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閉架A-1

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必要あるか不明だけどまとめ 10編を選抜
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#散文詩

雨のち晴れ(Harpyia)

隕石が降ってきたらいいのにって願ってた。本当に呼び出そうとして丘に駆けあがってなけなしの灯を振り回したりもした。羽虫のもがく様。つられて存在しない翼をばたつかせる。数十年ぶりのスコールが来るなんて予報は当然のように外れて。相変わらず僕らは湖に沈んだナイフを探し続けている。気にしないで。それが貴女の身体から奪ってできたものなんて彼らは知るはずもないから。

Darryl

名前のない少年が風を掴もうとして落下する。小麦色の斜面にしたたか打ち付けられて歯車は世界を回しながら扉を頑なに埋めようとしない。君よ、もしも此所に還って来たなら砂漠の底に開く筆の海からひとつ、気に入ったのを舌にくくりつけてきてくれないか。革表紙たちの群れにいざなわれ、そろそろ墓守が思うさまふかどくな文字の上におるがんをばら蒔いていくころあいさ。