見出し画像

心揺さぶる人との出会い

なかば暴露っぽくなるのだが、新卒で入った会社はコネ入社だった。

ご紹介いただいて入社したので、不動産業界に興味があったかと言われると、そういうわけではないのが正直なところ。
大学は建築学を専攻していたので、電機メーカーに就くよりも不動産業界のほうが近しい、というくらいだった。

* * *

入社後に配属されたのは、リフォーム系の部門。
配属の意図としては、僕が理系で建築学科だったからという理由がいくらかあるだろうが、その部門で任されたのは営業職だった。
地主さんに営業にいくのが仕事だ。
マンション持ってる地主さんに対して、リフォームをして入居者希望を増やしていきましょうという提案をしていた。

リフォーム営業は、僕としてはもどかしい時間が多かった。
ひとりの地主さんに平気で1時間半くらいつかまったり、お茶を飲んでばっかりで数字につながらなかったり…
正直、つまらない仕事だと思っていた。

それに、合コンでは「不動産業界で働いている」と言うと、全然モテやしないのだから…(笑)

それでも、数字に対しては努力した。
やはり紹介いただいた方の顔は潰したくなかったし、惜しまれて辞めたかった。
コネ入社だとバレない状態をつくって辞めるのが、僕のひとつの裏目標でもあった。

数字をあげることができていたし、結果的には、周りにはコネだとバレずに退職できた。

* * *

もどかしい時間が多かったけれど、いま振り返ると、僕の仕事観に対するインパクトは大きい。
なぜなら、僕はこの期間で、今の仕事に対するポリシーを形成してくれている重要な人に出会っているからだ。

その方は別部署の上のポジションの方で、直接の上司だったわけではない。
時折、一緒に仕事をさせてもらう程度の関わりだった。

社内においては、コネ入社の僕に気を遣う上層部の方が多く、やりづらいような状況もあったと思う。
でもその人だけは違った。
僕個人と向き合い、必要な時には純粋に怒ってくれた。

人間性がとても素晴らしかったのだが、営業も非常に上手だった。

たとえば、クライアントと会話してると行き詰まることがある。
営業を経験したことがあれば、きっと誰しもが経験したことがあるはずだ。

その方に同行してもらったアポイントで、オーナーさんに対して内装の提案をしている時、僕はその場で答えを出せずにいた。

すると、その方がいきなり付箋をハサミでチョキチョキ切り出して、図面を広げて提案を始めた。
ここにベッド置いたらどうだとか、棚置いたらどうだとか、その場で付箋でやりだしたのだ。

「こうやって見ていくと、何が一番良さそうかわかりますよね」と言って、解決の糸口をその場で見つけていた。

そのような場面は、一度だけではない。
地主みたいなエモーショナルなオーナーであろうと、相手によって違う手法で提案して、必ず解を導き出していた。

単純に、この人はすごい!と思った。
僕は「なぜ、そのような思考・行動が出来るのか?」と問いかけてみた。

すると、
「常に心の中で、このプロジェクトでお客さんを満足させろ、価値を提供し続けろ、と自分に言い続けている」
という答えが返ってきた。

僕の心は、大きく揺さぶられた。

十数年経った今でもその言葉を忘れずに、
「この人に満足してもらうためにはどうしたらいいだろうか」と、問い続けている。
今でも会いたい人だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?