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自尊感情(self-esteem)

○自己概念(self-concept)

 人々が自分自身について抱いている構造化された知識・考え。
 自己概念に含まれる評価的側面を自尊感情という。自分を高く評価すると自身感情は高く、低く評価すると自尊感情は低いということになる。

○自己確証理論(self-verification theory)

 一度自分への理解を確立すると、自己概念を確証してくれるような社会的現実を求め、実際にそのような社会的環境を作り出したり、周囲の環境を認知したりすること。

【自尊感情を維持・高揚するための方略】


① セルフ・ハンディキャッピング (self-handicapping)

 成功できるかどうか確信がもてない場合に、自分に不利な条件があることを主張したり、意図的に不利な条件を作り出して否定的な評価を回避しようとする。
 良い成績が取れなくても、その原因を不利な条件に帰属でき、良い成績が取れた場合はその原因を自分の能力の高さに帰属することができ、自尊心の維持・高揚になる。
セルフハンディキャッピングの方略 >
主張的(claimed)・内的⇒テスト不安・対人不安、身体的不調の訴え・抑うつ
主張的(claimed)・外的⇒課題の困難さの主張、劣悪な条件の主張
獲得的(acquired) ・内的⇒薬物・アルコールの摂取、努力の抑制
獲得的(acquired) ・外的⇒不利な条件の選択、困難な目標の選択


② 栄光浴(basking in reflected glory; BIRGing)

 高い評価を受けている個人ないし集団と何らかの結びつきがあることを他者に強調することで、自尊感情を高めようとする方略。
 反対に、低い評価を受けている他者との結びつきを避けようとする傾向をCORFing (cutting-off-reflected-failure) といい、これらの傾向は一時的に自尊心が低下しているときに生じやすい。

③ 下方比較(downward comparison)

 自分が何らかの脅威にさらされた場合、自分よりもさらに悪い状態の他者と比較することで (1) 感情状態の改善、 (2) 楽観主義に導く、(3)自尊心の向上 、(4)同じ境遇の人を認識することで逸脱を感じなくなる、などの効果を得ようとする。
 能力に関しては、自分よりも上位の他者と比較する上方比較(upward comparison) を行うことによって自己を向上させようとするが、自分の至らなさを認識することにもなるため、比較対象と同じ水準に到達できると考える場合のみ行われる。

4) 自己評価維持モデル(self-evaluation maintenance; SEM)

 テッサー(Tesser、A.)は、自己評価レベルが他者の遂行(成績、出来具合)、 心理的距離(年齡、経歴、出身地、親密さ)、自己関連性の3要因によって決定されると提唱した。
 自尊感情を維持・高揚するため比較過程と反映過程 (栄光浴過程)のいずれが生じるかは、自己関連性の程度によって変動する。
(1)比較過程
 自己関連性が高く、他者が自分より優れているとき、心理的距離が近ければ、 自己評価は脅威にさらされ嫉妬やフラストレーションを味わう。
(2)反映過程
 自己関連性が低く、他者が自分より優れているとき、心理的距離が近ければ、 他者の成功を誇る気持ちが強くなり、他者の栄光を浴びることで自己評価が引き上げられる。

 親しい他者が素晴らしいことを成し遂げたという事実は、自己に強く関連するか否かによって、正反対の効果を生み出す。
 自己評価維持モデルは、自分以外の人の出来事をどのように理解するかが、自分の感情や認知、行動に変化をもたらすことを示唆する。

⑤ ポジティブ幻想(positive illusion)

 人は自分自身を肯定的方向から把握し、自分の統制力を実際以上に大きいと感じ、 将来に対して楽観的に考える傾向。
 一般に、自分は他者より長所がたくさんあり、そのような自分が働きかければよい結果が生まれ、将来も順調に行くと考える。
 自分に都合のよいことを選択的に記憶にとどめ、思い出したり、実際よりもさらによいものとして引き出す傾向も見られる。

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