心理的安全性が、ダイバーシティ&インクルージョンに果たす役割

心理的安全性が、ダイバーシティ&インクルージョンに果たす役割

心理的安全性の第一人者 ハーバード大学 Amy C. Edmondson教授のPsychology Todayの記事を、ご本人の許可を得て翻訳したものです。はじめに要約をお伝えし、その後翻訳を掲載します。

より深く知りたいという方は、上記記事と併せて、彼女の最新の書籍 「恐れなき組織」8章を参照してみてください。

[21/1/30追記] 翻訳書が2月3日に発売され、この記事は第8章「心理的安全性に関する よくある質問」の中の1節と関係する記事です。



【要約/Executive Summary】

● ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂)、そしてBelonging(所属意識)(3つ合わせてDIBとも)への取り組みへの重要性が認識されてきている。
● 多様性自体は、採用を工夫すれば可能ではあるが、採用された人が包摂されている(自分は組織の中に居る)と感じ、所属していると感じるためには、それだけでは足りない。そのためには、心理的安全性(率直に話せるような環境)が重要である。
● 率直に話せる環境で、多様な意見が発信され、様々な意見を耳にすることを通じ、相互に学ぶことと、多様なアイディア、そして優秀な人材がそういった組織に引き寄せられるという、多様性の利点を活かすことができる。
● 心理的安全性は唯一の解ではないが、ダイバーシティを重視するリーダーであれば、心理的安全性を重視し、人々が所属している意識と、自分らしさを最大限に発揮できる環境を整えることが重要である。


記事の著者のプロフィール(About the Author):

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Amy C. Edmondson(エイミー・C・エドモンドソン ), Ph.D.ハーバード・ビジネススクール ノバルティス教授(リーダーシップ・マネジメント専攻)。リーダーシップ、チームづくり、組織学習の専門家として、世界的に認知されている。
Harvard University, Twitter, LinkedIn

 

【本文/翻訳】

心理的安全性が、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)に果たす役割

心理的安全性なしには「多様性・包摂・所属」をつくるのは、困難となるでしょう (2020年6月22日)

想像してみて下さい。すべての従業員が、純粋に包摂され所属している感覚がある職場を。(訳注:包摂[ほうせつ]/Inclusionとは、多様な従業員、メインストリームでない従業員も含めて、相互に機能している状態と捉えるとよさそうです。「排除」の逆。)

現在、そのような組織で働いている人はほとんどいないでしょう。しかし、公共・民間を問わず、明らかにすべての組織がこれを現実のものとするための取り組みの必要性を認識するようになってきています。 私は20年以上にわたり、ヘルスケア、ハイテク、製薬、日用品業界など、多様(diverse)なスキルや背景を持つ人々が効果的に協力して困難な目標を達成しなければならない職場を研究し、そして「心理的安全性」が彼らの成功にとって、中心的な役割を果たすことを、一貫して研究から見出して来ました。


心理的安全性(Psychological safety) -つまり、人々が、アイデア、質問、懸念、間違いさえも率直に話すことができる、本音を話すことができると信じている環境-は、多様性(ダイバーシティ)の利点を活用するために不可欠であり、それは心理的安全性こそが、包摂(インクルージョン)を現実のものとするからです。要するに、心理的安全性とは、率直に話すことを可能にするもののことです。包摂/インクルージョンは、お互いから学び合うために必要で、そしてお互いに学び合うことは、VUCA(変動が激しく、不確実で複雑、そして曖昧)な世界の中で前に進むために必要不可欠です。心理的安全性に関する広範な学術文献は、チームや組織における学習やパフォーマンスとの強い相関を示しています。

今日では、採用を工夫さえすれば、多様性を生み出すことはできても、インクルージョン(包摂)は自動的には生まれないことがわかっています。 はじめに、採用された人は重要な議論や意思決定の場に呼ばれていないことに気づくかもしれません。もっと言えば、多様な人材を採用したとしても、ほとんどの場合、組織の全員が所属している感覚を感じられるとは限らないでしょう。 特に、組織のトップに自分に似た人が一人もいなければ、自分が所属していると感じにくくなるのは明らかです。

【訳注:日本では、採用を相当に工夫しないと、多様性を米国の労働環境ほどたやすく確保するのは難しそうですよね】


多様性(ダイバーシティ/Diversity)、包摂(インクルージョン/Inclusion)、所属(ビロンギング/Belonging)という3つの用語は、DIBと略されることもあります-したがって、この3つの用語はそれぞれ、達成すべき異なる、相互に関連した、重要な目標を表しています。

