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パーキンソン病の歩行に関するリハビリ的私見

必ずしもパーキンソン病や症候群と診断されていなくても、パーキンソン病のような症状がある患者さんに出会うことがあります。
すくみ足や小刻み歩行、突進歩行、姿勢反射障害といったところが、リハビリ介入時に直面する課題として良く挙がります。

一般的な対応方法

歩行への対応として良く出てくるのが、歩き出す前に片足を一歩下げ、その足を再度踏み出して歩き出すとか、床にテープとかで目印をつけてそれを跨いで歩くとか、「1,2」とリズムをとって歩くとか、概ねそんな所がメジャーかと思います。

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しかし多くの場合、それで歩き出しが上手くいったとしても、目印が無い場所や・曲がり角・目的地に近づいた時など、再び小刻みになったり、突進様に前方に崩れそうになったりと、あまり効果的でないことが多いように感じています。

なぜ、そんな歩行になってしまうのか。
臨床的には、この「なぜ」がわかって初めて、効果的な介入が可能になると思います。

今回の理屈のメイン

パーキンソン病はご存知の通り、中脳の黒質が変性脱落し、ドパミンの産生量が減少する事が原因とされています。難しく言うと。
まあ、黒質がダメになっちゃって発症する、ってことですよね。
で、このドパミンというのが、神経の伝達に関わるものなのだそうです

「ドパミンが働く主な神経経路には黒質線条体路・中脳辺縁系路・中脳皮質路の3つがあります。黒質線条体路はパーキンソン病と関連し、中脳辺縁系路と中脳皮質路は統合失調症と関連するとされています」
(厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより)

こういう難しい物質やらなんやらは苦手で省いちゃいますが、ともあれ、パーキンソンでのポイントは、この、「黒質線条体路」ですね。
(※うつとかそのあたりの件は、今回は触れずにいきます)

線条体とは、尾状核と被殻の事です。

黒質と被殻は基底核ループの1つである運動ループを形成しています。

体性感覚野→被殻→淡蒼球・黒質→視床VA・VL→一次運動野・運動前野・補足運動野(→体性感覚野へ戻る)

これの機能は、「顔面・四肢及び体幹の筋群の制御」です。
(「脳卒中のリハ戦略」編集:吉尾雅春 より)

筋群の制御っていうのは、皮質に抑制をかけることで筋緊張を抑制し、それによって運動の発現に繋げる、という役割だと自分は理解しています。

ってことは、これだと思います。

すくみ足。

歩き出す時は、踏み出す前に重心を支持脚側の踵部方向に動かし、不安定を作って動き出すという戦略をとるのが通常ですが、筋緊張に変化が作れないと、これが困難になります。
重心を動かせないまま片足を踏み出そうとしても、重さが載ったままなのでこれは難しい、ということになります。

後ろに一歩踏み出してから、というのは、それによって重心移動を作りだし、ある意味強制的に不安定状態を作りだす事により歩き出せる、ということだと思います。

じゃあ、床のテープを跨いだり、「1,2」とリズムをとって歩く方法はどうなのか。
運動ループは運動前野を通っています。運動前野は視覚・聴覚の情報により活動します。これが賦活されるのではないでしょうか。

歩き出せば、ただ平らな床を真っすぐ歩くのは比較的出来る事が多いです。これはCPGのおかげだと思いますが、基本的にCPGはある程度のリズムでまっすぐ歩くのみなので、少しでも外乱があると、それだけでは対応できないと思います。

そしたら、小刻みになります。スピードが対応可能な範囲を超えていれば、突進様になります。ご本人は倒れそうと分かっていても、筋緊張は高いままで関節は動かないので、姿勢反射を起こすことは難しいのではないでしょうか。

このあたりが、パーキンソン病の人の歩行の原因ではないかと思っています。

パーキンソン病じゃなくても、近い症状が出る可能性はある

そう考えれば、黒質に問題が無くても、パーキンソン様の症状を呈する可能性は、ありますよね。
多発性脳梗塞なんかで、両側の運動ループのどこかが障害されていたら。とか。

脳画像をチェックすることは、やっぱり必要になると思います。

こういう理解をしておくと、いざ介入のときに、どんな感覚を提供したら歩きやすくなるのか、といった視点で関われるようになるのではないでしょうか。

ハンドリングする時のセラピストの位置取り、動作方法の提案、環境設定、歩行補助具の選定、声掛けのしかた。

少しでもヒントにして頂けたら、うれしいです。



あくまで私見なので、いろいろご意見を頂ければ、より考えを深くできるのでありがたいです!

読んで頂き、ありがとうございました!

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