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理学療法士が病院内の腰痛予防活動をやってみた!10カ月間の活動報告(後編)

いよいよ院内での腰痛予防活動が始まりました。時間をかけて準備を重ねてきた苦労は報われるのでしょうか?3回のシリーズ記事最終章です。

5カ月間の活動経過

評価班
アンケートによる問診に加え、活動に参加を希望しているスタッフを対象に、個別に姿勢タイプ、痛みの部位や強さ、姿勢による痛みの変化・FFD(立って前屈し、指先が届く距離を測るテスト)などの事前評価を実施しました。

メンバー1人当たり3~4人を評価する形で、計画的に進めることができました。また活動を行ったことによる効果判定ができるように、活動終了後にも同様の評価を実施し、データの作成に大変貢献してくれました。

エクササイズ班
まず、姿勢タイプ別のストレッチ、体幹のインナーマッスルを強化する筋力トレーニング、股関節の可動性を出すエクササイズのプログラム作成してくれました。

作成したプログラムを基に、月2回、昼休憩の時間を利用して「腰痛体操教室」を開催しました。エクササイズの方法の示し方、会場の手配・設営などは手作りではありましたが、丁寧に考えて実践してくれていました。

またエクササイズ動画の作成も行い、広報班が作ったHPにアップし、自宅でも正しいエクササイズ方法を確認することができるようにしました。

ただとても残念だったのが、ニーズから予測していた程に人が集まらなかったことです。1回の教室につき、多い時で10名、少ない時は3~4人という回もありました。

介助技法班
最初に医療・介護現場での腰痛発生に関して簡単な講義を行い、正しい介助方法の重要性を伝えました。「腰痛が発生しやすいのは午前中」といった豆知識も織り交ぜつつ、とても面白いものになっていました。

その後、月2回、昼休憩の時間を利用して「介助方法教室」をリハ室にて開催し、起居動作、立ち上がり、移乗動作を中心に実技形式で指導にあたりました。

またエクササイズ班と同様に動画をHPにアップし、介助方法を確認できるようにしました。

しかしここでも、慢性的な「人数が集まらない病」が問題となりました。特に介助方法教室の方が深刻な状況でした。

広報班
広報班ではまず、本活動をPRするリーフレットの作成から開始しました。

そして毎月開催する各教室のチラシ、腰痛に関するコラムや活動記録が掲載された月報も作成して院内に掲示をしました。また無料のHP作成ツールを使い、各班が作成した動画もアップしました。

しかし様々な方法でアピールを行ったのですが、目に見える集客効果は感じられませんでした。

活動の認知度の低さを痛感し、作業環境をチェックする「院内ラウンド」は行っても上手くいかないだろうとの判断で止む無く中止としました。

活動を終えて

メンバーの努力により、予定通り5か月間にわたり腰痛予防活動を行うことができました。

集計で得られたデータをまとめますと、参加者は「活動に参加したい」と回答していたスタッフの内、実際に参加してくれたのは2割にも満たない人数でした。

しかし、教室への参加の有無に関わらず、継続的に運動を続けていた職員の腰痛は軽減しているというデータはとれました。(サンプルが少ないのと、本記事は学術的なものではないので、詳細は割愛させて頂きます)

また参加してくれた職員からは、とても高い満足度を得られていました。

まとめ

集計結果より、教室に参加できなかった理由としては「教室の開催時間が参加しにくい」というものがほとんどで、昼休憩の時間ではメインターゲットであるナース、ケアワーカー、事務職は交代で休憩を取っていたり、午前中の業務の後処理を行っていることが多く、参加が難しいという状況がありました。

主催側であるリハビリ科では休憩時間を利用して教室を開催しなければならなかったので、結果的にメインターゲットを受け入れられる環境が整いにくかったのが、参加者が少なかった大きな要因だったと考えられます。

職員それぞれの働き方があるので、「教室」という場所に来てもらうのは、特に医療機関では難しいのではないかと今回の活動を通して強く感じました。

ただ、継続的に運動を続けられた職員は腰痛が減っているというデータが出ているので、今回の腰痛予防活動の運動習慣を維持するような働きかけが、直接的ではないにしろ、職員の運動への関心を促せていたのではないかと考えています。

腰痛予防に限らず、同じような院内のヘルスケアに資する活動において一定の効果を出すためには、病院の通常業務の中にヘルスケアの考え方を落とし込んでいく必要があるかと思います。(例えば、各部署の朝礼で体操するなど)

そしてそれには病院の上層部の理解が必要です。

逆に言うと、理解が得られ、院内全体に向けてトップダウン的な指示を出すことができれば、ほぼ目的の半分以上は達成していることになると思います。この点は今回の反省点として胸に刻みました。

残念ながら、今回の活動は思っていたような成果は得られませんでした。
しかし、プロジェクト終了後に活動報告書を提出したところ、「有意義な活動である」と上層部には一定の評価をしてもらうことができました。

上層部がこうした活動に興味をもってもらった結果、健診部とのつながりも強くなり、今年度の企業健診先の運輸会社で「腰痛予防教室」を開催することができました。

現在コロナ禍で活動は頓挫してしまっていますが、何とか活動を継続できる道を模索していきたいと考えています。

半年以上にもわたるプロジェクトを進めていくことは、様々な考えをめぐらせ、メンバーに伝え、説得や交渉をし、また話し合って、そして出来上がったものをいろいろな形で表現する達成感を私に経験させてくれました。

記事を読まれている方の中で、同じような活動をやろうと考えている方に参考になったかどうかは甚だ疑問ではありますが、これだけは言えます。

「自ら考えてやろうと思ったことをやり遂げた経験は今後も生きる!」

これからもチャレンジの心は忘れないようにがんばります!!

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