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0351 - 新しい通貨の話(続きの続き)

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これまた前回の続き。

仮想通貨をグローバルに普及させるために乗り越えなければならない大きな壁として「法律」と「相場(価値)の安定」という2つを挙げた。

PayPalの「仮想通貨で支払いOK」の話については、既にある仮想通貨ではなく独自の通貨を用意するなどして「相場(価値)の安定」という状況さえ作れればきっと世界中に普及するだろう。「法律」という壁も、リアル通貨とポイント交換するような仕組みにすれば、現状を特に変える必要も出てこないように思う。

このように大胆な仕掛けができるのは、既に世界中に浸透している巨大プラットフォームだからこそ。じゃあ、PayPalレベルの規模感を抱えていなければ仮想通貨を活用することは不可能なのかというと、そうでもない。

「法律」と「相場(価値)の安定」の両課題をクリアして仮想通貨を普及させるためには「規模を小さくする」という手もある。いわゆる「地域通貨」としての活用だ。

前回でもリンクを貼ったこの記事の冒頭でも述べられているように、既に日本でも200以上の地域通貨が存在し、その多くはQRコードで処理するデジタル型だ。

新型コロナの影響で「非接触型」としてキャッシュレス決済が一気に加速している印象。中でも、導入のしやすさや決済手数料の低さなどから「PayPay」を中心としたQRコード決済できる場所が急増している。自分の済む静岡県袋井市でも、市役所の窓口での支払いがPayPayに対応していたりする。

気軽に導入できて気軽に使えるというのは重要なポイントなので、QRコードを活用した地域通貨の仕組みが一気に増えることは自然な流れだと思う。ただ自分の中では、この「QRコード決済」という仕組みは長くは続かないように感じている。理由は、知れば知るほどセキュリティ面で難ある仕組みだから。(少額決済に留めるのであれば何とかなるかもだが)

QRコード決済は、音楽の分野で例えるとMDのような存在だと思っている。それまでに無かった手軽さ&便利さで一時期グンと普及するも、すぐ後に「PCによるデジタルコピー」や「ダウンロード・ストリーミング」といった更に便利な仕組みに完全に市民権を奪われるようなイメージ。

個人的には、地域通貨として長く活用するためには、やはり「デジタルデータの複製や改竄を防ぐ」という特徴を持ったブロックチェーンの仕組みを使った仮想通貨やポイントサービスという形式が必要になると予想している。

・・・と、偉そうに語っていたところ、こんな記事を見つけて「おお!」となっている。

福島県の会津は、数年前より「会津ラボ」というベンチャー企業を中心に、スマートシティー化に向けた実証実験が盛んな地域。記事の中にある、この部分に要注目。

会津大学の食堂では学生がQRコードにスマホをかざして決済をする。学生が支払うのはブロックチェーンを活用した日本初のデジタル地域通貨「Byacco」だ。7月から学内での本格運用がスタートした。従来のキャッシュレス決済と異なり、客が店舗で支払った後、店側はそのまま仕入れなど他の用途へ使用する「転々流通」が可能。今後は大学外への普及も目指す。

自分の中でQRコード決済の大きな懸念点となっているセキュリティ面の脆弱さは「ブロックチェーンの活用」によって見事に払拭されている。

QRによる手軽さとブロックチェーンによる安全性を兼ね備え、他の用途へ使用する「転々流通」が可能なデジタル地域通貨「Byacco」。自分が思い描く「現時点での」理想的な地域通貨のカタチはまさにコレだ。大袈裟ではなく、真面目な話、これからの地域経済や地域活性という「主に地方が抱える問題の解決策」になる大きな指針となる存在だと感じる。

*「現時点での」と書いたのは、QRコード決済はスマホなどのデバイス有りきの仕組みだから。個人的には、顔認証や静脈認証など「生体認証」の分野が普及したらQRコードで決済する時代は終わると予想している。といいつつ、生体認証はQRコードよりも現時点では「認証させる機器の導入のハードルが高い」ので、その辺りとのバランスがどうなっていくのか次第ではあるが。

ここで少し訂正させてほしい。自分の主張は「QRコード決済は長くは続かない」ではなく「現在の仕組みのQRコード決済はセキュリティに難があるので長くは続かない」が正しい。Byaccoのように「QRコード」という支払い形式自体は、導入する側にも使う側にも「手軽」という理由で今後も続いていくかもしれない。

地域を限定させたデジタル地域通貨が普及すれば、法律や国の通貨などと切り離した「ローカルルール」による運用で地域活性させることも可能になるだろう。それによって、高齢者、障がい者、子育て世代、また地方には申告な交通弱者など、必要な人たちに合わせて「この人たちにはこのサービスを手厚く」といった予算配分もコントロールしやすくなるように思う。

引き続き、デジタルで発行される「新しい通貨」の動きに注目していきたい。

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