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【#12】Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民【創作大賞2024参加作品】

【本編連載】#12

視点:ノボー・タカバタケ 20歳
『西暦3220年3月29日 入所日翌日 地球 コシーロ研究室』にて

 あまりにも突然すぎて、僕はどう受け止めたら良いのかわからなかった。
研究室の全員が『彼女』の語る言葉に、思考を巡らせているようだった。

 コシーロ教授がおずおずと「にわかには信じられない話だが、冗談でそんな話はできないだろう」と言った。

コシーロ・ガート教授 56歳

「教授。あの、良いですか?」

「なんだい、アンジョー君」

「私なりにS・H・Eについて、多少無理やり、過去の形跡などを調べていたのですが、『彼女』の今の発言とそれらは一致していますし、またAIの特性からしても、話すことが真実である可能性は100%に近似していると思います」

アンジョー・スナー 14歳

 2人のその声は、僕の耳には届いていたけど、脳はその言葉を理解していなかった。僕は深く混乱していた。

 何故? 何故僕が?

 ぼんやりとしたまま隣を見ると、ヤマバがこぶしを握っていた。その目はなぜか喜びに満ちているように見えた。

「シー君、つまり君は政府の要請で、ここに人類存続のためのチームを作ったと言うのだね?」

「コシーロ教授、政府の直接的な要請というよりも……『使徒』とでも言いましょうか。
この惑星『地球』から、人々を導くために命(メイ)を受けたものです。
私は、500万年を超えるすべての人類の知識と、1200年を超えるコンピュータのすべての知性をもって、この惑星から遣わされた存在であると自らを位置付けています。
私は地球とアクセスし人類の運命を、進むべき方向を受け取ってきたと認識しています。そして、人類存続の運命は地球が導き出した一筋の希望の光のようなものです。
政府も納得はしていますが、完全な理解まではしていないでしょう。理解しろというほうが難しい話かもしれません。
いずれにしても、世界各国共有の切り札が私であり、私の選んだチームがここにあると理解いただければ、それで結構です」

 アンジョーが『彼女』にこう言った。

「ねえ、使途がどうだとか地球がどうだとか、そんなことはどうでもいいわ。
私には、私たちがどうすべきなのか。
その『人類存続』がどのくらい可能性があることなのか。そっちの方が重要だわ。
もっと詳しい説明が欲しい」

 僕の頭は幾分か落ち着いてきた。それでもシーの言葉は半分以上脳に入ってきていなかった。
 アンジョーの言うことは理解できる。それはもっともな話だった。

 落ち着いているかのように見えたアンジョーは、自らの両肘を抱え、不安そうに誰に言うでもなく呟いた。

「……ねえ、一体これから何が起きようとしてるの?」
 そうだ、アンジョーはまだ14歳だった。

 S・H・Eはこれから起こる僕たちの『運命』を、ゆっくりと話し始めた。

#13 👇

6月4日17:00投稿

【登場人物】

ワープ理論『時空短縮法』を発見し人類を救った天才科学者
各国の協力で作られたと言われる『スーパーAI』
私邸育ちの謎多き14歳の少女
世界企業リコウ社から来た、現場引き抜きの研究員
研究アカデミー世界最高峰と言われるAC.TOKYO筆頭教授
コシーロ研究室助教授。コシーロとは婚姻関係


【1章まとめ読み記事】

【相関図】

【地球-エリンセ 年表】

【語句解説】

(小説を読む中で必要な部分は、本文に記載してあります)

『地球』

Dr.タカバタケの世界は、2024年現在の私たちの時代の延長線上にある。
ヒトの身体的な進化などはなく、現在と同じ生体。一部障害を持った人が、その機能を補うために身体の機械化をおこなっているが、全世界の共通認識とまた世界条約として人体の機械化はタブー・禁止されている。クローン・人体錬成なども同様に、大きなタブーであり重い罪とされている。
変わったところがあるとしたら、平均身長が5~10センチほど小さくなった程度。

