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結核患者の隔離解除のお話

肺結核と気付かず一般病棟に入院させ,しばらく抗菌薬治療をしても治らないからと念のため出した喀痰の抗酸菌塗抹検査が「陽性」……,「実は肺結核でした」という状況は避けたいものです。

隔離解除がいつになるか,どのような情報を確認すべきだろうか?

調べてみました。

まず基礎知識として,結核菌は「抗酸菌」と呼ばれる菌の一種であること,そして,結核以外の抗酸菌のことを「非結核性抗酸菌(Nontuberculous mycobacteria:NTM)」と呼ばれます


検査の種類が色々あります。

抗酸菌塗抹検査

痰などの検体を特殊な方法で染色して抗酸菌を顕微鏡で直接観察する検査です。

ガフキー○号と表されているものです。


肺結核患者の喀痰の抗酸菌塗抹検査が陽性になると大変です。

なぜなら,他者への感染力が強く,空気感染対策が必要になるからです(一方のNTMは,他者へ感染することはありません)。

ただし,この抗酸菌塗抹検査はあくまで抗酸菌の有無を単に調べるものであり,「結核菌なのかNTMなのか」を見極める検査ではありません。


抗酸菌塗抹検査の陽性は,結核とは限らない。非結核性抗酸菌(NTM)かもしれない。


培養検査

専用の培地に痰などの検体を塗って,コロニーと呼ばれる菌の集塊が生えてくるのをじっと待ち,そのコロニーを使って菌名の同定検査を行うものです(結核菌かNTMかも判別できます)


結核菌をはじめとした抗酸菌は通常,培養陽性まで2~6週間程度の期間を要します

核酸増幅検査(PCR法,LAMP法など)
この検査で結核菌が陽性と判定されれば,そこに結核菌が存在するということになります。

つまり,抗酸菌塗抹検査の陽性だけでは結核かNTMかはわかりませんが,核酸増幅検査で結核菌陽性となれば,顕微鏡で見えたその菌の正体は結核菌ということになりますので,培養結果を待たずに「塗抹陽性の結核」という診断がつけられます。

喀痰塗抹陽性の肺結核であれば空気感染するため感染対策が必要になり,原則,結核病床を有する病院での入院治療が必要になります。

なお,塗抹・培養検査はその感度の問題などから基本的には3回行いますが,核酸増幅検査は1回のみ行います。


結核の検査では,まず塗抹検査と核酸増幅検査の結果が得られ,しばらくして培養検査の結果が得られます。

隔離解除の判断

隔離解除の判断について,現状は「塗抹検査で3回連続陰性」が必要とされています。

塗抹陰性であれば,たとえ核酸増幅検査が陽性であっても,後で培養が陽性になっても,他者への空気感染のリスクはほぼないと判断されるため,隔離解除が可能です。


肺結核を疑って隔離した場合,喀痰塗抹検査が3回連続で陰性を確認してから解除を検討する。

着用すべきマスクはどれか

 肺結核を疑った時点で空気感染対策を行うので,医療者が患者さんをケアする際には通常のサージカルマスクではなく,N95マスクを装着する必要があります。

一方,患者さん自身は通常のサージカルマスクでOKです。

この理解には,2つのマスクの目的が違うことを知る必要があります。

そもそもN95マスクの主な目的は「マスクを装着している人が他の人から病原体をうつされないため」であり,サージカルマスクの主な目的は,「マスクを装着している人が他の人に病原体をうつさないため」だからです。

たとえ肺結核でも,患者さんにはサージカルマスクの着用でOK!

調べてわかった事を書いてみました。


参考文献
1)Clin Infect Dis. 2017[PMID:27932390]
2)阿部千代治.結核菌検査の標準化と精度管理.結核.2003;78(8):541-51.
3)MMWR Recomm Rep. 2005[PMID:16382216]

痛みを起こさない体づくりについてまとめたのでみてみて下さい↓



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