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精神保健福祉士におけるアセスメントとは何か

どうも、あきです!

今回はこれまで連番で話を続けていた個人事業主として働き始めた経験談から一個飛び越えて、アセスメントの持論をお話してみたいと思います。

あくまで「あき」が現場で実践をしている上で気にしていること、注意していることをまとめてみましたので、ご参考にしていただけたり、お叱りいただけたりしてもらえるとうれしいです!

アセスメントとは何なのか

さて、本題から入りたいと思いますが、アセスメントとは何でしょうか。

この言葉は「見立て」と呼ばれることもありますが、「見立てる」の辞書的な意味は「見て選定したりすること」とあります。
日常会話で、たとえば洋服などで「どの服がいいか見立てて」と言われたことがある人もいるかもしれません。普段使いできる言葉の一つかもしれません。
では元となっている英語のAssessmentの辞書的な意味は「(人物を含めた価値の)評価・査定・判断」などといった意味になります。
人事考査や金額の査定などにも使われたりするようです。

では、私たち福祉専者が使うアセスメントとはどのようなものでしょうか。

結論とは、あくまで持論になりますが「その時点におけるクライアントの状態像に対する一旦の”解釈”」と言えると思います。
解釈ということは、アセスメントは情報ではありません。
また、解釈ということは、”決定”ではありません。あくまでその時点におけるその人の状態像や全体の環境像を切り取って「私はこう考える」という主張であると言えると思います。

おそらく皆さんが普段、仕事で使っているアセスメントシートには、氏名・生年月日・住所・ADL・家族構成や障害の程度など、様々な情報を書く欄があるのではないでしょうか。
こうした情報を基にして私たちは無意識的にその人の解釈を行います。

例えば、情報とは以下のことを言います。
・Aさんは最近、歩行時にふらついてけがをすることがあった。
・Bさんは統合失調症を患っておりお薬を処方されているが、夕飯の後は満腹感から眠ってしまうことが多く飲み忘れが多い
・Cさんの家族はお子さんについて「落ち着きがなくて手の付けられない子」と話している。

一方で、解釈とは以下のように表現できると思います。
・Aさんは数か月前に足を怪我して自宅閉居して過ごす生活が続いていた為、筋力の衰えから歩行が困難になっている可能性がある。
・Bさんの話を聞いたところ、不眠が数年ほど続いており、夕飯を食べてお腹がいっぱいになったタイミングは不思議と眠るのに最適なタイミングであると話していることがわかった。夕食後の薬の飲み忘れは意図的なものではなく、本人の生活リズムの中で適していないタイミングである可能性がある。
・Cさんの家族は落ち着きがなく手を付けられないと話しているが、実際に学校生活でも座っていられない・集中が持続せずほかの生徒にもちょっかいをかけることがあることがわかった。一方で、成績は優秀で自宅学習では父に教わりながら一つ上の学年の問題も解いていることがわかった。こうしたことからは、本人の落ち着きのなさの背景にはADHD等の発達障害の影響もある可能性が考えられる。

解釈には後出しの情報がたくさん出ていてビックリされたことと思います。
なぜ、解釈の際には後出し情報がたくさん出たのかについては、次の項目で説明をします。

アセスメントとは情報を解釈することである

アセスメントはあくまで「解釈」であり、解釈とは「仮説」と言い換えることができると思います。
現場で実践をされている方はご存知のことと思いますが、その人がどういう人か理解しようとするためには、当たり前ですが情報が必要となります。(インテークシートが整理された情報の良い例だと思います)

しかし、シートに情報を埋めたからといって、アセスメントであるとは言えません。
専門家として私たちがする「解釈(アセスメント)」とは、事実として聞き取った情報を基に「こうではないかと考えられる」と専門家である私たちが予測し、見立てたところまで行って、初めてアセスメントが行われたと言えると思います。

よくあるアセスメントの誤解に、情報を集めたことがアセスメントとしている、ということがあります。
情報はあくまで情報であり、膨大にある情報の中から専門家として必要なものを取捨選択し、その時点におけるその人のことを私たちが解釈することでアセスメントは行われます。

