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短編小説《生活》

 大学の講義が終わったのは太陽が顔色をオレンジに染めたあたりだった。空っぽなのはわかっているのに、買い物に行く面倒臭さが記憶違いを期待して、僕の脳内に何度も自宅の冷蔵庫内部を描かせた。おでんのセールが今日までだということを同じ研究室の堀谷から聞いたことを思い出し、家と大学のちょうど真ん中くらいに存在するコンビニエンスストアに向かった。

 靴を緩く履く癖からか、ソールの減りが異常に早い僕にとって、

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