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さるくんと、いぬくん

テレビから流れてきたニュースが気になった。

ある地域で猿が繁殖し田畑を荒らしていると言う。
その対策に駆り出されたのは地域の犬達だった。。。から始まる物語。

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「おーい、いぬくん!今日は猿はいたかい?」
「なかなか見つからないね。。。気配を感じてどこかに隠れているんだろう。」

いぬくんは、猿繁殖を止める為に【猿捜索いぬ隊】に任命されたのだった。
しかし、いぬくんが捜索するも気配を感じた猿たちは身を隠して見つける事ができないでいた。
いぬくんは飼い主やいつも可愛がってくれる近所のみんなの為に、使命感を持って捜索活動に挑んでいた。

ある日、その町の町長さんが来て、いぬくんに向かってこう言った。
「いぬくん、よその町の捜索いぬ隊は多くの猿を確保しているよ。いぬくんはまだ確保出来ていないんだね。
このままでは、君はご主人の元には帰れないよ。気を引き締めたまえ。」

なんと、いぬくん達は飼い主家族から引き離されて捜索活動をさせられていた。
それから、いぬくんは食事をするのも忘れて毎日毎日、猿捜索に没頭した。

ある日、捜索活動から宿舎へ帰る途中、いぬくんは、、、ふと空をみた。

「ご主人、元気かな。。。」

目の前に夕焼けが広がり、ご主人と毎日散歩した同じ空を思い出していた。

「きついな。。。
僕にはこの仕事向いてないんじゃ無いかな。。。
ご主人に会いたい。。。ひと目だけでもいい、元気もらいに行きたいな。。。」

いぬくんはこの時、身も心もボロボロだった。

いぬくんは歩き出した。
小走りにスピードを上げて。
夕焼けに向かって走り出した。

「もういい!任務より家族が大事だ!ご主人が大事だ!」

真っ赤になって潤んだ瞳は夕焼けと重なり輝いていた。
どんどん、どんどん、いぬくんはスピードを上げて走った!

(もうすぐ着くぞ。。。あと一息だ。。。)

「・・・・・んう。 ・・・んう。」

畑の向こう側から何か、か細いうめき声が聞こえる。。。

「・・・・・んう。お母さん。。。どこ?お腹すいたよ。。。」

いぬくんが恐る恐る近づいてみると、まだ小さい小さい小猿がうずくまっていた。
顔色も悪くかなり飢えているようだ。

「さるくん?大丈夫かい?
犬達に追いかけられてお母さんとはぐれたんだね。
お腹が空いているのかい?」

さるくんは、今まで追いかけられていた犬達と同じ姿のいぬくんに怯えた。

いぬくんは、迷った。このままこの小猿を確保して報告するか、見捨てるか、それとも助けてあげるか。

迷って迷って一時間が経過した。

さるくんは、追いかけもしないいぬくんに安心したのか徐々に近づいてきた。

3時間経った時には、さるくんと、いぬくんは、寄り添っていた。
もう空は真っ暗になり綺麗な星が瞬いていた。

「さるくん、お腹すいただろう?」
「うん。でも何も食べるものが無いんだあ。どれが食べれるのかわかんないんだあ。」
「そうなんだね。いつもお母さんに美味しい物をもらってたんだね。
・・・あ、さるくん待っててね。」

少し先に畑があった。さつまいも畑だ。

サッサッ・・・ズズズっ・・・

「ほら、さるくんこれなら食べれるよ。」
畑から芋を掘り出してさるくんに手渡した。

「でも、いぬくんは僕たちを確保する猿捜索いぬ隊でしょ?お母さんから聞いてるよ。その首輪が目印でしょ?」
「いいんだ。もういいんだ。」

さるくんは美味しそうに芋を頬張り涙を流していた。
お母さん猿からはぐれて数日何も食べてなかったらしい。

そして2人は寄り添い一晩共にした。

太陽が登り空が明るくなった。

「キキー!キキー!さるくんどこ?いる?」

さるくんが、飛び起きた!

「あ!お母さん!僕ここだよ!ここ!」

お母さんさるは、さるくんの隣にいるいぬくんに威嚇していた。
それもそうだ。今は天敵の猿捜索いぬ隊の首輪をした犬が我が子の隣にいるんだから。

さるくんは、お母さん猿の元へ駆け出した。
そして、抱き合って久しぶりの再会を喜んでいた。

(よかった。再会できて。。。)

いぬくんの目からしずくが落ちた。
どんどん、どんどん、涙が溢れてくる。もう前が見えない。
ご主人に会いたい気持ちが胸いっぱいに溢れていた。

ふと気づくと、背中が暖かくなった。

「・・・いぬくん。ありがとう。いぬくんも早くご主人に会いたいね。
大丈夫だよ。会えるよ。」
そう言って、さるくんがいぬくんの背中にしがみついた。
そして、お母さんさるも一緒に背中を包み込んでくれた。
さるくんが、お母さん猿に1日の事を話して感謝を伝えたかったようだ。
とても暖かく、よりいっそう涙が出た。
そして、笑顔になれた。

それから間もなく、さる親子は山へ帰っていった。
別れ間際に町には降りてこないようにと約束を交わした。
それと、捜索中に見つけた野菜や果物が沢山自生している山を紹介したのだった。

きっとあの山で幸せに暮らせるだろう。

いぬくんは、今までにない輝いた表情でゆっくりと歩く。

ご主人に会える嬉しさを噛みしめながら。

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それから数日後、ニュースが流れてきた。
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◆猿捜索活動を取りまとめていた団体は不正に犬を連れ出し飼い主の同意を得ないまま活動していたそうです。愛護団体そして警察も捜査に入った模様です◆
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そして、

「ロビーン!こっちよ〜。早くおいで〜」

「ワン♪」

いぬくんの本名はロビン。

さるくんと別れた翌日に、ご主人に再会できた。

幸せにね。ロビン。

(本ストーリはフィクションです)





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