その行為を言葉にするとしたら、例えばこんな感じになると思います。

Aさんは~と言っている。Bさんは~と言っている。本人は~と言っている。生活場面では~という状態がある。(情報)
こうしたことからは、本人は~の時には~といったことをする傾向がある可能性があり、こうした傾向は幼少期から続いていることを考えると、本人には~の傾向のある可能性のあることが考えられる。(解釈)

情報を収集すること、取捨選択すること、どんな情報が必要になるか想像力を膨らませること、そういったことに私たちの技量が問われているようにも思います。

アセスメントのよくある誤謬としては、
・情報の羅列になっており解釈が含まれていない
・論理が飛躍していて、情報⇒解釈に論理的結びつきがない
といったことがあります。

現場で実践をされているからこそ経験から結び付けられる、事実以上の直感はたくさんあると思いますが、アセスメントに落とし込む時には根拠が必要となります。
また、「こうだ!」という思い込みや前提を基に情報を集めることは、決め打ちになってしまい、結果として状態像を正確に把握できない可能性があります。
その意味で、私たちは自分たちが感じた直感を絶えず検証しつつ、新たな見立ての可能性がないか、想像力を膨らませる必要があります。
(Aさんが~と言っていたのは、実は数年前に亡くなった母親の遺言が影響していた…、Bさんが~の場面で問題行動を起こす背景には過去に同様の状況の時に虐待的な対応をされていたことがあった可能性もある…、など様々な可能性を考慮していく必要があると思います)

解釈するためには、「仮説と検証」の繰り返しが必要になる

さて、アセスメントは情報の解釈であることを伝えてきたかと思いますが、私たちは支援をするなかで常に新たなその人と出会うことがあり得ます。
・この人はこういう時にはこういう反応をすると思っていたけど、どうも違う場面もあるらしい。
・こういう情報から、この人はこういう傾向があると思っていたけど違ったかもしれない。

アセスメントは「結論」ではない為、ある一時点で解釈を行うものですが、その解釈が正しいものであるのかは普段の支援の中で検証を繰り返していく必要があります。
その為、アセスメントは以下の流れをたどることが感がられます。

出会い⇒情報収集⇒アセスメント⇒プランニング⇒介入⇒アセスメントの妥当性の検証(情報収集)⇒再アセスメント⇒再プランニング

いわゆるPDCAサイクルで考えられるかと思いますが、唯一気をつけなければいけないことは、PDCAを準繰りに行うのではなく、アセスメントをしながら常に検証を行うこと、介入を行いながら常に検証を行うこと、その時に応じた本人にとってベストインタレスト(最善の利益)を考えながら介入を行うこと、が重要であると思います。

その意味で、私たちは常に仮説検証をしながら、そのプランや介入が良いものであるのか、(パターナリスティックなタイミングがあったとしても)ベストインタレストを追求できているか、そして、パターナリスティックになるタイミングがありえたとしてもそれを自覚的に支援できているか、は重要になってくると思います。

少し話がずれましたが、アセスメントという仮説や解釈には常に検証という作業が必要になることは、繰り返し伝えていきたいと思います。

アセスメントをするための言語/アセスメントの検証方法

さて、アセスメントの流れを前項で説明をしましたが、ここではより詳細にアセスメントをする上で必要な情報の整理の仕方を説明したいと思います。
アセスメントを説明する時には、「アセスメント⇒根拠となる情報」、あるいは「根拠となる情報⇒根拠となる情報」どちらであっても大丈夫です。

しかし、いずれにしてもアセスメントには根拠と論理的な文章更生となります。
ここでは論理的に表現をするための方法として代表的な演繹法と帰納法の二つをご紹介します。

演繹法(えんえきほう)とは、一般的な事象や前提から徐々に結論に結びつけるような方法です。
例えば、以下のような表現方法は演繹的な表現方法と言えると思います。
・Aさんは統合失調症を患っています。この病気は一般的には服薬を行うことで症状が緩和することが知られていますが、Aさんの場合、夕飯時に服薬を忘れがちで、そうした時には被害妄想的な症状が出現しやすいことがわかっています。Aさんが~という行為をした二週間前から服薬が不安定になっていることがわかっており、今回の行動も服薬の乱れから生じている可能性が高いことが考えられまます。

