No12 肩関節包って!?
お疲れ様です、雄輝です。
今回は、前回の『肩関節の安定性に必要なものは?』の中の肩関節包について書いていこうと思います。
⒈肩関節包とは?
・肩関節包とは、肩甲上腕関節を覆っている袋のような組織である。
関節包とは関節全体を包む構造体で、靭帯とともに関節を補強している。関節包は骨膜から延長した結合組織の膜であり外層と内層に分けられる。
外層は密性結合組織からなる繊維膜、内層は疎性結合組織からなる滑膜で、どちらの組織も主要構成成分はコラーゲン繊維となっている。
繊維膜には多くの自由神経終末をはじめ、ルフィニ小体、パチニ小体、ゴルジ腱器官などの機械受容器が分布している。
肩関節包は、関節唇から上腕骨解剖頚の外縁に幅広く付着して、肩甲骨側の付着部は肩甲骨頚部の外周を覆うように位置し、上腕骨側の付着部では解剖頚の周囲を覆うように位置している。
前方の関節包には可視的に肥厚している部分が存在し、ここを関節包靭帯という。この関節包靭帯は上・中・下(前下・後下)関節上腕靭帯に分けられる。この関節包靭帯は弾性力を高め、安定性に寄与している。
・関節包の主な機能としては
関節の安定化
滑液(関節液)の産生
滑液との物質交換
の3つがある。
関節包の1番の役割としては、関節の安定化が最も重要であると考えている。肩関節は最も関節の可動性が大きく、その分安定性としては最も低く脱臼するリスクが最も高いからである。
関節包は関節内圧を高めて陰圧に保つことで、骨頭を関節窩に吸着させて肩関節を安定させる働きを持っている。
・また滑液は、関節の潤滑液として働き、円滑な関節運動に寄与している。骨と骨の間に滑膜の流体膜(クッションのようなイメージ)が形成されるため、摩擦抵抗は上昇せず円滑な関節運動が可能になる。反対に滑液中のヒアルロン酸含有量の低下は、関節運動時などに『関節が擦れる・軋む』ような感覚を覚える。また、関節の不動はヒアルロン酸含有量の低下を招くとも言われている。
もう1つは関節軟骨へ栄養することである。関節軟骨の栄養に必要な低分子物質は滑液によって関節軟骨に供給、代謝産物も滑液によって搬出される。そのため、関節運動が行われないと栄養供給・代謝産物の搬出がされなくなるため、関節の機能に異常が生じてしまう。
⒉肩関節包の特徴
・肩関節包は上腕骨の長軸に対して約40〜45°の角度をもって付着するため、肩甲骨面上で約45°外転位では上方と下方の関節包はそれぞれ伸張度が一定になり、肩関節として自然な内圧状態となる。
そのため45°外転位を基準にして関節包の緊張を予測することが可能である。
45°外転位を基準として、ここからさらに外転することで上方の関節包は弛緩、下方の関節包は伸張して緊張が高まる。この緊張により骨頭の求心性が高まり関節を安定させる。
反対に内転方向に運動(下垂位に)することで、下方の関節包は弛緩、上方の関節包は伸張して緊張が高まる。これも肩関節の安定化に作用する。
痛みなどで肩の挙上や外転動作が困難になることが多い印象で、これにより下方の関節包の伸張性が低下しやすくなり、下方関節包の癒着・瘢痕・短縮といった変化が、骨頭の上方への突き上げを生じさせる。
これにより肩の運動時にインピンジメントが生じやすくなる印象があります。
⒊肩関節包の神経支配
・肩関節包を支配している神経は
肩関節包の後面の支配神経:後方関節包は主に肩甲上神経
肩関節包の上面の支配神経:上方関節包は主に外側前胸神経・筋皮神経
肩関節包の前面の支配神経:前方関節包は主に肩甲下神経
肩関節包の下面の支配神経:下方関節包(腋窩陥凹)は主に腋窩神経
が、それぞれ分布している。
・外側前胸神経は最も表層にある神経で、烏口肩峰靭帯と烏口鎖骨靭帯の間を通過して、ここの部分で2つの小枝に分岐します。1つは烏口肩峰靭帯の下を通って肩峰下滑液包(SAB)を支配し、もう1つは烏口肩峰靭帯に沿って肩鎖関節の前方を支配します。
・肩甲下神経は通常3本あり、最も頭側にある神経は肩甲下筋の上側に入ると2つの筋枝に分かれます。その内の外側の小枝は烏口下滑液包に分布する。
・また、腋窩神経の小枝(小円筋枝)が上腕三頭筋長頭や後方関節包にも分布していると言われ、30%の頻度で腋窩神経が後方関節包に分布しているとの報告もあります。
腋窩神経は関節包や周囲の筋肉などと広い範囲で分布しています。
一般に、
ある一つの感覚神経の分布領域が狭ければ、他の感覚神経がその領域をカバーするという性質がある。
肩関節包後部のでは、肩甲上神経と腋窩神経は互いの分布領域の不足分を代償し合う関係にある。
上記のように、1つの神経で筋肉や関節包、血管などの複数の組織を支配していて、複数の神経で1つの組織を支配していて、お互いを補いながら組織の機能を維持していると思われます。
⒋肩関節包の血管供給
・肩関節の関節包や靭帯などへ栄養供給を行なう血管は主に4つの動脈が存在する。
その4つの動脈は
前上腕回旋動脈
後上腕回旋動脈
肩甲回旋動脈
肩甲上動脈
があり、血液を供給しています。
また腱板筋群にも補助的に血液を供給しているため、腱板断裂や腱板損傷が生じた際には周囲の関節包や靭帯などに影響が出ることも考えられると思います。
※ちなみに後上腕回旋動脈、肩甲回旋動脈、肩甲上神経は関節唇にも血液を供給している。部位により血流量は異なり、後上方や下方の血流は豊富であるのに対して、前上方や前方の血流は乏しい。
そのため、後上方や下方の関節唇損傷と比較して、前上方や前方の関節唇損傷は治癒遅延を引き起こすとされてるそうです。
関節唇と関節包は密接に接しているため、それぞれの損傷はそれぞれの組織に影響するので、それを踏まえて理学療法を行なうようにします。
今回はこれで以上になります。何か誤字脱字、間違いなどありましたら、コメントなどで指摘していただければと思います。
※文中の自分の意見は臨床していての意見になりますので、よろしくお願い致します。
●参考文献・参考書籍
・沖田実:関節可動域制限.三輪書店.2017.
・秋田恵一,二村昭元:運動器臨床解剖学.全日本病院出版会.2020.
・林典雄:運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈 上肢編.運動と医学の出版
社.2017.
・Aszmann OC,et al:Innervation of the human shoulder joint and its
implications for surgery.Clin Orthop Pelat Res.330:202-207,1996.
・Andary, et al:The Vascular Anatomy of the Glenohumeral Capsule and
Ligaments: An Anatomic Study.JBJS 84. 12: 2258-2265,2002.
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