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グループワークの分類と、設計時における効果理解の重要性

 ご覧いただきありがとうございます。人事採用担当の戯言です。

 みなさん。就活や研修では事あるごとにグループワークをやらされますよね。何故こんな面倒くさいことをやっているか、というかやらされているかを考えたことはあるでしょうか。実はあのグループワークもきちんと効果まで設計して作られている(はずな)んです。でも経験ありませんか。「このワーク意味あんのか?何が学べたんだ?」ってやつ。それはきっと誰かが雑に作ったワークです。
 ということで今日はグループワーク設計について記事にしたいと思います。日ごろ何となくグループワークをやらされている就活生・トレーニーと、何となくグループワークを作っている人事部員に向けての記事です。(ちなみにこの記事は何かの書籍や理論に基づいて書いているわけではなく、僕の勝手な持論ですのでご了承ください。あと長いです。)
 それではどうぞ!

グループワークの効果

 グループワークの効果には主に以下の3点があります。

1.学びの定着
 アウトプットすることで生じる効果です。何かを学習する際、一方的なレクチャーを聞いているだけでは頭に残りません。頭と手を使うことでやっと定着します。学校の授業が良い例です。これを「深さの効果」とします。特にインターンシップではこの効果に焦点を当てます。

2.新たな価値観への気付き
 他者と関わることで生じる効果です。一人で出した結論は自分の価値観に根差したものに留まります。他者と意見を交わすことで新たな考え方を知り、自分の中に新たな価値観が芽生えます。これを「広がりの効果」とします。社内研修などはこの効果に主眼が置かれます。

3.人物像の見極め
 グループワークを見ている第三者視点での効果です。その人物の人となりは他者との関わりの中でよく見えてきます。その様子を観察し評価として使います。これを「見極めの効果」とします。就活イベントを考えれば良いと思います。

 以上3つの「深さ」「広がり」「見極め」がグループワークの効果です。他にも参加者を次のアクションにつなげる「動機付けの効果」もありますが、これは副次的な効果として今回は扱いません。この効果を高めるにはグループワークの内容というよりも見せ方の方が効くので、今回の記事の主題とズレると判断したためです。
 したがって良いグループワークとは、使う場面や目的に合わせて、引き出したい効果がきちんと現れるように設計されているものだと言えます。突き詰めて言えば、もしこれらの効果が全てベストミックスされたものがあれば最高のグループワークと言えます。

グループワークの分類

 世の中にはさまざまなグループワークがありますが、分類すると以下の3つのタイプになると考えます。それぞれどのような特徴があり、どんな効果が現れやすいか述べていきます。

1.テーマ設定型
 世の中にある大多数のグループワークがこれにあたります。上位者(人事、講師、面接官など)からあるテーマとルールを渡され、それに対して何らかの解を考えるというものです。一番分かりやすいのが採用面接のグループディスカッションです。また、レクチャーや講習の中に織り込む形で使われることも多いです。よくありますよね。「〇〇という議題で近くの人と意見交換しましょう!」みたいなやつです。15〜30分程度の短時間で行われることが多いです。ゲームで例えるとポケモンやトレーディングカードゲームのようなものです。あるテーマとルールで縛り、短時間で一試合が行われるという共通点があります。
 ワークの出来は参加者次第なところがあり、メンバーの力量によって変化します。ルールで縛って議論を行うという特性から論理性の高い「秀才脳」の人間に有利と言えます。論理的整合性のあることが良しとされるため、ほとんどの場合各グループでアウトプットに差が出ません。それどころかテーマ次第ではほぼ同じ解に行き着くこともあります。
 ちなみに作る側からすると最も簡単に設計できるお手頃なワークです。
 効果としては「見極め」が最も高いですが、ここで見極められるのは参加者の論理性の高さと表面的なコミュニケーション能力(=コミュニケーションの癖)のみです。もし採用面接などで見極めに使いたい場合は、どんなテーマにしても大した違いはありません。「広がり」はあまり見られず「深さ」はほとんどありません。(このグループワークで知識が定着することはほぼありません)

