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膝蓋下脂肪体の動態について!


1.英文紹介

Okita Y, Oba H, Miura R, Morimoto M, Gamada K. Movement and volume of infrapatellar fat pad and knee kinematics during quasi-static knee extension at 30 and 0° flexion in young healthy individuals. Knee. 2020 Jan;27(1):71-80. doi: 10.1016/j.knee.2019.10.019. Epub 2020 Jan 7. PMID: 31918962.

2.はじめに

 IPFP(膝蓋下脂肪体)の動態を正確に測定するためには、膝関節の各positionのIPFPの正確な三次元形態(3D)の分析が必要である。しかし、IPFPの真の3D形態を解析した研究は散見されない。先行研究では、MRI状でIPFPの断面積を報告したものやIPFPの断面積を用いて体積を推定したものが散見されるが、これらの先行研究は本当のIPFP体積(3D)を測定しているわけではない。臨床的にIPFPの拘縮は、膝関節の屈曲拘縮を引き起こす可能性があるため膝伸展動作中のIPFPの挙動を調査することを目的とした。 

3.対象と方法

・9名の被験者(男性6名、女性3名、平均年齢22 ± 26)
 膝関節の0°と30°の屈曲時に撮影したMRIから、膝蓋骨、膝蓋腱、大腿骨、脛骨、IPFPの3Dモデルを作成し、IPFPの挙動を定量化した。結果は、(1) IPFPの動き、(2) IPFPの体積変化、(3) 膝蓋骨の動き、(4) 膝蓋骨腱の表面長の変化、(5) 脛骨に対する膝蓋骨腱角度の変化、(6) 脛骨の動きで、これらは膝関節屈曲30°と0°での各モデルの位置と体積の変化で解析した。解析方法は以下の通りである。

・MRIとセグメンテーション:
 被験者が仰臥位で膝関節の0°と30°の屈曲時に膝のMRIを撮影した。各解剖学的な3Dモデルは3D-Doctorソフトウェアを使用して作成した。IPFPの形状は、Geomagicソフトウェアの最適フィットアルゴリズムを使用して評価した。

・座標系の設定:
 座標の埋め込みは、3D-Alignerソフトウェアを使用した。座標系を大腿骨、脛骨、膝蓋骨に埋め込み、各骨に対して、X軸は前方に、Y軸は上方に、Z軸は右方に向けるように設定した。分析には、大腿骨、脛骨、膝蓋骨、IPFP、膝蓋骨腱を含む合計5つの3Dモデルを使用して行った。

・IPFPの動き:
 Geomagicソフトウェアを使用した。IPFPは座標系を使用して動きを測定できる剛体ではないため、前面の9点の平均によってIPFPの前・後位置を測定した。脛骨のYZ平面上に5mm間隔の3x3グリッドを定義し、9つの交差点を得た。これらの交差点は、YとZ座標を変えずにIPFPの前面に投影した。これら9つの投影交差点の座標は平均化され、IPFPの前・後位置を表す平均座標を得た。その後、IPFPの前方移動は、0°のIPFP位置から30°のIPFP位置を引いたものと定義した。

4.結果


 膝蓋腱角度は、30°から0°へと3.67°有意に増加した(p< 0.018)。膝蓋腱表面長さは、30°から0°にかけて4.37mm有意に減少した(p<0.015)。膝蓋骨の動きは、屈曲30°から0°への変化により前方2.71mm、上方15.26mm移動し、内方への移動は1.10mmであった(table 2)。
 また、IPFPの移動または体積変化と他のパラメータとの間には有意な相関が認められた(table 3)。まず、IPFPの前方への動きと膝蓋骨の外側方への移動との間には有意な相関を認めた(r=0.747、p=0.033)。
 さらに、脛骨外旋は以下のパラメータと相関があった ①30°から0°への後上内側へのIPFP体積変化(r=-0.805、p=0.029)、前下内へのIPFPの体積変化(r=0.849 p=0.016)、前下外側へのIPFPの体積変化(r=0.786 p=0.036)。脛骨外側方への移動は、30°から0°への前上内側へのIPFP体積変化と相関していた(r=0.791、p=0.034)。従って、IPFPの体積変化は、膝蓋腱症や膝蓋靱帯炎患者において、屈曲30°から屈曲0°への変化に伴う脛骨および膝蓋骨の動きと関連していた。

 結論として、健常の膝関節IPFPは膝関節伸展時に前内側に動く。IPFPの前内方への移動は、脛骨外旋および膝蓋骨の外側方への移動と関連している。

5.興味深い点

 膝蓋下脂肪体を3Dで体積と動きを測定した研究であり、健常者のデータであはあるものの非常に臨床的に意義のある研究であると考えられる。私もエコーで実際の膝蓋下脂肪体の挙動やドップラーなどで炎症所見を膝OAの患者に測定し、治療の参考にしているが、挙動については、あくまでもエコーで得られるものは、二次元的なものであり、今回の研究のように三次元的に動きを知識として持ち合わせるのは、治療の参考にできる。また、脛骨および膝蓋骨の柔軟性もかなり関連しているということで治療のヒントとなり得るものと思われる。 

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