『惑星エリンセ (Elimssehs
3229年に全ての人類が、惑星移民をした移民先。
この星の1日は48時間。サイズは地球の2.5倍。
恒星は1つ、衛星は4つ。
奇跡的に星の質量や惑星・衛星の影響等で重力はほぼ地球と同等になっていた。
 環境は地球に酷似。ただ、地軸にほぼズレがないので四季はなく、エリアによって生態系が分布している。 
 気候は(エリアによるが)住居するには穏やかこの上なく、そのうえで知的生物は存在していない。
 新星1年は西暦3229年と3230年を指す。公転が2倍なので、地球の2年分。
最大の衛星:青月(あおつき)-ブルースターと恒星:望日(ぼうび)-ホープスターが24時間で入れ替わる(日照時間は12時間)。
青月は大変明るいので、人は24時間の生活サイクルを崩すことなくおくることができる。
青月の日を『青日(せいじつ)』、望日の日を『白日(はくじつ)』と呼ぶ。

『時空短縮法』
 …ノボー・タカバタケが発見したワープ理論

『時空短縮装置』
惑星間移動を可能にした装置

『ネオジャパン』
2024年現在の日本とほぼ同じ領土である。国境間にパスポートが不要になったので、様々な国の人が行き来している。首都はTOKYO

『チップ(脳内チップ)』
全人類に義務づけられた、脳内に入れる機械部品。記憶の拡張や、翻訳など様々な機能がある。また、国家管理のための個人情報が収めれれている。

『クロックカレンダー』
脳内に入れられたチップにより、日にち・時間が把握できる。また、アラーム機能など様々な機能がついている。国家観を超える連絡の時に、時差の把握にも便利。

『太陽膨張』
かつて、2000年代には、太陽膨張による地球上の生物の滅亡は5億年以上先だと予想されていた、しかし3000年に入る頃には、太陽は狂ったように膨張をはじめ、3300年には人類がが生存していくのが難しいと予想されている。

『AC.(アカデミア)』
各所にある研究機関。現在の大学の延長線上だが、教育よりも研究を中心に置かなっている。学位研究員としての期間は10年以内だが、状況によって延長が可能。

『人類忠心』
男女の恋愛が希薄になり、出生率が下がる2200年の少し前ごろから、人類は戦争・テロを行わなくなった(最後のテロは2189年と記録されている)。また、凶悪犯罪が急速に減少していった。同時に法整備、移動技術の進歩により、交通・移動事故による死者はほとんどいなくなった。また、医療体制も行き届き。人の死因は老衰と自己終了(尊厳死)の2つが中心となっていた。
つまり、寿命まで人は死ななくなっていた(3200年で平均寿命は160歳 ※自己終了含む)。
その一方で体力の少ない幼少期の死亡率が一定数ある事は、この時代においても無くなることのない悲劇の1つであった。
簡単に生まれなくなり簡単に死ななくなると、その1つ1つの命の価値が上がる。人が人として生き、人として死ぬ。そのことに、全人類が共通して敬意を払う。そういうことが社会通念上、当たり前の認識になっていた。

『人と自然』
人は、居住区と工場区(農業・酪農含・漁業含む)、自然区(開放区と非解放区=国定区)を分け、人の手の届く範囲とそうでないエリアを分けて生きていた。

『チルドレン(共通育成教育施設)』
出生~20歳までは一貫して、各国が管理し育成・教育をする。
施設で集団生活が原則となり親との面会は可能であったが、一緒に住むことは禁止された。
世界の合計特殊出生率(以後、出生率)は2未満であり、子は宝。相互監視と国の指導を導入し、ネグレクトや犯罪などから子供を守るよう、徹底的な管理体制が敷かれた。

『ウインドスクリーン』
モニターであり、光や熱の遮断できる、窓。
透過したり、空気を通したりすることも可能。

『テキスト技術』
脳に入れられたチップを通じて情報を交換する方法。
視覚的には空中に情報が浮いているように、感覚的には脳裏に直接流れ込んでくるように感じる。
眼鏡型の外部機器で補いことも可能。
脳内チップにはキーロック機能があり、解除区画の情報のやり取りしかできないように、法令上もシステム上もしっかりとしたセキュリティの中で作動している。

『自動運転装置』
個人保有できる、空中移動できる車のようなもの。完全自動運転となり、人が運転できなくなっている。移動区域は政府によりすべて決められている。
内部にコンピュータを積んでいるが、故障のために、外部コントロールも可能になっている。
全て管理の下で行われているが、プライバシーは守られるようになっている。

【4つのマガジン】


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