見出し画像

「裁かるるジャンヌ」観ました


作品について

 1928年に公開されたフランスのサイレント映画です(監督はデンマークのC.Th.ドライヤー先生)。世界の映画史に残る最高傑作のひとつとして知られています。

 題名から察しが付くと思いますが、有名な仏の英雄であり聖人のジャンヌ・ダルクが、敵イングランドに異端審問され、処刑されるまでを描いています。
 聖女ジャンヌ・ダルクを、一人の人間という立場で描いています。裁判の脚本は古文書を参考にして書かれたというほどの徹底ぶりです。

あらすじ

 まず背景知識として。舞台は15世紀、イギリスとフランスの間の百年戦争。「神の命を受けた」として少女ジャンヌが従軍、数々の戦いで勝利をおさめます。しかしその後捕虜として捕らえられ、イングランド王に引き渡されます。ジャンヌは異端審問にかけられ、火刑に処せられて命を落とします。ジャンヌ19歳の時のことでした。
 
 ジャンヌは1920年に列聖されています。映画が公開されるわずか8年前のことです。

 映画では、異端審問から火刑までの期間を描いています。
 
 敵国イングランドに引き渡されたジャンヌは、異端審問にかけられ、拷問にあいます。異端審問官たちはジャンヌを誘導し、彼女に「自分が見たのは神ではなく悪魔だ」「自分は悪魔の手下だ」などと認める署名をさせようとします。
 心身ともに衰弱し、一度は命乞いをして終身刑となります。しかし、信仰を貫き自ら火刑を選びました。彼女を支持する民衆に囲まれながらも、ジャンヌは磔にされ、生きたまま火にあぶられます。

消えたオリジナル版??本作の辿った運命やいかに

 今の時代に本作のオリジナル版を観られるのはとてもラッキーです。なぜかって?実は本作は検閲され、オリジナル版が消失したことがあるから!

 「裁かるるジャンヌ」はまず1928年4月にデンマークで公開され、同年10月にフランスでも公開されました。

 当時はまだまだ教会の権力が強かった時代。教会の権威を批判した本作が当然そのまま受け入れられるわけはありません。不都合な箇所がカットされました。オリジナルを見ることができたのは、一部の映画評論家たちだけ。

 さらに、同年12月、オリジナル版を保管していた会社の倉庫が火災で焼失します(なんか映画の内容を思わせるな・・・涙)。

 その後、合法・違法様々な形でコピーが普及していき、映画自体は世界中に広がっていきました。

 最終的にそれらしいものが1981年にノルウェーで発見され、1984年にオリジナルの第一版であることが確認されます。消失から実に半世紀の時が流れ、ようやくオリジナル版を再び見られるようになりました。

自分の感想

 とにかくすごかった。何がすごいかというと、登場人物の心情描写が卓越していた。
 現代は技術がある程度発達しているので、感情を言葉で伝えることができますが、当時は何しろサイレント映画。そんなこともあって、俳優さんの表情がとても豊かなんですね。
 ルネ・ファルコネッティ演じるジャンヌ・ダルクは、なんというか、眼や表情だけで、絶望、わずかな希望、悲しみ、信仰といったすべてを表現していて、見ているこちらも言葉を失ってしまうくらいです。
 それから、本作の特徴ともいえるカメラワークですね。極端なクローズアップのおかげで、緊迫した状況や、登場人物の必死さが胸に迫ってきます。
 処刑直前の「鳥」の描写も不気味さが表れていて本当に素晴らしかった(ヒッチコックの「鳥」の観すぎかも・・・ありゃりゃw)

主演のR. J. ファルコネッティの肖像画
(ポーラ美術館のサイトからお借りしました)


この記事が参加している募集

#映画感想文

68,930件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?