2.無茶振り型
 この型は、参加者にテーマを与えるところは上記のテーマ設定型と同様ですが、テーマが漠然としておりルール無用であることが異なります。何でもありで長時間かけてやることが多いのが特徴です。例えば「新規事業の考案」であったり「新たなアプリケーションの開発」といったもの。この型は月や年単位の長期インターンシップで使われることが多いです。ゲームで例えるとRPGツクールやマインクラフトなどの「何もなく、自由だけがある」という感じです。時間的にも空間的にも制約が緩いのが共通しています。
 これもやはりワークの出来は参加者の能力次第で、テーマ設定型よりさらにメンバーの力量が重要になります。ルール無用であるためにアイデアの戦いになりがちで、発想力を武器にする「天才脳」の人物が有利です。逆に発想に乏しいチームは平凡な結論に至りやすいです。ただ、この型の良い点は「誰もが参加した気になれる」ところです。このワークは長時間かけて行うためチームプレーが必要になります(というか極端にコミュニケーションが取れないグループ以外はチームで動き始めます)。したがって、たとえ発想力がなくとも「リーダーシップをとれる者」「事務処理能力に長けた者」「場を和ませる者」など、様々な力を持った人間が力を発揮できます。
 設計の際の注意点として、テーマ設定は簡単であるものの実施条件が非常に厳しいという特徴があります。1つは講師やファシリテーターの質が問われるということです。参加者を誤った方向に導くと途端に崩壊するのがこのワークです。参加者からの質問や疑問にその道のプロとして回答できる人材でなければ講師として務まりません。時には付きっきりで指導するタイミングも必要になるので工数も非常にかかります。2点目は参加者のアウトプットに対して適切なフィードバックを行わなければならないという点です。つまり参加者の案を正当に評価できる仕組みが必要ということです。雑な評価をすると満足度が落ちたり学びの質が下がったりします。例えば「アイデアが面白い」という評価は、「プロが考えるものと比べても面白い」なのか「素人にしては面白い」なのかで受け取り方は変わりますし、「詰めが甘い」という評価も「アイデアは良いけどマネタイズできていない」なのか「アイデア自体が拙い」なのか、明確な表現が求められます。また、参加者に与えた時間と情報に対して適切な量・質のフィードバックをする必要があります。与えた時間と情報が少ないにもかかわらずプロレベルのフィードバックをすれば、学びの質は高まるかもしれませんが満足度は低くなります。逆に時間と情報をしっかり与えたのにお子ちゃまレベルのフィードバックをすれば、学びの質も満足度も両方低くなります。誰だって最後が雑だと「ここまでやらせておいてなんだそりゃ」となりますよね。時間的な損失が大きいが故に最後の評価に気をつけなければなりません。
 効果としては、(条件をきちんと揃えさえすれば)「深さ」、「広がり」、「見極め」の全てが高くなります。良くも悪くもやらせる側とやる側の能力に左右される型と言えます。

3.世界観構築型
 近年の採用イベントや3〜5daysくらいのワークショップ型インターンシップに多い型です。実際の仕事の場面を切り取り、ロールプレイングを通して職種を理解していくというものです。その業種および職種の働き方を理解してもらう目的で使われることが多いため、学生向けに新卒採用の現場で多く取り入れられています。ゲームで例えるとスカイリム やGTA5などのオープンワールド系に近いです。世界観と主人公のざっくりとした目的だけが提示され、プロセスは各自に委ねられます。自分が世界に入り込むことで初めて楽しさが分かってくるという共通点があります。
 上述の2つに比べると参加者の能力に左右されにくく、むしろワークの出来はその世界観の中に参加者をどれだけ誘えるかが鍵になってきます。参加者を一度のめり込ませることができれば非常に満足度が高くなる傾向にあります。世界観に入り込むことが重要であるため、共感性の高い「凡人脳」の人が有利です。(というか楽しさを見出せると言った方が正しいかもしれません。)
 設計の際の注意点として2つあります。1つめは世界観のリアリティです。オープンワールドのゲームを想像していただきたいのですが、そこで生きている人や会話、物理原則に至るまで、素晴らしい作品はすべてリアリティが突き詰められています。「こういう行動をしたときにそうはならんやろ」という現実に引き戻される感覚はやる気の低下につながります。したがって、この型では場面設定、ロールプレイングでの会話、生じる結果について全てリアルな状態を作り出す必要があります。「感情のアップダウンを敢えて作り世界から引き離さない」というような工夫も必要になります。2つめはグルーピングの重要性です。あまりにも論理性の高い秀才脳の軍団を作ってはいけません。論理性や再現性の高い人物は往々にして共感性が低い傾向にあります(北野唯我著『天才を殺す凡人』読んでみてください)。いくら設計者がリアルな世界観を作ったとしても参加者がその世界に入り込もうという意識を持てなければ機能しないのがこの型です。「これくらいのアウトプットを出せば良いんでしょ」と思った瞬間に、参加者は「世界の中の人」ではなく「外側のプレーヤー本人」に戻ってしまいます。もし可能であれば事前に性格検査を実施してグルーピングするか、簡単なアイスブレイク用のワークで人物像を見てからグルーピングするかができればベストです。
 効果としては「深さ」や「見極め」が非常に高いです。一方で、世界観に入り込むためやや「広がり」には欠ける印象です。ただ一度世界に入れてしまえさえすれば安定して効果を得られることが魅力です。

まとめ

【グループワークの3つの効果】
1.学びの定着=「深さ」の効果
2.新たな価値観への気付き=「広さ」の効果
3.人物像の見極め=「見極め」の効果

【グループワークの3類型】
1.テーマ設定型
・ルールで縛る。「秀才脳」に有利。
・ゲームに例えるとポケモン。
・設計は簡単。テーマを変えてもアウトプットはほとんど変化しないので、テーマ設定は何でも良い。
・「見極め」の効果があるが、論理性とコミュニケーションの癖がわかる程度。「広がり」と「深さ」の効果はほぼ無し。

2.無茶振り型
・ルール無用。「天才脳」に有利。
・ゲームに例えるとマインクラフト。
・設計時は運営側の条件にケアが必要。講師の力量が問われる。
・効果は条件さえ整えば「深さ」「広がり」「見極め」の全てが高水準だが、運営の力量や参加者の質など変数が多くムラがある。

3.世界観構築型
・世界観に入り込ませる。「凡人脳」に有利。
・ゲームに例えるとオープンワールド。
・設計時はいかに世界に入り込ませるかがポイント。世界観にはリアリティが必要。論理性の高いタイプは世界に入り込みにくいので同じグループに固めないこと。
・効果はやや「広がり」には欠けるものの、「深さ」と「見極め」が非常に高い。一度世界に入れてしまえばムラがなく安定して効果を得られる。

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