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とある秋の話

『私ね、目標があるの』

妻と散歩をしたときのこと。
その日は連日の季節外れの夏日から一転、一気に秋を通り越して冬を感じるような気温。冷たい空気に空も透き通って見えるこの気候も自分は好きだ。

妻『コートにはまだ早くない?』
僕「結構風が冷たいしちょうどいいよ」
コートのポケットを見ると妻がニコッと、手をつないでそのままポケットにもぐりこんできた。

僕「冷たッ!」
妻『でしょ~(笑)!』
冷たい妻の手とは対照的に温かい僕の手を握ってポケットの中で暖を取るのは夫婦の恒例行事。ポケットが大きいこのコートをあえて選んだ読みは正解だったようだ。

そのまま進んでいくと最近まで青々としてた街路樹は秋一色に。落ち葉の絨毯を見ると妻はニヤッと僕の顔を覗き込んで

『ふふ~ん♪』

落ち葉を子供のように踏みしめながら歩きはじめた。サクッサクッと小気味いい音が”秋のbgm”のように聞こえてきて心地よい。これもまた夫婦の恒例行事の一つ。

「今年もその季節かぁ(笑)かわいいね」
ピタっと妻の足が止まり僕を見て

『私ね、目標があるの』

いつになく真面目なトーンに僕も止まって真剣に妻の目を見ると
『おばあちゃんになってもずっと”かわいい”って言われたい』
拍子抜けとはこのこと。思わず笑いながら
「もちろん!」と答える。

「またまた~本当かな?」と僕の顔を覗き込む。
『本当!本当!』
「2回言うのって嘘の時なんだよ(笑)」
『約束します』
「よろしくお願いします」

まるでこどものようなやり取りに二人で笑ってしまう。
寒さからなのか照れているのかわからない妻の頬の赤色が街路樹の紅葉のように見えた。

妻の手をぎゅっと握る
妻もそれに答える

自宅に帰ると妻は『ありがとう』と突然言ってきた。何の事わからずにいると『コート。私の手を温めるためにそれにしたんだよね?ありがと』

こうして今年もまた僕たち夫婦の冬の季節が巡ってきた

10年後の僕へ。”あの時の約束”きちんと守れてますか?

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