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連想エッセイ/#紅茶のある風景/世界の終わり

世界の終わりは そこで見てるよと
紅茶飲み干して 君は静かに待つ
パンを焼きながら 待ち焦がれている
やってくる時を 待ち焦がれている

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「世界の終わり」は、thee michelle gun elephantのデビュー曲で、TMGEは「世界の終わり」と共に始まり、「世界の終わり」と共に去っていった。つまり、ラストライブの最後の演奏曲が「世界の終わり」だった。

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チバさんの歌詞は「意味はないけれど情景はある」歌詞だと思っているので、歌詞に込められたら意味を解釈しようとするのは野暮かなと思っている。

とにかくそこには世界の終わりがあって、「君」は紅茶を飲み干してその世界の終わりというのが来るのを待っている。例えば、そこはどこにでもあるような、さほど広くない二人暮らしのダイニングキッチンで、「君」が買ってきた小物だけがすこし小洒落ている。そんな情景だけがそこにある。

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「世界の終わり」と言えば、「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を思い出す。

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「世界の終り」は壁に囲まれた街で、「僕」は街に入るときに影を切り離されてしまう。
「街」の人は「僕」に優しくしてくれるがどこか空虚である。

「街」の冬はとても長く厳しい。小説中にそんな描写があったかは覚えてないけれど、「僕」はきっと図書館の女の子と温かいミルクティーで暖を取ることもあっただろう。陶器のカップに注がれる紅茶。ミルクを少し入れて、すぐに飲まずに、両手でカップを持つ。となりには暖炉があって、パチパチと薪の爆ぜる音が聞こえる。そんな感じのイメージだ。

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寒い中、温かい飲み物を両手で持つ安堵感。

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コートを着込んで、マフラーを巻いて、それでも身体が芯から冷えてしまったときに見つけた自動販売機はそれはもう現代のオアシスで、少し甘い紅茶があると思わずそれを選ぶ。エスプレッソティーみたいな、濃いめのがあったら最高だ。

ガコン、と音がして、取り出し口から紅茶を取り出す。

「先に飲んで」
「ありがと」

ほっと一息つくと、息もより白くなる。喉をつたって、お腹があたたまるのがわかる。少し温めすぎているくらいのがちょうどいい。
両手でペットボトルを持って懐炉みたいに暖を取る。温めすぎたペットボトルは思いのほか熱くて、袖に手を入れて持つ。

かわりばんこに飲んで、少しずつ残りが減っていくと、だんだん冷めるのが早くなってくる。冷める前にと急いで飲む。

「もう少し飲む?」
「ううん、残りはあげる」

飲み終わった頃、ようやく電車が来て、暖房が効いた室内にほっとする。

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「#紅茶のある風景」の募集記事を見て浮かんだイメージをそのまま文章にしたのだけれど、「紅茶」でまず思い浮かんだのがミッシェル・ガン・エレファントなあたり完全に午後ティーの想定しているペルソナではないような気がする。笑

しかしまぁミッシェルファンだって午後ティーは飲むし、エスプレッソティーは好きなのだ。

最後までお読みいただきありがとうございました。 このnoteのテーマは「自然体に綴る」です。 肩肘張らずに、「なんか心地いいな」と共感できる文章を探したくて僕も書いています。なにか良いなと思えるフレーズがあったら、スキ!やフォローをしてくださると励みになります。