ここでは、
①統合失調症を患っている(大前提)
②服薬を行うと安定するが、怠ると不安定になりやすい
③Aさんも当時、服薬が不規則になっていた。
④こうした前提から、~という行動が生じた可能性がある。
といった論理展開がなされているかと思います。

帰納法というのは、複数の事象から共通される項目を見つけ出す方法を言います。
例えば、以下のような表現方法は帰納的な表現方法と言えると思います。
・Aさんは10代の頃から統合失調症と診断を受けており、服薬をしていた時には安定をしていたが、学業や仕事等の影響によって生活リズムが乱れると服薬も乱れやすく、そうした時に~と言う行為を起こすことが本人や周囲の話からわかった。
今回の行動もの直前にも職場の部署移動や仕事内容の変更があり、夜眠れない等の生活リズムの乱れている状態が続いていた。そうしたなか、数週間前から服薬が不安定になり、同時期から情緒的に不安定になったり、神経過敏になって電車に乗るのが怖いといった症状が出るようになった。
こうしたことからは、統合失調症を患っている本人が生活環境の変化を原因として服薬がまばらになり、その結果、神経過敏や不眠といった精神症状が出るようになったことが考えられる。

ここでは、
①Aさんは10代から病気の治療をしていたこと
②幼い頃から生活の変化に応じて服薬のリズムも乱れやすいこと
③服薬の乱れが生じると精神症状が出やすいこと
④今回も環境の変化や服薬の乱れが生じていること
⑤以上のことから、本人が話していた親権過敏や不眠といった症状は環境的なストレスや服薬の乱れから生じている可能性があることが考えられる
といった論理展開がなされていると思います。

どちらの論法でも、「~ということからは」、と結んでいることがわかると思いますが、事実や情報を解釈に結びつける表現としてよく使われる表現の一つです。
こうした表現は、A=B、B=Cと事実とアセスメントを=で結びつける役割があると思います。

逆に言うと、アセスメントは必ず「情報」から行われ、情報とアセスメントが一致していない時には論理の飛躍が起きていたり、「言葉にならない何か」が介在している可能性が考えられます。
実践においては、そういった支援者の第六感的な要素は非常に重要なものと思います。

ですが、あくまでアセスメントという言語化のプロセスにおいては、その第六感も言語化して説明される必要があります。
なぜなら、その言葉として表現されたものは他の専門職者や本人・家族にも共有されるものだからです。

改めてアセスメントとは何なのか

ここで、改めてアセスメントとは何なのか、あきなりの整理をしてみたいと思います。

①アセスメントの前提として、情報が必要となる
②無数の情報から解釈を導きだすことがアセスメントという行為
③アセスメントは絶えず「本当にそうなの?」という観点から検証される必要があること
④アセスメントは文章化されるものであり、論理の飛躍がないかチェックが可能であり、チェックをする必要があるものであること
(~という情報があった。~という情報があった。こうしたことからは、~であると考えられる、等)
⑤アセスメントは本人・家族・他の専門職者にも共有されるものであり、適切な言葉で表現されていくことが重要である

実際に福祉専門職として働くなかで、アセスメントを厳密に言語化する場面は非常に少ないと思います。
ですが、多職種で連携をする時や、福祉・医療専門職者以外の人と情報を共有する時には重要なものであり、なおかつ、ご本人様にとって理解しやすい内容であることが重要でもあると思います。
そのためにも、考えていることを言葉にしていくこと、そしてそれを検証していくこと、は私たちの必須のスキルでもあると思います。

アセスメントに関する著書は数多く出版されていますが、その本であっても情報と解釈がごっちゃになっている者も多い為、今回はあきなりにアセスメントについて考えていることをノートにしてまとめてみました。

特に、演繹法・帰納法、~ということからは、といった言語表現は私たちが専門教育の中で受けてこなかった事だと思うので、この機会にぜひ、気になった方は調べて深堀してみていただけたらと思います。

また、いや、違う!と思った方はぜひコメントでお気持ちを教えていただけると幸いです!
日々の支援がより良いものになるように、私も自己研鑽を続けていけたらと思っております。

長くなりましたので今日はここまでにします。

今回はコラム的に投稿しましたが、次回はまた元の開業してみた感想シリーズに戻ってみようと思います。
引き続き、興味のある方はご閲覧いただけますと幸いです!

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