3つの目標は、比較的客観的なもの(雇用の多様性)から、非常に主観的なもの(ここに所属している感覚がありますか?)まで多岐にわたります。 インクルージョンは比較的客観的なものと完全に主観的なものの中間に位置し、心理的安全性が高い職場であればあるほど、このインクルージョンが現実として感じられる可能性が高いでしょう。なぜなら、多様な視点をより多く耳にしうるからです。

多様な視点が表現されなければ、多様な視点を耳にすることが無いのは明らかであり、そこに心理的安全性の役割があり(“psychological safety comes in”)ます。簡単に言えば、心理的安全性が低ければ、所属(Belonging)している感覚を感じることが難しいということです。


研究で明らかになっているのは、不確実性が高ければ高いほど、そして与えられた一連の課題に対し、学ぶべきものが多ければ多いほど、課題を達成するために心理的安全性がより不可欠となるということです。これこそが、チームのパフォーマンスを予測する上で、心理的安全性が極めて重要な要素となる理由です。(それが医療、ハイテク領域や、認知・感情的な困難や、不確実性の高い取り組みであっても)。

人種・性別(ジェンダー)性的指向・文化的な遺産に関係なく、人々が自分の居場所がある・所属しているとと感じられるような、公平でエンゲージされた、包摂されている職場を構築することほど、感情的に苦しく、達成するための道筋が不確実である目標は他にありません。したがって、心理的安全性は、そのようなインクルーシブな組織の単なる特徴ではなく、その目標に達するために、必要な変革を設計し実装するためにも必要とされるのです。


多様性と包摂(ダイバーシティ & インクルージョン)の目標達成に関して、成功を計測することはもうひとつの心理的安全性から影響を受けている論点です。組織の目標が客観的というよりむしろ主観的なものである場合(主観的な認識をアセスメントすることで最もよく測定しうることを意味する)、その目標を達成し、測定するためには心理的安全性がより必要になります。例えば「所属している意識(belonging)」という目標を達成できているかどうかは、異なるグループの人々からの広く率直な意見なしには知る術がありません。

より大きな包摂と所属を通じて、多様性の利点を現実のものとするような、「恐れ」がなくインクルーシブな組織を構築することは、官民を問わず今日のリーダー全員にとって、最重要の目標だといえるでしょう。これは、公正さを促進することと同様に、パフォーマンスを向上させることにも当てはまります。

2017年に始まった反ハラスメントの潮流は、女性に対し心理的安全な職場づくりを怠ったことの代償を明らかにしました。今年の人種的不平等の痛烈な衝突は、ダイバーシティとインクルージョンへの注目度を劇的に高めたと同時に、良い変化をもたらすために迅速かつ効果的に行動しようとする、よくできた組織(well-led organizations)の意欲を劇的に高めました。

私は、心理的安全性にひとつに焦点を当てることが、DIB(多様性、包摂、所属意識)を構築するための戦略であることを主張しているわけではありません。組織における心理的安全性の構築は、変化するための効果的で反復的(iterative)な学習指向のアプローチの一つの要素(とはいえ、重要ですが!)に過ぎないのです。 採用、教育、昇進、学習に関連した、相互に関連した目標は、職場環境を変える尽力と共に進めなければなりません。

優れた組織は、多様な人材を、惹きつけ続け・雇用し続け・維持し続けなければなりません。なぜなら、そのような多様な人材は良いアイディアの起源であり、才能ある候補者がそのような組織に引き寄せられていくのだということを、リーダーが理解しているからです。

しかし、リーダーは、採用の多様性だけでは十分ではないことも認識しています。 リーダーは従業員が自分らしさを最大限に発揮できるかどうか、組織内のコミュニティに完全に所属している感覚を持てるかどうかにも気を配らなければなりません。

要するに、ダイバーシティを重視するリーダーは、心理的安全性を重視しなければならないです。それはちょうど、心理的安全性を重視する人はだれでも、DIB(多様性、包摂、所属意識)を重視しなければならないのと同じように。

Reference:
Edmondson, A.C. (2019) The fearless organization: Creating psychological safety for learning, innovation and growth. New York: Wiley; Chapter 8.

[21/1/30追記] 翻訳書が2月3日に発売され、この記事は第8章「心理的安全性に関する よくある質問」の中の1節と関係する記事です。




また、この記事の翻訳者は「心理的安全性」の研究者・実践家として、
書籍『心理的安全性のつくりかた』も発行しています。
実務家向けに、100名以上のビジネスパーソンと共に、実際にチームの心理的安全性を改善してきた、そのプロセスを凝縮してお伝えしています。
ぜひ、お手にとってみてください!


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