見出し画像

怪談百物語#40 見ると踊ってる

私は霊が見えます。
冗談だと思われますか?
あなたのご両親、すでに亡くなられているでしょう?
え?
違いましたか。
すみません。
あなたの後ろにいるお二人があまりにあなたそっくりだったもので。

先ほどは失礼しました。
話を戻しますが、私は霊が見えるんです。
ええ、死んだ人とか動物とかそのあたりです。
たまに変なものも見えますが。

そうですね。
大体は霊が変異したものが多いんですけど。
ありますね。
違うものも、たまにですけれど。
例えばですか。
そうですね。

例えば、ほらあちらに見える。
あ、見ない方が良いです。
こっちを見てました。
目を合わせないように、そう。

ええと何でしたっけ。
そう、見えるんです。
三度目ですか。
何度もすみません。

大学の中庭にある噴水なんですが、あそこに最近いるんですよ。
霊が、です。
話聞いてくれてましたか?
しっかりしてください。

その霊なんですけど。
あなた見えていませんか?
普通はそうですよね。

でも中庭を通るとき、いつも噴水見てるでしょう?
あなたが、です。
それも噴水の一番てっぺん。
てっぺんって言いませんか?

一番上の、水が出る噴出孔です。
そこばかり見てますよね。
あそこに女性の霊がいるんですよ。
誰かに似てるんですよね。

知りませんよね、見えてないんですから。
でもあなたと目が合うと、嬉しそうに踊りだすんですよ。
何がですか?
踊るわけないんですか?
足、無いですもんね。

やっぱり見えてるんじゃないですか。
じゃあ何故足がないことを知っているんですか?
あなたが言ったんですよ、踊れるはずがないって。

ここは私が出しときます。
帰れますよ。
私にはありますから。
足ですよ。

苦しそうな顔してましたよ、彼女。
逃げられないようにして、弄んで。
頭を押さえつけて。
水辺に出るっていうことは溺死ですか?

いえ、もう帰ります。
気を悪くしたならすみません。

やっぱりあなた、すでに亡くしているでしょう。
ご両親です。
それと

止めてください、帰りますから。
すごい顔で睨まないでください。
いえ。
ご両親の方が、です。

ありがとうございます。
証拠もあるんですね。

あ。
見えるだけじゃなくて話せます。
わかってますよ。
妹さんでしょ、彼女。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?