国民民主党議員の「財政破綻します」

国民民主党の岸本議員の「今のままでは財政破綻はします」「赤字国債は必ず返さなければいけません」との発言について玉木代表が釈明しているが、文字通りの意味では岸本議員は間違っていない。

金を借りるとは、借り手が発行する負債を銀行(正確には預金取扱機関)が発行する負債の預金と交換してもらうことで、銀行から直接借りる場合と、銀行以外が保有する預金を間接的に借りる場合があるが、どちらも等価交換(現在価値の期待値の合計を等しく)するためにはリスクに応じた金利を支払う必要がある。新規借入ができない水準に金利が上昇すると債務不履行(デフォルト)で、借り手が民間の場合は元利返済が滞る信用リスクの上昇が金利を上昇させる。

一方、政府には強力な集金力(徴税権)があるので、民間と違って信用リスクは平時は無視できるが、その代わりに銀行からの借入増加→市中のマネーストック増加→インフレ昂進のリスクがある。インフレが制御不能になるほど暴走すると、国債金利も暴騰して新規借入を止めなければならなくなるが、それが「財政破綻」である。従って、岸本議員を「財政破綻は起こり得ないので間違っている」と批判するのは適切ではない。

「『日銀がお金を刷れば大丈夫』ではない」もその通りで、国債金利が暴騰しても中央銀行に低利で引き受けさせればデフォルトは回避できるが、インフレの火に油を注ぐことになるので、結局は財政破綻になってしまう。

「赤字国債は必ず返さなければいけません」も、満期が来た国債は必ず償還しなければならないという意味では正しい。ただし、政府は永続的存在なので国債を完済する必要はなく、満期が来る度に金利をリセットして借り換えを繰り返せばよい。

玉木代表は日本銀行が無制限に国債を買い入れる事実上の財政ファイナンスが必要と考えているようだが、これは正しくない。

ただし、経済が危機的な状況にあることから、当面は財政再建の目標は先送りし、低金利を活かした超長期国債の発行などによる財政ファイナンスで対応すべきであり、日銀による無制限の国債買い入れも当面は維持すべきだ。

民間の買い手が要求する金利よりも低い金利で政府が借りたい場合には、中央銀行に低金利で買わせる財政ファイナンスが必要になるが、現在はインフレ率もゼロ近辺にあるので、日銀が無制限に買い入れなくても国債金利が高騰する可能性はない。むしろ、民間金融機関の利息収入を奪う民業圧迫のマイナス効果の方が大きい。

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予想インフレ率の上昇を織り込んで国債金利が許容できる水準を超えるまでは、国債を増発して民間に消化させればよいだけの話である(それには岸本議員は反対のようだが)。

付録

アメリカのFedは第二次世界大戦の巨額の戦費の低利調達に協力するために、長期国債利回りを2.5%以下に抑えるyield curve controlを行った(価格と賃金の統制も行われた)。

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In April 1942, at the request of the Department of the Treasury, the Federal Reserve formally committed to maintaining a low interest-rate peg of 3/8 percent on short-term Treasury bills. The Fed also implicitly capped the rate on long-term Treasury bonds at 2.5 percent. The goal of the peg was to stabilize the securities market and allow the federal government to engage in cheaper debt financing of World War II, which the United States had entered in December 1941.

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それにより、Fedの国債保有額は急増したものの、大半は民間消化されていた。財政ファイナンスが戦費を賄ったのではないことは重要である。

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当時のアメリカと現在の日本では経済状況が大きく異なるものの、真水100兆円プランに財政ファイナンスは必要ではない。

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