった。
やっぱりその日もなんだかんだとゴロゴロしたかと思ったら長女と息子は遊びだし、着替えることもしない。少し注意すると「ママ!そんなこと言わないで!!」と反抗的な表情を見せた息子にカチンときた。
「じゃあ、もう何も言わない」
そう言って、黙々と朝食の支度をして、配膳した。
身支度が一向に終わらない長女と息子。
当然、その日は(も)遅刻だった。
幼稚園に向かう車の中でよせばいいのにお説教をしてしまう。
くどくどねちねち、言っているうちになんだかやるせなくなって泣きたくなった。

頑張っているつもりなのにどうしてこうもうまくいかないんだろう。

俯瞰で見れば全然大したことのない日常のばたばたした風景なのだけど、余裕のない日々を送っているせいでこんなささいなつまづきに心が折れそうになる。
頭の中はずんずん大げさに膨らんで、もう幼稚園辞めたほうがいいんじゃないか、と突飛な考えまで浮かんで我ながらぎょっとした。
笑顔で「いってらっしゃい」が言えないまま、その日は子どもたちを見送った。

お迎えに行くと息子の担任の先生が「今朝、怒りました?」といたずらっぽく笑って訊いた。
なるべくなんでもない風を装って「めっちゃ怒りました。激おこです(笑)」と少しふざけて返事をしたけれど、内心はぐずぐずに溶けてもう無くなりたいほど落ち込んでいた。
「息子君から話を聞いて、私からもちゃんとお話しさせてもらいました。だってママが…って言うので、お母さんはちゃんとやらないといけないことをやらないから怒るんでしょ、ママのせいじゃないんだよって伝えました」
ありがとうございますすみませんと言いながら、つい先生の本音を探ってしまう。
きっと至らない親だと思われているんだろうな。
子どもひとり朝の支度させられなくてどうするんだと思われていないかな。
頭の中であれこれ逡巡しながら愛想笑いを浮かべていた。

帰宅して息子を膝にのせて話をした。
「今朝は怒ってごめんね。ママもニコニコでいってらっしゃいが言いたいから、ママのお話もちゃんと聞いてね。お着換えしようって言ったらしようね」
うん、と頷きながら息子は膝の上で足をぶらぶらさせていた。
先生もあれこれお話してくれたことを思い出し、
「先生も大事なおはなししてくれたんじゃない?」
と訊くと
「そう!」
と急に眼をぐわっと開いて
「あのね!おとなりのりすぐみさんのおとこのこがぁ!トイレにネクタイ流しちゃったの!!だからもうネクタイがないの!!!!!!」
と力強く言ったよ。
ちょっとアレがアレすぎて絶句。

また読みにきてくれたらそれでもう。