【讀解「難経本義諺解」】0. はじめに
1. 『難経本義諺解』とは?
『難経』の解説書です。ただし『難経本義諺解』は2人の解説者がおり一般の解説書とはやや異なるのでここで簡単に説明します。
1)『難経』
『難経』が書かれた年代や人物は、はっきりとわかっていませんが、『難経本義諺解』の”発端の弁”の章によれば、戦国の秦越人(扁鵲)により著されたとあります。『難経』は1難〜81難の81編に分かれており、『素問』や『霊枢』から引用したであろう文章が多々みうけられます。
2)『難経本義』
『難経』に滑寿(字は伯仁 1304-1386年)が注釈したものが『難経本義』という書物です。滑寿は『素問』『霊枢』やそれまで書かれた注釈を引用して自分の見解を記しています。
3)『難経本義諺解』
『難経本義』にさらに岡本一抱(1655頃-1716頃)が注釈をつけたものが『難経本義諺解』です。ただし岡本一抱は『難経』の本文と滑寿の注釈の両方に解説を加えています。
2. 『難経本義諺解』の構成
『難経本義諺解』とは『難経』に滑寿が注釈をした『難経本義』にさらに岡本一抱が解説を加えた解説書です。ただし先に記しましたように岡本一抱は、『難経』の本文と滑寿の注釈の両方に解説を加えていますので文章校正が少しややこしくなっています。また本文または本義の区切りの悪い途中でも岡本が解説をしているので、その難の全体像が見えずらい。という難点があります。したがって各難の全文を記し以下のような校正にしました。
例)一難
【全文】
①一難曰.十二経皆有動脈.独取寸口.以決五蔵六府死生吉凶之法.何謂也.
②然.寸口者.脈之大会.手太陰之脈動也.
③人一呼脈行三寸.一吸脈行三寸.呼吸定息.脈行六寸.人一日一夜.凡一万三千五百息.脈行五十度.周於身.漏水下百刻.栄衛行陽二十五度.行陰亦二十五度.為一周也.故五十度.復会於手太陰.寸口者.五蔵六府之所終始.故法取於寸口也.
【本文①】
本文:全文の①の書き下し文
↓
(岡本の注釈):岡本の注釈は全て()内に記入(以下同じ)
↓
本文:全文の①の書き下しの続き
↓
(岡本の注釈)
etc...
【本義①】
本義:全文①の滑寿の注釈
↓
(岡本の注釈)
↓
本義:全文①の滑寿の注釈のつづき
↓
(岡本の注釈)
etc...
全文②③の注釈も上に同じ
3. まとめ
『難経本義諺解』は非常に詳しく細かい所まで解説されいるために解説が長文になることがよくあります。時々【全文】を見てどこの解説をしているか把握するとよいでしょう。
<目次>
*「千葉大学古医書コレクション」にて原本の閲覧が可能です。
岡本一抱 「難経本義諺解」
著者/太田智一・大上勝行
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